35.新しい関係

 婚姻は成立した。でも、これまでと変わることはない。ロデーヌはオレとエッチをしつつ、彼女の頭の中で育ちつつあったそれを、オレが治療する、という生活だ。オレもさすがに医療の深い知識はないので、一気に減らしてはいけない、という程度の注意しかできない。脳腫瘍の治療……、オレにとっても初体験であり、いくら魔法があるといっても、その加減なんて知るはずもない。

 ただ、彼女が不調にならない程度の、治療の感じは経験で掴んできた。オレも魔法を交差させる、という難しいことをしているので、そうそうくり返すこともできず、その両面からペースを守って治療をつづける。

 調子のよいときは彼女もユイサを伴って図書館に行き、読書をすることが多い。前より心なしか、明るくなったとも感じた。


 オレも彼女との結婚を成功させ、その立場が微妙に変わり始めていた。

 第五王子、という以上に王位継承権から遠ざけられ、小屋に生活するなど扱いが悪かったのは、母方の貴族の助力が得られなかったからだ。母は自らの生んだ第四姫、つまり姉が結婚するとき、その姫と一緒にその貴族の家に移ってしまった。オレが王位をめぐる争いで、立場を悪くすると自らが巻きこまれる恐れもあるためか、城から出て行ってしまったのだ。

 しかし、ここでロデーヌと婚姻できたことで、ロデーヌの母の出身貴族である、スベルビラ家とも姻戚関係を築けたことになる。もっとも、スベルビラ家は第三王子のユウエン推しなので、助力は難しい……といっても、オレも無視できなくなったのである。

 そしてもう一つ。この歳で身を固め、これで跡継ぎでもできると、後継レースでも有利となる。もっとも、この体はまだ子種を製造できていない。ミケアやルルファとも、まだそういう意味では本格的な子づくりはできていないのだ。

 オレも元の世界で、何歳ころから出せたか? なんて憶えていないけれど、まだ十歳を超えた……ぐらいの年齢では、いくら性的な部分の成熟は早い、といったところで難しい。

 でも、城に出入りするオレのことを、衛士たちも侮ることがなくなった。その分、城の外にでるのも気軽に……とはいかなくなったけれど、それはオレの重要性が上がったことと裏腹であり、仕方ないと諦めることにした。

 そして、城の中でやることが増えた。話し合いの場に、オレが呼ばれる機会が増えたのだ。それはこれまで、歯牙にもかけずにいた相手のことを少しでも知っておく。万が一に備えて、関係を築いておこう……という貴族側の事情もあって、そうなっていた。

 ウリムラを治めていたカズロワ家が、オレが町をつくり替えてしまったことで凋落したように、あんなことを自分の地元で起こされたら……との警戒もそうさせるのだろう。


 オレは深夜までかかった会議を終えて、小屋にもどってくる。

「久しぶりに、一緒にお風呂に入ろう」

 そういって、ユイサをお風呂に誘った。

 最初にこの異世界にきて、右も左も分からないときに、彼女と一緒にお風呂に入った。用奴という言葉も知らず、全裸になってまで尽くしてくれる彼女に、正直驚いたものだ。

 彼女はオレの体を洗ってくれると、湯船の中では自分が下になり、オレのことを抱えて、まるで椅子のようになってくれる。それはまだ幼いこの体が、お湯に沈んでしまわないように……という配慮だ。

 オレは背中に彼女のふくらみを感じているうち、決断した。

 くるりとふり返ると、驚いて少し開きかけた彼女の唇に、オレのそれを重ねる。

 彼女とキスまでなら済ませている。でも、オレが下した決断は、それより先にすすもう、ということ。

「嫌だった?」

 唇を放してそう尋ねると、彼女は首を横にふる。オレの決意に気づいているのか、まだ戸惑いは消えないようで、オレはゆっくりと話す。

「ずっと、こうしたかった。ユイサをちゃんとした、正式な形でオレの愛妾とみとめさせないと……と思っていた。パレードに一緒に参加したことで、アダルナも了承してくれたよ。

 オレは、君を正式に愛妾とする。……ダメかな?」

 彼女の瞳から、涙がこぼれ落ちるのを見てとった。もう一度、彼女と唇を重ねる。そのとき、彼女がオレの背中に手を回してきた。それが了解を示しているのだとオレも思った。


 でも、用奴とは一般の人間でさえ接触すら忌避する、という。それを王族が愛妾とするなど、恐らく世間的にはかなりのインパクト……悪い言い方をするとネガティブな印象を与えるだろう。

 でも、少し歳が上のこともあって、その大きくて張りのある胸、美しい黒髪もオレにとっては愛おしい。互いの唾液が粘性を増して、溶けて絡み合うように、お互いに吸い付いた唇が離れない。

 胸においた手も、離すことすら惜しく感じる。湯船の中で、膝を彼女の股へと滑りこませ、そこを優しく刺激する。

 これまでも、彼女を愛撫することはあったけれど、濡れようとするそこを、必死で堪えている感じもあった。でも、今は関係ない。湯船の中で分かりにくいけれど、きっと彼女も感じてくれているはずだ。

 お湯の中……なんて初めてで、ゆっくりとオレも彼女へと自分を沈めていく。でも浮力のせいで、上手く挿しこめない。両手で腰を押さえて支えると、それで何とか固定できた。

 初めての彼女は、これまでも一緒にエッチに参加しても、オレが触ってあげることしかできなかった。でも今、つながった彼女の体温は、それが火照りなのか、それともお風呂で温められただけなのか……。でも、さらに自分の奥まで導こうと、彼女もオレの腰に手をまわしてきたことで、互いの体温がつながった気がした。

 オレが腰を動かすと、彼女へととさざ波が立つ。互いに湯船の中で、体が離れないように腰に手を回し、そのさざ波は押しては返すように、オレたちの間を行ったり、来たりする。

 オレはイッた。そのとき、彼女へと流れていくモノを感じ、オレもびっくりする。体が大人になった……。その初めてがユイサで、ちょっと嬉しくもあった。






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