26.ショヤ

 軽く、ソフトタッチで何度か、ロデーヌと唇をかわす。彼女はそれだけで、トロンとした表情になった。

 彼女のファーストキスは、不意打ちで船上でかわしたあれで、そこから先にはすすんでいない。

 彼女のメガネを外すと、少し長めにキスをした。

「私……。メガネがないと、顔も分からない」

「キミの傍にいるのは、オレだけだよ」

 そういうと、彼女をベッドに押し倒した。

 この世界では、まだ十歳に満たない間でも、セックスするのが一般的だ。彼女も自然とそれを受け入れたけれど、緊張しているらしく、体を固くしている。

 オレは水を口にふくむと、そのままキスをする。彼女の口の中に、オレの体温で少し温かくなったそれを流し込んだ。

「緊張すると、喉が渇くだろ?」

「……う、うん」

 そんなことをされたのは初めてで、彼女も真っ赤な顔で頷くばかりだ。オレはもう一度、水をふくんでキスをした。そのとき、そっと口の中に別のものを仕込んで、一緒に彼女へと流しこむ。彼女はおいしそうに、喉を鳴らしてそれを飲みこんだ……。


 年齢に似合わず、彼女の胸はほどよく……というか、ユイサ並みに膨らんでいた。服の上からでも分かるけれど、服を解くとさらにその大きさが分かる。

「は、恥ずかしい……」

 自分の手で隠してしまうけれど、むしろ形はよいし、大人のそれに近い。ただ、同世代の少女と比較してみると、自らは違和感を生じてしまうようだ。

「きれいだよ」

 そういうと、手を剥がすようにして二つの膨らみを露わとし、唇でさするようにして、その先端を弄る。メガネを外しているので、彼女は諦めたのか、じっと目を閉じている。胸にふれられたことすらなかったのだ。それを湿り気のある唇なんて、それだけでも緊張するに違いない。でも、それで終わるはずもない。オレはゆっくりとそれを口にふくんだ。舌と歯で、ゆっくりと周りから責める。

「ん、ん……」

 彼女は目をつぶったまま、何度も首を横にふった。それは嫌がるのではなく、初めての感覚に戸惑っているようだ。そっとオレの手は彼女のお腹を通り越して、その下へと這っていく。

 そのとき、彼女の瞳から涙がこぼれ落ちた。


「嫌?」

 そう問いかけると、彼女は首を横にふった。

「ちがうの……。私に、こういうことができるなんて……」

 早死にする、と言われているのだ。嫁のもらい手もない、と自ら諦めていた。彼女のそこはもうとろとろで、興奮し、準備が整っていることが分かった。

「いくよ」

 オレも彼女と一緒になるために、前進した。初めて、そこを男性によって踏みしめられる彼女は、小さく体を震わせながら、それを受け入れてくれる。ただ、オレがその温かい中を奥までたどり着くころに、彼女は「う~ん……」と唸ったまま、意識を失ってしまう。

 やっぱり……。オレは目をつぶって動かなくなった彼女を見下ろしたまま、軽くため息をつく。

 扉がひらくと、そこにユイサが入ってきた。彼女は口が利けないので、無言のままベッドに乗ってくると、ユイサの頭を自分の膝の上に乗せる。

 オレはベッドの脇にある小さな机の引き出しから、魔法杖をとりだした。それをロデーヌの頭、おでこの辺りに当てて、詠唱をはじめた。


 オレは魔法を制御回路と認識するので、詠唱することはほとんどない。ただ、今回はちがった。

 何しろ入力が複雑で、難しいのだ。自分から魔法杖に送る魔力をうまく調節するためにも、詠唱によってそれを為す必要があった。

 集中する。彼女のおでこの魔法杖に、すべてを籠めた。

「見えた!」

 先ほど、彼女に飲ませた薬が効いたようだ。オレの脳裏にはその映像が送られてきている。これはオレの知識からすると、レントゲンやMRIに近い。先ほど飲ませたのは、魔法に反応しやすい糖で、癌細胞にとりこまれ易い。そうして、彼女の脳内にある異物の姿をとらえることができたのだ。

 彼女が年に合わない成長ぶりを見せるのも、過度に女性ホルモンが発せられていると想定された。脳内にある異常……。かつて取り去った、そして取り切れなかったそれが、しっかりと大きくなっていた。それが脳内を刺激し、女性ホルモンを過剰に分泌させている。

 しかし、それを切除する魔法はない。そんな都合のいい魔法が、あるはずもない。ただ、オレには考えがあった。


 ロデーヌにプレゼントした魔法杖を右手にもち、それを彼女のこめかみから、側頭部の方へとゆっくり、その位置を探る。オレがやろうとしているのは、粒子線加速器治療……に近いものだ。

 X軸、Y軸のビームが交錯するところで、強いエネルギーが発生して、その熱で癌細胞を攻撃する。でも、それをするためには正確に位置、形状を知る必要があった。だから複雑な詠唱をつかって、透視のようなことを試みたのだ。

 そして、これにはエッチをする必要があった。なぜなら、女性ホルモンを過剰に分泌するように、彼女のそれは情感、エッチによる感応をえやすい部位の近くにある、と想定されたからだ。

 意識を失ったのは想定外だったけれど、感度が高まれば、癌細胞が悪さをする可能性は考えていた。何しろ、日々に女性ホルモンを過度に分泌させるぐらい、それは性的な部分に近いのだ。

 無理に起こさないのも、寝かせたままの方が治療もしやすいから。それに失敗すれば、脳内を傷つける可能性もある。これは賭けだった。

 慎重に……。オレはUFOキャッチャーを思い出す。ゲーセンで鍛えた技、座標を決め、ビームの照準を合わせた。

 まるで数メートル先にある針に、糸を通すように、光魔法である電子ビームを飛ばして右手と、左手の位置を調整した。

 透視する先で、エネルギーが衝突し、バシッと弾けるのが見えた。

 よしッ! エネルギーが弾けて、癌細胞の一部が焦げるのも見えた。しかし、そのエネルギーの衝突は小さく、それだけですべての癌を消滅させることは難しい。これをくり返し、行っていく。

 ただ一度ですべてを焼き切ると、それこそ体の負担も大きい。その見極めが難しいけれど、オレは全裸のまま、彼女の頭に二本の魔法杖を当てつづけた……。


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