第二章 『勇者』は商売です!5
レンドルの国王としての戴冠式は、午前中にさっさと終わらされた。
「……戴冠式ってさ。もっとこう……。派手というか豪華というか……」
余りにもサクサクと終わってしまったので、レオもエレも何か物足りない気がしていた。
「そうだよね。あんな、サクサク進めて、パッパと終わるもんじゃないと思う…」
「お二人共、感想は移動しながらにして下さいっ!!」
双子付きとなったフレイアは、翌日から変更された仕事の多さにアタフタとしながらもこなしていた。
「中央広場に移動だっけ?」
「そうそう。あのデッカイヤツの上に立ってやるって…」
のんびり歩きながら話す二人に、痺れを切らしたフレイアが二人の背中を押している。
「お二人共、お~は~や~く~ぅ…」
「大丈夫だよ。フレイア」
「レン兄様の声が聞こえる場所なら大丈夫なんだよ。《
「そうなのですか?」
押すのを止めたフレイアを見ながら、ウンウンと頷く双子。
「移動してる時に、絡まれないとも限らないからね」
「特攻見合いは真っ平だよ」
言われた言葉に、戴冠式前の移動を思い出す。
護衛騎士を押し退けてでも、双子と話そうとする集団。
あれは、見合いするつもりだったのか…と、納得した。
「それより、フレイアも気をつけてね」
「王太子宮出たら、手紙や贈り物押し付けられないようにね」
「……伺っております。宮を出る時は、ワタシにも護衛騎士の方が付くそうです」
話してる間に外の騒ぎが静かになっていく。
「そろそろかな?」
「始まったね…」
カーン。カーン。
鐘の音が鳴り響き、聖歌を歌う声が響き渡る。
「……この地に現れし、『勇者』と『聖女』をもたらして下さった神に感謝を!」
大神官の声に『感謝を!』と、叫ぶ民達の声が続く。
「国王レンドル・バース・ヒューゲルの名のもとに、『勇者』と『聖女』に〖祝福の華〗を授けよう!」
レンドルの声に二人は手を繋いだ。
「「行ってくるね、フレイア」」
「はい。行ってらっしゃいませ」
笑顔で二人にそう返す。
「『勇者』レオよ!『聖女』エレよ!」
レンドルのその言葉に、二人の姿はそこから消えたーーーー。
※※※※※※※※
『っ!!』
国王の呼びかけに、何処から現れるのかと、辺りを見回していた民達は、突然、舞台の上に現れた二人に驚いた。
黒髪を高い位置で一つに括り、風に蒼黒のマントをたなびかせながら現れた黒い騎士。
その隣には金色の長い髪を肩の近くで一つに束ね、純白の修道服の修道女。
『勇者』と『聖女』
そのことに気づくと、一斉に割れるような歓声が起こった。
「〖祝福の華〗をここに!」
レンドルの言葉に、〖祝福の華〗を手にした愛らしい二人の子供が現れ、双子の前に立つ。
それに合わせて、二人は両手を胸の前で交差し、両膝をついた。
「強き『勇者』に祝福を!」
レオノーラの前で、アストル王子が声を上げ、その頭上に手にしていた小さな花を振りかけた。
「優しき『聖女 』に祝福を!」
エレオノールの前で、同じようにエマリア王女が声を上げ、同様に小さな花を振りかける。
『…………』
小さな花々は、双子の体に触れた途端に、キラキラと光になって消えていく。
その光景に誰もが声を失った。
「「…………」」
光が消えると、二人は目の前の子供達を腕に抱き上げ、民衆へと体を向けた。
その二人の間に、国王夫妻が立つ。
「この二人はこのレンドルが後見人である!『勇者』はその力を皆を守るために使い、『聖女』はその力を皆を癒すために使うと私に誓ってくれている!」
『おぉ……』
民衆の表情は、驚きに満ちていた。
「『勇者』と『聖女』を縛ることは王とて許されぬと、私はこの場で皆に誓おう!」
この言葉により、双子は国王と並ぶ者として認められていると、全ての国民に知れ渡ったのであったーーーー。
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