第128話【ルルベの正体とレベルアップ】
「ルルベさんってどういった方なんですか?」
出された紅茶を飲みながら僕はゾラにそう問いかける。
「昔からの知り合いってだけだ。
少しばかりこのギルドに顔が効くから時々こういった面倒ごとを頼みにくることがあるんだよ。
まあ、それなりの対価はふんだくられるけどな」
僕の問にふて腐れたような表情でゾラがそう答えた時、入口から声がかけられた。
「――あら、厄介ごとしか持ち込まない人がなにか言ってるみたいね」
「ぐっ……。
本当にいつもタイミングよく出てくるやつだ。
それに今回は俺は連れてきただけで厄介ごとはこっちのふたりに聞いてくれ」
ゾラはそう言うとぷいとソッポを向いてしまう。
「ふうん。そんな態度をとるんだ……っまあいいけどね。
それより君たちの話を聞かせてもらいたいですね。
彼が厄介ごとと言うからにはそれなりの話なんでしょうから」
「ゾラさん。
この人にはどこまで話しても大丈夫なんですか?」
「ん? ああ、そうだな。
ルルベは信用できるから何でも相談してくれていいぜ。
と言うか詳細と証拠を示さないと全く動いてはくれないからな」
「わかりました。
では……そうですね。
ことの始りは隣の国での出来事でした……」
僕は数枚のカードをテーブルに出すとルルベに説明をするために一枚ずつ並べていった。
「これは?」
「僕の固有スキルで作ったものですのであまり馴染みはないかもしれません。
とりあえず
では、詳細の続きを……」
僕は出さなければならない情報と出来れば隠しておきたい情報に分けて出来るだけ多くの情報を彼女に話した。
「……な、何たるバカなことをしたのだ。
魔道具士の信頼を根底から覆す問題だ。
それで、誰が流したか分かっているのか?」
「いえ、流した商人はまだ特定出来ていません。
ですが作成した魔道具士は分かっています」
「誰だ?」
「ガーレンという魔道具士です」
「ガーレンが?
それは間違いないのか?」
「魔道具を鑑定スキルで確認しましたからまず間違いはないかと思います。
ですが、出来れば本人に問い詰めて自白をさせられればもっと良いかと思っています」
「なるほど。
ゾラが私を呼んだ意味が分かったよ。
確かにあんたは村長の息子だが今は村を出ている身分だからガーレンを呼び出す力はないからね。
私が依頼の詳細を話したいと言えば嫌でもドウマ村の魔道具士はここに顔を出さなければならないからね」
ルルベの言葉に僕はそっとゾラに彼女の立場を聞いてみた。
「ルルベはこの職業ギルドのサブマスだ。
そして彼女もドウマ村出身の魔道具士なんだ」
「なるほど、それで村の内情にも詳しいのですね」
僕が感心しているとルルベはじっと考えこんで話の外殻を埋めていった。
「一応、あなたが言っていることを信じる前提で話をしますが、もし嘘であり彼に損害を与えた場合は職業ギルドがあなたにペナルティーを課しますので気をつけて発言をするようにしてくださいね」
「はい」
「では、こちらでガーレンは呼びつけておきますのでその時に真実を究明すればいいでしょう」
「その……簡単に呼びつけると言ってますが、ドウマ村って王都からそんなに近くにあるのですか?」
「なんだ、ゾラから話を聞いてるんじゃないのか?」
ルルベはそう言ってゾラを見るが彼は顔を左右に振るだけだった。
「まあ、そうよね。
部外者においそれと場所を話すことは出来ないわね。
……詳しい場所は言えないけれど呼びつけることは出来るからそれで納得して貰えると助かるわ」
あきらかにルルベの失言だったがそれを指摘したところでこちらが得することはなく、それどころか意固地になって協力を拒否される可能性のほうが高かったので僕たちは発言スルーを決め込んでうなずいた。
「それでは彼は明後日のお昼までにはギルドに来るように手配しておくからその時にまた来てください。
念のためにこちらでも流通ルートは調べてみますのであまり派手な聞き込みなどは控えてください」
「わかりました。
それはそちらにお任せします。
僕たちはもういちど魔道具について調べたいと考えていますのでおそらく宿につめていると思います」
「わかりました。
では、予定より早くに準備が出来るようならば連絡をするようにしますね」
ルルベはそう告げると僕たちよりも先に席を立って急いで部屋を出て行った。
「とりあえず予想以上に協力をしてもらえるようなので安心しました。
僕はこの後、宿に戻って少し試したいことがあるのでふたりとも明後日の時間までは自由にしても大丈夫ですよ」
「そうかい。
ならば俺はせっかく王都に来たんだから知り合いに顔を見せてくるぜ。
泊まりがけになるかもしれんが時間には必ず戻るから心配すんな。
あいつを怒らせたらろくな目にあわないから約束は守るさ」
ゾラはそう言って先にギルドを出て走っていった。
「そうね。
私は街でお店をみてまわろうと思うわ。
なにか掘り出し物があるかもしれないし、私には鑑定スキルがあるから偽物を掴まされることはないですからね。
あ、夜はちゃんと宿に帰るから心配はしなくていいわよ」
「わかりました。
では、僕は宿に戻っています」
ギルドの前でマリアーナと別れた僕はこれからの事を考えながら宿に帰り、暫く部屋に入ってこないように受付でお願いをしてから部屋に籠った。
「もう少しだ。
もう少しでノエルの首輪を外してやれる」
僕はその思いを刻みながらもしかしたらとスキルのレベルアップをさせるために今まで以上にハードな経験値稼ぎを繰り返した。
【――収納スキルのレベルがあがりました】
幾度となく繰り返したスキルに魔力消費の脱力感が全身を覆う感覚をおぼえた頃に久しぶりとなるレベルアップの知らせが頭に直接伝わりその安堵感から僕は深い眠りに落ちていった。
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