第11話【採取依頼の報酬分配とノエル雑貨店】
「ミナトさん。お待たせしましたが薬草素材の鑑定と査定が終わりましたので第二応接室へお越しください」
奥からサーシャの声が聞こえてきたのでボアの分配話は強制的に終わりとなり3人は呼ばれた部屋へと入って行った。
「こちらが依頼の完了報告書になります。
こちらで再鑑定をさせて頂いたミズトギソウ、計200本全て混じりや品質不良等なく完全な状態での納品とさせて頂きました。
さすが鑑定持ちですね。
それで、今回の実績により次回以降のミナトさんが受ける同様の採取依頼は再鑑定の免除を受ける事が出来ます」
サーシャはそう告げるともう一枚の書類をテーブルに置いてから説明を続けた。
「そして、こちらが今回の依頼に対する報酬となります。
詳細を説明するとミズトギソウ1本で500リアラになりますので200本で10万リアラ。
今回の護衛料が報酬額の2割ですので2万リアラ。
そして、申し訳ないのですがギルドでの鑑定料が1本につき100リアラかかりますので200本で2万リアラとなります。
ですので護衛のおふたりには2万リアラを、ギルドの鑑定料で2万リアラを引かせて頂きますのでミナトさんには6万リアラをお支払いする事になります」
「このギルドの鑑定料が結構高いから採取依頼をこなす奴が少ないんだよな」
横で聞いていたダランはもちろん鑑定料がそれなりにする事は知っていたので苦笑いをしながらぼやいた。
「すみません。
これもギルドの貴重な運営資金のひとつなのでご了承くださいね……。
でも、ミナトさんみたいに自分で鑑定出来る方は2回め以降は鑑定手数料無しで報酬を受け取れますのでそれなりの金額になると思いますよ」
サーシャは申し訳ないとばかりに頭を何度も下げてお願いと説明を繰り返した。
「いや、サーシャさんを責めてる訳じゃないから気にしなくても大丈夫だよ。
もちろんサーシャさんはギルドの規定にそった対応をしている事は分かってるからね」
ダランは慌ててそう弁明をする。
「ありがとうございます。
そう言って貰えると助かります」
サーシャは再度頭を下げてお礼を言った。
「6万リアラか……。
一日の稼ぎとしたら十分過ぎる金額だな」
「まあ普通、薬草採取の依頼では一日で稼げる金額ではないよな」
ダランがニヤリと笑いながらそう言ってきた。
「まあ、俺達も今日は稼がせて貰ったから飲みにでもいくか」
ダランの言葉にサーラがすぐに反応して「すぐそうやって調子にのるんだから……。お酒に使う金額は私が決めるからね」と財布をしっかり握りしめていた。
「それじゃあ、またな。
もし、また薬草採取に東の森に行く時はまた雇ってくれよな。
ギルドで指名依頼をしてくれたら出来る限り協力するからな」
「本当にありがとうございました。私達で良ければまた声をかけてくださいね」
ギルドの外まで出た僕はダランとサーラに別れを告げた後、ノエルの雑貨店へと自然と足が向いていた。
――からからん。
雑貨店のドアを開けると小気味の良い音が店内に響き棚の整理をしていたノエルがこちらを振り向きながら挨拶をする。
「いらっしゃいませ。
あら、ミナトさんじゃないですか。
今日は荷物の配達依頼を出してなかったと思ったのですけど、私わすれてましたか?」
いつもの笑顔で迎えてくれた彼女は首を傾げながらなにかあったのかと思い出そうと思考を巡らせる。
「ああ、今日は配達できたんじゃないんです。
いつも仕事を貰ってばかりなので少しは還元したくて寄らせて貰ったんですよ。
ちょっと臨時収入があったものですから……」
本当は「あなたの顔をみるために来たんです」と言いたかったのだが、彼女はお店を経営する年上の女性であり、元の年齢ならばともかく今の僕は16歳と判断されていたのでとてもではないがそんな恥ずかしいセリフは言えるはずもなかった。
「あら、それはありがとうございます。
ミナトさんのおめがねにかなう品物があるか分かりませんが自慢の商品ばかりですのよ」
ノエルは笑顔でそう言って店の商品達のもとへ案内してくれた。
「――僕に似合う雑貨をノエルさんに選んで欲しいです」
日頃から生活必需品しか買うことのなかった僕はどれがいいのか全くわからずにノエルにそう伝えた。
「私が選んでもいいの?
高いものを選ぶかもしれないわよ?」
ノエルは少しばかり意地悪く笑ってから「冗談ですよ」と言いながらある棚に置いてあるカバンを手にとった。
「ミナトさんは配達のお仕事をしているのでカバンなんかが良いかもしれないですね。
このカバンはウエストポーチと言って最近王都の職人が作り始めた新しいカバンの形になるの。
このベルト形の紐を腰にまわして留め具で締めれば手で持つ必要もないから凄く便利だと評判らしいわ。
特にミナトさんはカード収納スキルを持っているからピッタリだと思うわ」
僕はノエルが選んでくれたウエストポーチを手を取り実行に腰に付けて感触を確かめてみる。
「うん。歩いたり走ったりしてもじゃまにはならないようだしカードも中でいくつかの仕切りで分けられるから使い勝手は良さそうですね。
ちなみにこれ、いくらなんですか?」
「2万リアラよ。
まだあまり流通していないのと王都から運ばれてくる輸送コストが高いからどうしても販売価格も高くなっちゃうの。
あ、無理はしないでいいの。
ただミナトさんに似合う雑貨を考えたとき、真っ先に思いついたのがこれだっただけだから……」
「――これください」
「ミナトさん!? 本当にいいの?」
「はい。今日の依頼で臨時収入が入ったって言ったじゃないですか。
確かに普通なら買わないものかもしれませんけど、これから先も今と同じ仕事をするなら絶対に無駄にはならないと思うし、なによりノエルさんに選んで貰った事が嬉しいんですよ」
「ふふっ。ミナトさんは見た目に似合わず女性を喜ばせる言葉を知ってるのですね。
ありがとうございます。
私も良いものを紹介出来て嬉しいですよ」
ノエルはそう言いながら優しく微笑んでくれた。
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