第二章 『勇者』は商売です!6
お披露目の後からも、双子の生活する場所は王太子宮にあった。
変わったのはそこに、レンドル夫妻がいなくなった事である。
レンドルの代わりに、アストルが主となり、双子と一緒でズルいと騒ぐエマリアは、すぐ近くの宮を王女宮として与えられた。
※※※※※※※※
○『聖女』エレオノールの場合
お披露目を終えてから、エレオノールは神殿で祈りを捧げるのが日課となった。
その移動中、何度も馬車を止められては、《
周りに迷惑だからと、護衛騎士であるグランと共に、直接移動することにしたものの、それもすぐにバレた。
神殿の神官達に袖の下を渡し、神殿内で待ち伏せる者が現れたのだ。
「……あの手この手と、よく尽きないよね……」
それも苦笑しながら、《
【祈りの間】と呼ばれる場所では、高位神官と『聖女』もしくは『聖者』のみしか入れない。
扉の前にグランを残し、祭壇の前に膝まづいて祈りを捧げようとしたエレオノールは、人の気配を察知した。
「『聖女』エレ……。どうか、我が妻に…」
神聖なる祭壇の影から、一人の男が現れるなり、エレオノールに飛びつこうとした。
「…《
発動した魔法に、男はエレオノールに触れることなく床に倒れた。
「……これは流石にダメだよね…」
男はすぐさま捕らえられ、大神官からは抗議を。国王からは『聖女』に危害を加えようとした者として、国外追放とされた。
ちなみに男の実家の伯爵家では、爵位を取り上げられては困ると、すぐさま男と縁を切った。
同時に、男を手引きした高位神官の捜査も行われた。
「全く嘆かわしい……。高位の者でありながら、【祈りの間】を汚すような真似をするとは…。資格は〖剥奪〗とします!」
大神官は捕らわれの高位神官にそう告げた。
高位神官は『高位神官』という職業を〖剥奪〗され、〖無職〗となった。
〖無職〗となると、持っていた職業スキルも消えてしまうため、一からスキルを取得し直さなければならない。
最も重い罰であった。
「すまなかったね、エレオノール」
大神官は訪問室にて、エレオノールに頭を下げた。
彼は、双子を迎えに行った騎士達と共に居た神官であった。
部屋には二人と、扉のこちら側にグランが立っている。
「大丈夫ですよ。そもそも私は本来男ですしね。それより、あの方は顔合わせの時にもいたと思ったんですけど?」
自分を男と知っていたはずなのに、何故、手引きをしたのかと首を傾げる。
「あー…。世の中には、美しければ性別は問わない…という方々も稀にいるのですよ…」
苦笑しながら話すグラン。
「うわぁ…。私はグランのように可愛い奥さんが欲しいので、それはお断りですね…」
げんなりとした顔でそう言ったエレオノールに、大神官とグランは声を上げて笑うのであったーーーー。
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