第10話【依頼完了報告とボアの買取額】
「では、第二応接室へお願いします。
私も書類を揃えてから向かいますので少しお待ちくださいね」
サーシャはそう告げるとカウンターの奥にある多くの引き出しから書類を揃えていった。
「――お待たせしましたね。
では、依頼素材な確認をさせて頂きますのでテーブルの上に出してください」
白い手袋をしたサーシャが2つの入れ物を側に置いて僕が素材を出すのを待っている。
「――
カバンから取り出したカードを開放すると薬草を入れた箱がテーブルの上に現れる。
「ミズトギソウになります。
どうぞ、確認してください」
僕の合図でサーシャが頷いて箱を開けて採取してきた薬草を丁寧にテーブルの上に並べていく。
「一応確認しておきますがミナトさんはこの薬草を鑑定スキルで確認されましたか?」
「はい。この依頼を受ける前に似た草があると聞いてましたので全てにおいてスキルで鑑定しています」
「そうですか。
その場合、本来ならば再鑑定をする必要性は無いのですがミナトさんは今回が初めての採取依頼受注であり判断が難しいミズトギソウですのでギルドの方針に従って全て再鑑定をさせて頂きます。
もちろん私はミナトさんを信用しておりますし、今回の鑑定で間違いが無ければ次回から同様の依頼を受注された時は確認不要となりますので今回だけはご了承ください」
僕が頷くとサーシャは「これだけの数ですので少しお時間を頂きますが、何か他にも報告事項があるのですか?」と聞いた。
「えっと、今回の採取の帰り道でボアと遭遇しまして、ダランさんとサーラさんの活躍で怪我とかは無かったのですが倒したボアを僕のカード収納で持ち帰りましたのでその買い取りをお願いしたいのですが……」
「ボアですか?
それならば常設カウンターの常時買い取り手続きをされれば引き取って貰えます。
それについてはダランさんの方がよく知っておられると思いますのでお聞きになりながら処理されれば良いかと思います。
それでしたら私が鑑定している間に換金処理をされても大丈夫ですよ」
サーシャの言葉に僕はダランの方を向き彼が頷くのを見てサーシャに「では、先に処理をしてきます」と言ってふたりを連れて常設カウンターへと向った。
* * *
「すまないがボアの買い取り査定を頼む」
ダランがカウンターにいる受付嬢に声をかける。
「あら、ダランさん。
今回は討伐依頼じゃなくて護衛依頼を受けていませんでしたか?」
「ああ、そうだが護衛依頼の途中でボアに遭遇して討伐したんだ」
「そうでしたか。
えっと、買い取り部位はどちらにありますか?」
「ああ、彼が預かってくれているから置ける場所をあけて欲しい。
それなりの大きさのボアまるまる2頭だ」
受付嬢はちらりと僕を見て「ああ、ミナトさんですね。わかりました、こちらへどうぞ」と僕達を解体場へと案内してくれた。
解体場では解体作業をする男達を大声で指示する親方がこちらを見てすぐにとんできた。
「おっ、ダランじゃないか。
なんだ今日は新手の獲物でも持ち込んだのか?」
「ああ、それなりのサイズのボアが2頭だ。
今回は運良く運んでくれる人材が居たから捌きがいがあるだろうよ」
「それにしては手ぶらのようだが、まさか入口に置いてきた訳じゃないだろうな?」
「まさか、そんな事をしたらすぐに正面入口からの出禁になっちまうよ」
「ははは、ちげぇねぇ」
ダランは親方と面識があるようでお互い軽口を言い合える程度には関係は良好な様子だった。
「じゃあすまないが、この台のうえに出して貰えるか?」
ダランの言葉に僕は頷いて解体台の上にカードを出しカード化をといた。
「――
僕の声と共にカードからボアの巨体がテーブルいっぱいに現れる。
「ぬおっ!? こ、これは!!」
親方の驚く声が解体場に響いて周りで作業をしていた男達がわらわらと寄ってきた。
「おお! すげーのがいるじゃないか!」
「はは、こいつは解体しがいがあるな」
「この肉質を見てみろ、油がのって美味そうだぞ!」
男達は皆、思い思いの言葉を言いあいながらボアを取り囲んだ。
「親方! コイツの解体は俺にやらせてくれよ!」
「いや! うちの班に任せてくれ!」
久しぶりに見る大物に解体場の男達は色めき立ちながら自前の包丁をギラつかせて親方に迫る。
「まてまてまてい!!
だいたいお前達、いまの仕事は終わったのか?
それが終わるまでは指一本コイツには触らせないぞ!」
親方はそう言って男達を持ち場に追い返した。
「まったく、コイツらときたら久しぶりの楽しそうな獲物を見て興奮してやがる。
ああ、すまないな。
あまりにいい獲物だったんでつい興奮しちまった」
「だろ! コイツを仕留めた時の感触は最高だったぜ!」
ダランは右腕で力こぶを作って自慢気にアピールをした。
「あ、もう一体いるので隣の台にも置きますね」
興奮する親方とダランの横で僕は冷静にもう一頭のボアもカードから取り出した。
「な、もう一頭いるのか!?
こりゃあ今日は解体祭りだな。
今すぐに査定してやるからちょっとまってな」
2体のボアを見て更に興奮ゲージがあがった親方は査定表を掴んでボアのサイズや傷の付き方を確認してスラスラと金額を書いてダランに渡した。
「とりあえず、今の時点ではこのくらいだ。
もし肉の状態が良ければ上乗せして後日支払うことになる」
査定額を確認したダランはその金額の多さに驚き親方に聞いた。
「これ、金額が間違ってないか?
ボアが2体で40万リアラとかありえないだろ!」
「いや、このサイズでこの鮮度ならばそれでも安い方だ。
そいつは最低金額だと言ったろ?
普通ならばこのサイズのボアは倒すのもそれなりに大変だが持って帰るには馬車が必要になる、しかも血抜きをその場でしなければ肉に匂いが染み付いて旨味が飛んじまうんだ。
だが、コイツはまだ血抜きはされてないが今倒したばかりの状態だからここで処理しても十分間に合う。
評価が高いのはそういう事だ」
ダランはその話を聞いて僕の方を見て「やっぱりミナトの収納はスゲーんだな」とボソリと言った。
「――換金出来たので分け前を配分するか。
俺とサーラは1頭ずつとどめを刺したから15万ずつ、ミナトは獲物をいい状態で運んでくれたから10万。
それでどうだ?」
ダランがボアの換金代金40万リアラの振り分けを決める。
「僕は運んだだけだからそんなに多くなくても良いよ」
「いや、ミナトがいなければボアを倒しても持ち帰る事が出来なかったのだから本当ならばそれでも少ないくらいだよ。
だが、ミナトは今回の依頼料がガッポリ入るだろうからそのくらいでいい感じになると思うよ」
「そんな、薬草の採取依頼くらいでガッポリ貰えるなら誰でもやるだろうからそれはないと思うよ」
なんだかんだと話して結局押し切られた時、サーシャから声がかかった。
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