第187話【グラリアン王都へ到着】
「――あれが王都の外壁だよな?」
ノーズを出発して2日目の夕方、相変わらず街道を塞いでいた木や岩を片付けながら進んでいると小高い丘を越えた辺りで遠くに町の外壁が見えた。
「間違いありませんね。
グラリアン王国の王都です」
ノエルが御者台の上からその外壁を見ながら僕にそう答えてくれる。
「ほぼ予定どおりに到着しそうだし、道中もまあたいしたトラブルもなくて良かったよ」
「そうですね。
王都に到着したら直ぐに宿を取りますね。
ギルドへの報告は翌日の朝にした方が良いかと思います」
「そうだな。
今から王都に入るまでに日が暮れるとするとギルドも閉める直前になるだろうから、わざわざ報告をして職員に残業をさせるのも悪いからな」
「王都では薬の調達が間に合っていないと聞いていますのでギルドに行った際には手持ちの薬を提供するもの良いかもしれませんね」
「魔導具を使って作った薬のことかい?
あれはまだ登録もしてないから売ったりは出来ないよね?」
僕はそう言ってカード化してある以前作った傷薬のカードをひらひらさせながらノエルに見せる。
「登録がなければ登録すれば良いのですよ。
足りなければその場で作ることも出来るでしょうし」
「確かにそうなんだけど、そのために王都に長く留まるつもりはないよ」
「そうですね。
どちらにしてもギルドに報告してからの事になりますので宿でもう一度話し合うことにしましょう。
あ、着きましたね」
ノエルがそう言った時には目の前に王都外壁門がそびえ立っていた。
* * *
「――君たちはノーズ側から来たようだが道中は馬車が通れるようになっているのか?」
王都の外壁門では受付担当の者が僕たちの馬車がノーズ側から来たのを見てそう問いかける。
「一応、ざっとですが街道にあった障害物や地割れの穴埋めは済んでいますので馬車も通れるはずですよ」
「おお!
それはありがたい。
その事実は直ぐにでもギルドに連絡をしてくれないか?」
門兵はそう言うと通行証の発行を急いで出してくれた。
「もちろん報告はしますが今日はもう遅いから宿を借りて明日の朝一番に報告するつもりですけどそれで良いですか?」
「そうだな。
出来れば今日中が良かったのだが君たちの都合もあるだろう。
一応こちらからもそういった情報があったとだけは報告させて貰うがいいだろうか?」
「それは構いませんが宿に押しかけて事情聴取は無しでお願いしますね」
「それは約束しよう。
明日の朝一番に報告に来ると言っていたと伝えるだけにとどめておくさ」
「わかりました。
よろしくお願いします」
ノエルはそう答えて馬車を街中へと進ませ、一軒の宿の前に停車させて僕を待たせたまま宿の予約を取ってきてくれた。
「今日はこの宿に泊りますが、急な飛び込みでしたので食事は隣接されている食事処を使用して欲しいと言われています」
「素泊まりってやつか。
まあ食事に関してはカード化してストックしてあるものを出してもいいぞ」
「いえ、せっかくですので隣にある食事処に行ってみようと思っています」
ノエルはそう言うと馬車を宿の預け所へと進めて宿で宿泊の手続きを済ませてから俺と共に隣接している食事処へと向かった。
――キィ
店に入るとちょうど夕食の時間帯だったためか大勢の客で賑わっていた。
怪我をした人が多く薬が足りないとは聞いていたが王都は食料に関しては足りているとの話を聞いていた俺たちはほっとした表情で店の中に歩を進める。
「いらっしゃいませ。
空いている席へどうぞ」
店に入ると明るい女性の声が聞こえてくる。
「あの角の席が空いているようだからあそこにしようか」
僕は店内を見回して空いている席へとノエルを連れていく。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
店員が注文を取りに来たので僕はノエルを見てうなずくのを確認して注文を伝える。
「料理はおまかせを2人分で、飲み物はエールと果実酒を頼む」
「承りました。
少々お待ちくださいませ」
店員はそう言ってお辞儀をすると厨房へと戻って行った。
「明日の朝一番にギルドに報告をしたら直ぐにエルガーへ向けて出発する予定でいいかい?」
「王都で情報収集とかはしなくても大丈夫でしょうか?
ノーズで聞いた事が全てではないと思いますけど」
「そうだな、ノーズで聞いたのはエルガーでは食料が供給不足であると言っていたよね。
一応ノーズからギルド便で送られるようにはなっていたけど別ルートからも支援できればもっと助かるかもしれないな」
「そのあたりもギルドで助言をしてもらいましょう。
王都では食料は足りているようですのでもしかしたらギルドから食料運搬の依頼が出るかもしれませんし……」
「――お待たせしました。
料理長おすすめ定食とお飲み物をお持ちしました」
僕たちが明日の予定を話していると店員の女性が料理を持って来てくれたので話は一旦中断して食事を先にすることにした。
「あ、美味しいです。
食料事情は安定している証拠ですね」
ノエルがそう言って微笑むのを見て僕も料理を口に運ぶ。
「確かに美味いな。
料理に関しては王都が一番進んでいるとは聞いていたけど本当だったんだな」
僕は感心しながら料理を堪能していると後ろから声がかけられた。
「もしかしてミナト殿ですかな?」
どこかで聞いたことのある声に僕が振り向くとそこには懐かしい顔があった。
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