第71話【研修の本格化】
「では、全員揃ったようですので本格的に研修を始めますね。
……と言ってもまずはレベルアップが中心となりますので、まだレベル1のロセリさんにはアーファさんとナムルさんがレベル1からのレベルアップ手順を教えてあげてください。
キリュウさんとヤーゴさんはスキルの理論と次のステップのレクチャーをしますので会議室へと来てください。
では、各自よろしくおねがいします」
僕はそう言うとキリュウとヤーゴを連れて会議室へと向かう。
「なあ、ミナトさんよ。
今回の企画内容を聞けば聞くほど本当に実現できるのか?と疑問ばかりだが実際の話どうなんだ?」
会議室へと向かう廊下てヤーゴが僕に問いかける。
「もちろん可能ですよ。
ただし、僕だけでは無理なので皆さんの協力が不可欠になります。
それに今のメンバーは街ごとのリーダーとなる方々であり、今後はさらに部下を育成してもらわなければいけません。
ですので今回はご自分のスキルアップだけでなく部下の育成手段も学んで帰ってもらうことになりますよ」
「な、なんだと!?
話が違うじゃないか!」
「ヤーゴさんがギルドからどのような条件を提示されているかは知りませんが今後のあなたの立場に大きく影響することですので受け入れてくださいね。
あ、この部屋になります」
僕は渋い表情のヤーゴをそう諭すと部屋のドアを開けて入った。
「こちらに座ってください」
ふたりが椅子に座るのを待ってから僕が話を始める。
「まず、おふたりに説明するのは今回の企画に絶対に必要なことでありながらも誰にでも教えて良い内容ではない機密情報だと認識してください」
僕はふたりにそう前置きをしたうえで『
「うーむ。
カード化されたものは本人しか元に戻せないとばかり思い込んでおったが、まさかそのような方法で他人に権限を移すことができるとは……」
「確かにそんな話は聞いたことがねぇな。
まあ、レベルが3以上でなければ無理だと言うこととカード収納スキルを研究しようとした奴がほとんど居なかったからなんだろうがコイツが使えるかどうかで利便性に天と地ほどの開きが出来るぜ」
ふたりの感想を聞きながら僕は実際に権限の変更を試してもらうために数枚のカードをテーブルに置いた。
「どのカードでも良いですので権限の変更をして
「ほう、どのカードでもいいんだな?
では俺が先に選ばせてもらおう……。
よし、これだ」
ヤーゴはそう言って一枚のカードを手にする。
「ならばワシはこのカードにしようかの」
ふたりはそれぞれにカードを選び、共有化のスキルを使って開放をする。
「
ヤーゴが選んだのはキンキンに冷えたエールのジョッキでカード化を戻したとたんグイとうまそうにあおった。
「くーっ!
コイツはよく冷えていて最高にうまいな!
出来ればエールよりもニールの方が俺的には好みだがこれだけキンキンに冷えてれば問題ないな」
ジョッキを片手にヤーゴが満面の笑みをみせながらそう話す。
「ほう、おぬしはやはり酒だったようじゃの。
ワシは酒も好きじゃが甘い物にも目がなくての。
王都からしばらく離れるとあっていくつか甘味をカード化して来たが時間劣化は避けられないのでこの町に来る途中で全て食べてしもうたのじゃ。
甘々亭のあんみつ、おぬしどうやってこの状態を保っておるのじゃ?」
キリュウも共通化を無事に終えカードを開放させてお目当てのあんみつを味わいながら僕に問いかける。
「対象物の非劣化は基本的にはレベル6にならないと使えません。
なので普通ならばサブスキルでの運用をされるかたには対象とならないのですが、もしかしたらレベル5でも使えるようになるかもしれないと僕は考えています」
「なに?
それはどうすればいいのか分かっておるのか?」
「いえ、まだはっきりとは言えませんがサブスキルのカンストボーナスで取得出来るのではないかと思ってるんです。
ただ、これに関しては僕自身がまだ経験していないのでどなたかがレベル5に達したときに確認したいと考えています」
「ふむ、カンストボーナスとな?
そのような事が書かれている文献はあったかの?」
「僕もハッキリと確認した訳ではないんですがそのような感じの情報をどこかで読んだか聞いたかをした記憶がおぼろげにあるんです。
僕は昔の記憶が曖昧なのでその頃の記憶なのかもしれないですけどね」
僕が苦笑いをしながらそう答えるとキリュウは「ならばワシが一番近いようじゃから楽しみにしておこう」と言ってあんみつをたいらげた。
* * *
いっぼうロセリの方はナムルが主導して最初から水のカード化を進めていた。
「すぐに疲れてしまいますね」
「レベルが上がればだんだんと楽になってきますよ。
……と言っても私たちもまだまだ連続でやるには未熟ですけど」
やや緊張した面持ちで説明をするナムルにアーファが食堂から持ってきた冷たい飲み物をテーブルに置く。
「魔力の回復が早くなる飲み物ですので一息ついてくださいね。
そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。
私たちもまだ1レベルから初めて1ヶ月も経っていないんですから」
「そうなんですか?
それでもうレベル3なんですよね?
私にも出来ますかね?
私だけおいてけぼりになったら送り出してくれたギルドにも迷惑がかかってしまうのが怖いんです」
どこの町のギルドもカード収納スキル持ちの人材は幾らかは居るが今回のような結果が不明確な企画に送り出す人材などその町のギルドマスターの裁量にかかってくる。
期待できるものとして今後の展開を見据えた人材を派遣してくるか、とりあえず余裕のある部署から余裕のある人材を派遣しておくかなどだ。
「そう固くならないで。
ミナトさんはここにいる全員が成長してくれる事を信じていますし、そのための協力は惜しまない人ですから。
まずは焦らずにスキルを使う事を楽しめばいいと思いますよ」
アーファが優しくロセリに声をかけると彼女は少しばかりホッとした表情となった。
そして研修開始からさらに3ヶ月が過ぎたころ、待っていた時がついにおとずれた。
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