第107話【仕事の依頼】
次の日の朝、朝食を食べながら僕はマリアーナに予定を告げる。
「僕は今からギルドに仕事をもらいに行くのでマリアーナさんはまだギルドには行かないでください。
出来れば午後から、それが待てないと言うならば僕が仕事の受注をした後で戻ってきますのでその後で行ってくださいね」
むこうで鉢合わせしてゴタゴタに巻き込まれるなんて勘弁して欲しかったので少し冷たいかなとは思ったが了承してもらった。
(まあ、こう見えて一応だけどサブマスだし、見た目はきれいなお姉さんだけど中身はアレだし。
ギルドに行くだけだからきっと大丈夫だろう)
「じゃあ先に行ってきますね」
僕はマリアーナにそう告げると宿屋をでてギルドへ向かった。
――からんからん。
ギルドのドアを開けるといつもの音色が聞こえる。
「いらっしゃいませ。
あ、ミナトさんへ依頼が来てますのでこちらのカウンターにお願いします」
ギルドに入るとすぐにアリシアが僕を呼んできたので彼女の元にむかう。
「昨日はノーズベリーをありがとうございました。
あのあと同僚のみんなから
昨日アリシアにノーズベリーを渡したことはそのときいた同僚にしっかりと見られていたようだった。
「ああ、すみませんでした。
かえって迷惑かけたみたいですね」
「いえいえ、ミナトさん担当受付嬢の特権と言うことでラッキーでした。
……それよりも、仕事の依頼が2件来ていますよ。
ひとつは先日のガーレット子爵家から、もうひとつは……」
「ナナリア雑貨屋のドドンさんからですか?」
「あ、やっぱり昨日あれからなにかあったのですね。
昨日登録したばかりでいきなりナナリア雑貨屋から仕事の依頼で指名されるなんて普通では考えられませんからね」
「まあ、ちょっと挨拶をしてきただけですよ。
そこで
「そうなんですね。
ですが、それって普通じゃありませんからね」
アリシアは苦笑いをしながらそう言って2枚の依頼書をカウンターに並べる。
「こちらが子爵家からの依頼で『指定食材の納品』でこっちのナナリア雑貨屋からは『納品物の配達運搬』になってます。
期限としては子爵家の方は3日以内でナナリアは出来れば今日来て欲しいとのことです。
それぞれの報酬は依頼書に記載してますので確認をしてくださいね」
僕はアリシアから依頼書を受け取ると内容の確認をしてから受注のサインをする。
「では、これからナナリア雑貨屋へ行ってみます。
依頼が完了したら報告に来ればいいのですよね?」
「はい。
依頼書に完了のサインを受けて来られたら報酬をお支払いしますので頑張ってくださいね。
では、よろしくお願いします」
僕はアリシアに見送られながら期限の早いナナリア雑貨屋の依頼に向かった。
* * *
「すみません。
ギルドからの依頼で来ました。
運ぶ荷物と運び先の指示をお願いします」
ナナリア雑貨屋に着いた僕は店の受付てギルドからの依頼書を提示してそう問い合わせる。
「はい。
納品物の配達依頼ですね。
えっとこれは……えっ?」
受付をしてくれた女性は依頼書を見て一瞬驚いた表情をしたが、すぐに「こちらにどうぞ」と言って奥の倉庫へと案内してくれた。
「こちらに積み上げてある箱をこの紙に書かれている箇所へ運んでもらいたいのです。
必要個数と運び先の情報も書いてありますがひとつだけ注意点があります。
これらの品物は非常に壊れやすく、馬車で運ぶ際に車輪が大きめの石を踏んだ時の衝撃で壊れてしまったこともあるようですので十分に気をつけてください」
受付の女性はそう説明をしてくれると自らの仕事へと戻っていく。
(さて、ギルドに登録してから初の仕事だし信用を勝ち取る第一歩だからしっかりこなさないとな)
僕はそう思いながら依頼の詳細が書いてある紙を読んで苦笑いをする。
『魔道グラスの運搬作業。
運搬個数120個(1箱に12個)を10ケース。
運搬先は魔道喫茶メロリア』
(なるほどガラス製品か、しかも魔道具だから値段もいいだろう。
こんなものを壊しでもしたら依頼料なんですぐに吹っ飛びそうだな。
ま、僕には関係ないけどね)
「――
次々に目の前にある荷物をカード化した僕は個数の確認だけしてから受付へと戻る。
「あ、馬車は正面ではなく倉庫側の入口にとめてくださいね。
商品の運びに人を使う場合は壊れやすいことを周知させてください、当然ですが壊したら実費を請求されると思いますので。
それでいつ馬車の手配を予定していますか?」
僕のスキルを知らない彼女は僕が普通に馬車で運ぶものと思っているらしく、おそらく他の運送屋と同じ対応をしているだけなのだろう。
「あ、馬車は使いませんし荷物はもうお預かりしましたのでこれから配達をしてきます。
運び終わりましたらギルドに報告しておきますね」
「えっ?」
僕の言葉を理解出来ずに彼女は奥の倉庫へと確認に向かい、僕の言葉どおり配達分の荷がないことに驚いた。
「いったいどうやったのですか?」
彼女の問に僕は10枚のカードをカウンターに並べて説明をする。
「僕のスキルでカード収納スキルになります。
こうすれば道中に壊れる心配もありませんし、重く感じることもありませんので安心して任せてください」
「は、はい……」
実際のカードを見てもまだよく理解出来ていない様子の彼女だったがそれ以上の質問はせずに送り出してくれた。
「よし、さっさと配達をすませて食材のほうも早く手をつけないとな。
この地図によると目的地の店は馬車で20分程度とのことだから走っていけば同じくらいには到着するだろう」
馬車で20分と言えば凄く遠いようなイメージだが街中を進む馬車なんて歩くスピードより少しだけ早い程度のものであるから距離が近くて体力に自信があるなら走ったほうが早かったりするのだ。
(まあ、そんなに慌てて行くこともないしもう一つの依頼についても考えながら向かうことにしよう)
僕はそう考えながら目的地へと歩いていった。
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