第85話【予想以上の事に驚く】
「ちょっと近いですよミーナさん」
僕は目の前に彼女の顔が迫っている事にドキドキしながら彼女の肩に手を置いて押し返す形で距離をとる。
「それに、これでも結構努力してるんですからね。
どうすれば効率よくレベルアップをさせることが出来るかとか……カード収納スキルに関してだけはある程度だけど法則性があったからこの一年間は皆とレベル上げに努めたんですよ。
おかげでほとんどの人がサブスキルだけどレベル5に到達しましたからね」
「たった一年間でレベル5ですか?
皆さん優秀なんですね」
ミーナが感心した表情でそう答える。
「あ、そうだ。
前にギルドの施設で回復魔法のカード化をしたように先ほどの明るくする魔法もカード化したいんだけど協力してもらえるかな?」
「それは良いですけど本当にただ光るだけですよ?
しかも持続時間はもって数分しかない効率が悪い魔法と言われてる魔法ですけど良いのですか?」
「ああ、もちろん。
おそらくだけどこれからの僕には凄く必要になる魔法のひとつだと思うからね」
僕はそう言うと彼女の手の甲にそっと触れて魔法の発動をお願いした。
「
「
ミーナの魔法に合わせて僕がスキルを発動させると一枚のカードが僕の手の中に生まれてくる。
「よし、成功だ。
この調子で複数枚作りたいからもう少し協力を頼みます」
僕の言葉にミーナは少しだけ頬を赤らめながらうなずくと繰り返し魔法を発動してくれた。
「――ふう。少し疲れました」
魔力消費の少なめな魔法だったがやはり連発すると疲れるようでミーナは一息ついて側にあった大きめの石に腰をおろした。
「ありがとうございます。
お疲れのようですので甘い物でも食べられますか?」
僕はそう言ってポーチからいくつかの甘味カードを取り出して開放をしていく。
「うわわっ!?
この甘味は王都の名店でしか食べられないやつじゃないですか!?
こんな所で食べられるなんて信じられないです。
それじゃあ遠慮なくいただきます」
ミーナはそう言って甘味を口いっぱいに頬張ると「もいしー(美味しい)」と目を細めながら喜んだ。
「――あら、いいものを食べてるわね」
ミーナが甘味を頬張っていると突然僕の後ろから声がかかり振り向くとそこにはマリアーナが立っていた。
「マリアーナさん、起きられたんですね。
まあ、あれだけ大きな声を出せば起きられるのも無理はないですよね」
「まあ、何かあったのでしょうけど慌てた声がしなかったので暫く様子をみていたのだけれど、ふたりがなにやら面白そうな事をしていたので気になって起きて来たのですよ」
「実は少しばかり大きめのボアが出てきまして、それにミーナさをんが驚いておもわず叫んでしまったんですよ。
まあ、ボアに関しては僕のスキルで捕まえましたので安心してもいいと思います。
その後はちょっとミーナさんに協力してもらってカードの充実をはかっていました」
「魔法のカード化ですね」
「ご存知でしたか。
まあ、マリアーナさんはサブギルドマスターとの事ですからザッハさんから情報共有を受けていてもおかしくはないですけど……」
「実はギルマスからはこの依頼の直前に話があって、出来れば協力してやってくれと頼まれたていたのです。
私は炎系の魔法が得意ですのでその中からいくつかカード化させて持たせて欲しいと言われていたのです。
正直、何を言ってるんだこの人はとギルマスの頭を本気で心配しましたがどうやら本当の事だったようでほっとしました」
マリアーナはそう言うと攻撃魔法から生活に使える着火魔法までのカード化を手伝ってくれた。
「しかし、本当にとんでもないスキルになりましたね。
条件はあるとしても本来使えるはずのない魔法を属性スキルを持たない人が使えるのはとんでもない事ですよ」
僕はそういうマリアーナはふと疑問に思った事を聞いてきた。
「そう言えばミナトさんは今回ボアをカード化したそうですが、突進してくるボアに触れてスキルを使ったのですか?」
「ああそれは、つい最近ですけど対象物に触れていなくてもカード化出来るようになったのです。
それでこちらに向かってきたボアをそのままカードにしたと言うわけですよ」
「向かってくるボアを?
動いている獣をカードに閉じ込める事が出来るものなのですか!?」
「それなりに集中力が必要ですけど練習をしていたらいつの間にかできるようになっていましたね」
「なんて非常識な……。
でも、それならば……」
マリアーナはそう呟いてから僕にひとつ提案をしてきた。
「もしかして魔法も触らずして取り込めたりしませんか?」
「魔法……ですか?
いや、それは無理でしょう。
今でも発動タイミングに合わせてカード化しているのに発動してしまった魔法を取り込むなんて無理に決まってる……とはいえ少し興味はありますね」
僕は無理と言いながらも試してみたい衝動にマリアーナに火球を撃ち出す事を依頼した。
「火球――」
マリアーナの手のひらからソフトボール大の火の球が生まれ僕に向かって発射された。
「ちょっ!?」
てっきり狙いを外した魔法で試すものだとばかり思っていた僕は向かってきた火の球に慌ててスキルを使った。
「
僕の手のひらが光ったと思うと目の前に迫っていた火の魔法が跡形もなく消え、その場にはカードが一枚ひらりと落ちた。
「おおっ! 素晴らしい!
意外と出来るものなんですね」
ドキドキと心臓が飛び出るかと思われた僕に向かってニコニコとマリアーナがそう告げる。
「いやいや、めちゃくちゃ危ないじゃないですか!
もし上手く出来なかったら僕に直撃でしたよ!」
「ああ、ごめんなさいね。
なんとなく危険な状態にした方が上手くいきそうな気がしたからやってしまいました。
……てへっ」
「『てへっ』ってキャラじゃないでしょうが!
……しかし、このカードを開放したらどうなるのかだけは見ておかないと駄目だろうな」
僕は『迫りくる火の球』と銘打たれたカードを拾い上げでそうつぶやく。
「ちよっとテストをしますので僕の前には出ないでくださいね。
えっと……向かってきた火の球を受け止める形でカード化したから……。
表側を向こうにむけて開放すれば大丈夫かな?」
僕はそう言いながらカード開放のスキルを使った。
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