第129話【新たなスキルと魔道具士】
「ミナトさん。
起きてください」
僕は身体を揺さぶられている感覚に手放していた意識を身体に戻して目を覚ます。
「う、ううん」
「結局、昨日の夕食を食べられなかったんですね。
私が帰ってきた時にまだ夕食を食べに来てないと言われたから様子を見に来たんだけど熟睡していたから起きて食べるだろうと部屋食にしてもらって置いていたけど。
……今起きましたって感じですから食べられてないみたいですね。
「ああ、すみません。
どうやらスキルのレベル上げに集中しすぎて魔力を使いすぎたみたいです。
だけどしっかり寝ましたので魔力は回復したようなので大丈夫ですよ」
「それだけのことが出来てまだレベルを上げようとしますか……。
今度は何が出来るようになったんです?
どうせまたとんでもない内容なんでしょうけど一応聞いてあげますよ」
マリアーナは半ば諦めの表情でそう問いかける。
「それが、まだ確認してないんですよ。
それで今から朝食を食べてからゆっくりと見てみようと思ってたんです」
僕はそう言うと側にあるテーブル上にあった昨夜の食事を見て「もったいないのでこれで済ませます」と手をつけた。
* * *
「――じゃあ確認してみますね」
僕はそう言うと新たなスキルの詳細を確認していく。
「うーん。
思ったほどの効果ではないのかな?」
「どんなものなんです?」
「この場でわかる事はとりあえずひとつだけで『カードの統合』だけみたいです。
やっぱりもうひとつ上げてレベル10にしないと駄目なのかな?」
「カードの統合?
具体的にはどんなことが出来るのかしら」
「名前からすると同じもの、例えばノーズベリーが1つのカードが2枚あったとして統合したらノーズベリーが2つのカードになるとかじゃないですかね」
「それってあまり意味がないわよね?
確かにカード化するときは1つずつが多いけれど複数もやり方次第では出来てたはずよね?」
「はい。
まあ、強いて言えばカードの総枚数を減らせるとは思いますけど今度は開放するときに100個とか一度に開放されても困るものもありますからね。
とてもレベル9に見合う追加スキルとは思えないですね。
単にハズレなのか使い方が間違っているのか……」
「とにかく、それはそれで他に何か使い道があるはずよ。
今回の件が無事に解決したらいろいろと調べてみればいいんじゃないかな」
「そうですね。
さすがにもう1レベルを明日までに上げるのは無理ですからもう少しだけ使い方を考えてみます」
僕はそう言って昨日の残り物を平らげるとマリアーナにそう言ってスキルの検証を続けるために手持ちのカードをテーブルに並べだした。
「まあ、ほどほどにしておきなさいよ。
また魔力不足とかになると明日に影響するからね」
マリアーナはそう言うとそっと部屋から出て行った。
――次の日の朝
「おはようございます。
あれから何か有用ななにかが見つかりましたか?」
食堂で朝食を食べているところにマリアーナが相席をさしてきて尋ねてくる。
「まあ、幾つか新しい発見はありましたけど使う場面があるかはわかりません」
「ふうん。
まあ、あまりスキルについて詮索するのは良くないから詳しくは聞かないでおくわ。
それよりもお昼にはギルドに顔を出さないといけないから遅れないようにしてね」
「はい。分かってますよ。
僕だって今日の日を待ちわびていたんですから。
これできっと……」
僕はそうつぶやくと残りの食事をかきこんでから出発の準備を済ませた。
* * *
「ルルベさんは居ますか?」
時間になり、僕たちは商業ギルドへとたどり着いていた。
「ああ、来たな。
お望みどおりガーレンは呼んであるがまず先にゾラを除くふたりに依頼者として面会してもらうことになる。
話の主導権は私が握らせてもらうからあなた達は話を合わせてもらえればいい」
「作ってもらう魔道具は何にするんですか?」
「ああ、一応は疲労軽減の指輪を頼むことになっているが話の流れ次第では隷属の首輪の話を入れるチャンスがあるかもしれない。
その時はあなたが話を振ってもらって構わない、だけどそうでなければその時は私の方でうまくやってみますね」
ルルベはそう言うと「では、ふたりはこちらに。ゾラは別室にて待機で頼む」と僕たちを連れて応接室へと向かった。
* * *
「――待たせてすまないね。
今回の魔道具作成の依頼者を連れて来たわよ」
ルルベは部屋に入ると向かい側のソファに座っている男性にそう言って僕たちを紹介する。
「ミナトです。
マリアーナよ」
僕たちが名乗ると男性は軽くうなずいて「ガーレンだ。魔道具士をしている」と名乗った。
「では、依頼内容の確認をするわね。
普通ならば依頼者と魔道具士が直接やり取りをするのだけれどお互い初顔あわせだから今回は私が間に入って調整をすることにしますね」
ルルベの言葉にお互いうなずくと彼女は当初から決めていた話をはじめた。
「まず、今回の魔道具作成依頼として『疲労軽減の指輪』をふたつ作成してほしいとのことです。
ガーレンさんはこれを作ることは出来ますよね?」
「当然だ。
その程度ならばわざわざ俺がやらなくても出来るやつは何人もいるぜ」
「確かにそうかもしれませんが同じ魔道具でも腕の良い職人が作ったほうが能力も高くなる傾向が強いのは当然知っているでしょうからどうせ作るなら良いものをとの要望でガーレンさんが選ばれたんです」
「そうか、ならば仕方ないな。
確かに魔道具士の腕と魔力量で完成品の良し悪しは変わるからな。
俺に頼むのは間違いではないだろう」
腕が良いと持ち上げられたガーレンはいい気分でニヤニヤしながらルルベの話にのってくる。
「それでいつまでに作ればいいんだ?」
「出来れば1週間ほどでお願いしたいです」
「1週間で2つか……。
並の魔道具士では難しいが俺は優秀だからな、忙しい身ではあるが聞くところによると王都から遠く離れた辺境の村からわざわざ頼みに来たそうじゃないか。
どこで手に入れたか知らねぇがギルドのサブマスまで引っ張り出すほど俺に頼みたかったんだろ?
引き受けてやってもいいが少しばかり報酬もはずんでくれよな」
「それはもう、指名依頼料金も上乗せしてお支払いさせてもらいます」
「よし、ならば契約してやろう。
ルルベさんよ、当然契約書の準備は出来てるんだろ?」
「それはもちろんここに……」
ルルベが内容の書かれた契約書をガーレンに渡すと彼は内容と報酬の欄だけ見てサインをしようとテーブルに契約書を置いたタイミングで打ち合わせどおりに僕が話を振った。
「あ、それと優秀な魔道具士ガーレンさんの腕を見込んでもう一つ頼みたい魔道具があるのですが引き受けてもらえないでしょうか?」
「ん? もう一つだと?」
サインを書こうとしていたガーレンは手を止めて僕の方を見た。
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