第86話【カード化した魔法の取扱い】
「
――ドン!!
「うわわっ!?」
僕がスキルを使ったとたんカードが火の球となり空に向かって打ち上がった。
「び、びっくりした……」
僕自身もかなり驚いたが周りで見学をしていた皆も驚きに尻もちをついていた。
「いったい何があったのですか?」
マリアーナがお尻についた土を手ではたきながら僕の側にきて問いかける。
「いや、普通にカード化を解いただけなんですけど指定の方向に撃ち出すのは上手くいかなかったようですね」
僕は少し考えてマリアーナに「すみませんが今までのやり方で今の火球の魔法をカード化させてもらえませんか?」とお願いをする。
「今までのやり方?」
「ああ、そういえばマリアーナさんにはまだ言ってませんでしたね」
僕は手を添えてカード化するやり方の説明をしていなかった事に気がついてサーラに手伝ってもらいながら流れの説明をした。
「――という流れでカード化した魔法は問題なく思った方向に撃ち出すことが出来るんです」
僕はそう話しながらサーラから受け取った
――カカッ!
3本の氷矢は木に目掛けて飛んでいき1本こそ外れたが残りの2本は見事に幹に当たって刺さっていた。
「なるほどね。
今のやり方だと発動前の魔法自体を取り込んでいるので制御が出来ていると考えられるわね。
私の放った火球は既に
「うーん。
もう少し調べてみないと分からないですけど、発動後の魔法をカード化しても使わない方がいいですかね?」
「今のを見たらそれが無難だと思うわね。
普通に作った魔法カードは安全に使えるみたいですし……」
側で見ていたサーラもそう言って同意をした。
「でも、一応試させてもらっていいですか?」
僕はそう言ってマリアーナの手の甲にふれると「お願いします」と合図をおくった。
「火球――」
「
いつものようにタイミングを見計らってスキルを使うとマリアーナから発動するはずの魔法はそのままカードに収められて飛び出す事は無かった。
「これならばうまく行きそうです」
僕はカード化した魔法を先ほどの木を狙って開放する。
「
――ひゅん。
僕の持つカードからはマリアーナの放った火球と同じサイズの火の球が目標の木に向かって突進していった。
ドドンッ!
火の球は目標の木に当たり音と共に辺りへと霧散した。
「やっぱりこの方法でなければ安定した魔法にはならないのかもしれませんね。
でも、検証ができて良かったです。
制御が難しい魔法を知らずに狭い空間で使っていたら自分も巻き込まれる事になったでしょうから。
ありがとうございました」
そうつぶやいた僕はマリアーナに頭をさげてお礼を言った。
「面白い……。
実に興味深い能力ですね。
本当ならばあなたについてもっといろいろな検証をしてみたいのですけど今の状況と自分の立場がうらめしいですね」
僕のスキルの一部を見たマリアーナが心底悔しそうにそうつぶやく。
「まあ、しかたないですね。
今はそんな事をしている場合ではないでしょうから……。
今回の件に片が付いてロギナスへ戻ってきた時にでもゆっくり検証させてもらうとします」
マリアーナは少しばかり考えてからそう答えるとテントへと戻って行った。
「ちょうど時間もいい頃なので交代しましょうか」
ちょっとした事件の事もありサーラがそう言い出してダランの方を見ると彼も「――まあ少しばかり早い気もするがお前がそう言うならばいいぜ」と同意したのでそのまま見張りを交代して休む事になった。
(まずはノーズの町までたどり着く事が先決だな……。
その後は現地のギルマスに協力してもらって……)
ダランと交代のため彼の休んでいたテントへ潜り込むとこれからの事を考えずにはいられなくなり眠りに落ちるまであれこれと考えを巡らせながらも目を閉じて夜をこえた。
「よく休めたか?」
いつの間にか朝が来ていたらしく朝日がテントを明るく照らしていた。
「ああ、いつの間にか眠っていたようです。
見張りのほう、ありがとうございました」
起こしに来てくれたダランにお礼を言うと僕はゴソゴソとテントから出てきて朝日をあびながら大きく伸びをする。
「起きてすぐで悪いが飯のほうを頼めるか?
昨夜あれだけ食べたのに腹がへって困ってたんだよ。
なんたって食料関係はミナトに全て任せてたから途中で腹がへって何かないかと馬車を探ってみても干し肉ひとつなかったからな。
明日からは交代前に何か食い物を出しておいてもらえると助かるんだが……」
ダランがお腹をさすりながらそう言って苦笑いをした。
「すみません。
すぐに用意をしますね」
「
僕は食事用のカードを取り出して開放し、急いで朝食の準備を整えた。
「――うめぇ。
いつも美味いのは間違いないが腹がへってる時のメシは格別にうまいもんだよな」
ダランはそう言いながら僕の準備した食事をほおばる。
「あいかわらず良い食べっぷりですね」
「おう!
護衛任務は体力勝負だからな。
いざという時に腹がへってたら力がでねぇからな」
「もう!
そんなことばかり言って食べすぎてたらなんの意味もないことを何回言ったら分かってくれるのかなぁ?」
食事をがっつく横でサーラがジト目でダランをみてため息をついた。
「まあまあ、そろそろ出発になるみたいですからふたりは馬車で休んでください。
見張りくらいは僕にも出来ますから」
「いやいや、見張りだけじゃなく何かあっても正直いって大抵の事は対処出来ると思うぜ」
昨日のボアの件と魔法を封じ込めたカードを見ていたダランはお世辞ではない表情でそう言ってから「まあ、だか俺たちは護衛として雇われているんだから遠慮なく言ってくれよ」と手をひらひらさせながら馬車の荷車へ乗り込んだ。
「では出発しますね。
もう一日途中で野営となりますがその次の日はトウライの村へ到着出来ると思います」
全員が馬車へと乗り込むのを確認したマリアーナはそう言って馬車を走らせた。
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