42.四人目の愛妾
「キミは知っていたんだね?」
オレがそう問うと、彼女は小さく頷く。「シンラ王子から計画を聞きました。私は反対しましたが、決意は固く、渋々とそれを認めました」
アダルナはそう説明する。いくら何でも、彼女がシンラ王子の交換生活に、気づかないはずがなかった。親よりもずっと一緒にいる、シンラ王子の家庭教師だ。そしてそれを理解すると、すべてに説明がついた。
「シンラ王子は世界を渡れる、稀有な力を手に入れました。それに、致命的な欠陥もあった。そこで、異世界で自分と交替してくれそうな人を探し、見つけたのです。アナタを……」
「何が決め手?」
「さぁ……。シンラ王子の考えることは……」
「心配じゃなかった?」
「心配ですが、シンラ王子はやると決めたら、やる子なので……」
そういう点は、オレに似るのかもしれない。
「それに、アナタの世界でも協力者をみつけた、といっていました」
「オヤジか……」オレもすぐにピンと来る。親よりも長い時間を過ごし、オレのことをよく理解している。オヤジが気づかないはずがない。そして、事情を聞いて協力したのだろう。
そしてもう一人。オレは激しく突き上げるのを止めて、上気した頬と、軽く息が上がるユイサを見下ろして尋ねた。
「キミも知っていたんだね?」
彼女も小さく頷く。お世話係だった彼女とて、オレの変化に気づかないはずがなかった。
彼女はオレの手をとり、そこに指を走らせる。
〝一所懸命、尽くして欲しい、と……〟
「嫌じゃなかった? どこの馬の骨とも分からない男のことが……」
ユイサは首を横にふった。〝優しい、強い、頭がいい〟
そんな賞賛はこそばゆいけれど、彼女を〝用奴〟という立場から、王族の愛妾という立場に替えてあげられた。
彼女のほどよく盛り上がった胸を両手で鷲掴みにすると、もう一度激しく彼女の奥をまさぐった。
ルルファも同じだ。
「えへへ……、バレた?」
「宿屋で、すぐにエッチを仕掛けてきただろ? あれも、アダルナと示し合わせていたんだね」
「エッチをしたかったのは本当だよ。誘惑して、と頼まれて、そうした。アナタ、カッコいいし、ラッキーって……」
「それでよかったなら、いいけど……」
「子づくりできるんだよ。不満あるはず、ないじゃん♥」
彼女とは、中身が入れ替わってから出会っているので、逆にこれが自然なのかもしれない。
そしてもう一つ、解決しないといけない問題があった。
シンラ王子とアダルナは、ともにオレをこの異世界で利用しようとしたが、一点だけ、彼女たちが描いた設計図とちがう点もある。
「ミケア。キミは……?」
ミケアは頷く。「私は、三日月 千佳です」
「いつから……?」
「正直、いつ入れ替わったのか……? 憶えていないんです。私は彼女と解け合うようにして、シンラ王子を暗殺しようとしたときには、一体になっていました。
死んで、地獄に来たと思っていた。でもこの前、シンラ王子が教えてくれました。私の本体は、元の世界にあって意識不明になっている……と」
きっとそれは、オレが地下牢にいるときではなく、その前。議会へ召喚される、その前日か……。
「私もまさか、アナタがシンラ王子と体を交換しているなんて知らなかった。でもよかった、近くにいられて……」
むしろ、オレの異世界交換生活に、彼女は巻きこまれたのかもしれない。暗殺しようと近くにいたミケアノに、魂が入りこんでしまった。ウリムラで事件を起こして、改革できたことで、シンラ王子もすべてを明かしたのかもしれない。異物だった彼女も仲間とするために……。
オレにもヒントをだしていた。こちらの世界で、彼女に働きかけることで、状況が改善する、と……。偶々、タイミングが世界同時株安となったことで、色々と考え過ぎていたのかもしれない。
そして最後の手紙、「異世界で『やったこと』……」。それは「異世界で『ヤッた子と』……」と読み替えることができた。遠回りだけれど、そうしてオレに気づきを促していたのだ。
「キミは、もどれるのか?」
「分からない、と言われました。アナタが気づくしかないかもしれない……とも」
教えるより、気づきを待った理由は不明だけれど、そこに彼の異世界交換生活、という魔法の真髄があるのかもしれなかった。
「ロデーヌはどうする?」
「私は、アナタに生きる希望をもらいました。大丈夫です。ちゃんとやっていきますよ」
そういって彼女も笑う。すでに病気は平癒し、元気になっていた。
元々、オレの交換生活は、向こうで体が元にもどるまで……という約束だ。彼はその間、オレにこの異世界で、状況を変えるように仕向けてきた。そして彼の望み通りかは分からないけれど、今や正妻一人、愛妾が四人もいる状況だ。
四人? と思ったかもしれないけれど、ルルファも正式に、オレの愛妾となった。彼女の場合、町民の娘であって、誰からも文句を言われる筋合いはない。ユイサを愛妾とした時の反発にくらべれば、かわいいものだ。
そしてもう一人――。
「いいんですか? 私、おばあちゃんですよ」
「何を言っているんだよ。オレからみれば、キミはまだ若い、年下の女の子さ」
そう、アダルナである。シンラ王子よりは十以上も上だけれど、オレの実年齢からみればまだまだ年下だ。
「宿屋でキミの胸にさわったとき、嫌がらなかっただろ? こういうことを望んでいるのかなって……」
そういって、その大きな胸を思い切り揉みしだく。
「私だって……、女性としての幸せが欲しい……。でも、ユウエン王子の誘いを断ってから、私はもうムリだろうって……。だって、別の人を受け入れたら、それはユウエン王子より魅力的ってことじゃないですか……」
それを王族への不敬とうけとられることを、彼女は怖れた。当時はまだ若くて、受け入れられなかった。でも、それで結婚相手に縛りができてしまったのだ。
でも、王族であるシンラ王子となら、それは王族内で相手を選んだ、ということであって、問題もない。
長いこと、迎えにきてくれる王子を待っていた彼女は、オレを迎え入れて、何度も歓喜にむせび泣いていた。
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