12.火山

「王子、最近、町にでているようですね」

 アダルナにそう詰め寄られる。怒られるかと思ったけれど「気を付けて下さい。魔法杖は忘れないように」とだけ言われた。

 暗殺犯を捕らえる際、オレの魔法によって助けられたことで、多少は見直してくれたらしい。最近、午前から昼過ぎまで、アダルナによる教育をうけ、夕方には自由時間になる。アダルナも色々と忙しいようで、オレに構っていられない、という事情も大きいようだ。

 オレが町にでて、何をしているのかといえば、畑づくりである。

「シン、燃やしておいたけれど、これをどうするんだ?」

 オレは『シン』と名乗り、農家を集めて農業指導をしている。

「粉々にして、畑にまくんだよ」

「焼き畑農業か? 灰を撒くと、土壌をアルカリ性にする効果もあるが……。これは炭だぞ」

「ちがう、ちがう。薄く撒くだけで、土には混ぜこまない。そしてそこに苗を植えるんだ。要するに、土の色を黒くして、太陽の熱によって地温を上げるんだよ」

 みんな、ポカンとしている。そう、この世界の人は知らないのだ。マルチという、畑で畝をつくるときに張っておく、黒いシートのことを……。

 土は呼吸をするもので、それを覆うという発想もなかった。そして、この異世界にはマルチにする、ビニールシートもない。そこでオレが木炭を思いつく。一般に、木を燃やすだけだと、炭にならずに灰になってしまう。そこで木炭づくりから始めることになり、土でつくった竈に、熱をかけて炭をつくった。その炭を、砕いて粉々にして畑に撒く、というのだから、驚かれて当然かもしれない。

 でも、このオノガル国は大陸よりも寒く、農業がふるわない。地温を上げれば収量も上がるはずで、それを根気強く説得して、実践しているところだった。


 諸外国向けに売れるものをつくるのは当然として、農作物だと一過性に終わる可能性がある。長期的には食糧事情が改善し、人口増という恩恵もありそうだけれど、それだけでは上手くいかないだろう。

 そこで、西にあるオノガル島最大のジュナ山に登ることにした。そこにミケアと、ユイサの二人も連れていく。

「何で私まで……」と、ミケアはぶつぶつ文句を言っているけれど、ポーターは絶対に必要だと思っていた。要するに、荷物持ちである。それに、あの小屋で過ごしているだけでは、息がつまる。ユイサも、用奴として掃除や食事の準備など、よくやってくれているし、偶には外につれだしたいと思っていた。

 ジュナ山は予想した通り活火山のようで、頂上に近づくにつれて火山岩がごろごろしている。標高は、それほど広くもない島にある山であり、千メートルを少し超えるぐらいだろうか。

 頂上までいくつもりはないので、途中でビバークするように、平らな場所で休憩する。

「何を調べにきたの?」

 ミケアにそう尋ねられ、オレもニヤッと笑う。「オレが何かを調べているって思っていたんだ?」

「ただの山登りをしに来たわけじゃないでしょう?」

「いいや。山に登って、ここで子づくりするのもいいかなって、思っただけさ」

「え? こんなところで? 嫌よ」

「大自然の中でするのもいいものだよ」

 ユイサが広げたマットの上に、ミケアを寝かせる。ここは神聖な山であり、一般人がそう易々と上ってくることはない。

 彼女は嫌がっていたけれど、無理やりにキスをすると、満更でもない様子になる。山に登るので、少し厚手の服を着てきているため、中に手をすべりこませると、やや汗ばんだ肌と、その服でサンドイッチにされ、こちらの手が彼女の肌に吸い付くようである。


「んん……。んん……」

 ミケアをボクの足の上にのせ、後ろからまだ膨らんでもいない胸を鷲掴みにし、後ろから彼女の唇をふさぐ。彼女の前からは、ユイサが陰部に指をはしらせ、彼女を二人で同時に責める。最近、ミケアとの子づくりはユイサとの協力戦になっている。必ずユイサが隣にいるのだから、一緒にしない手はない。

 ユイサは声がだせないので、ゆっくりと頷く。オレもそれで、ミケアを少し持ち上げると、オレのそこに座らせる。オレは左手を背中側につき、それで体を支えつつ、両足をつかって腰を跳ね上げるようにして、彼女にするのだ。

 ミケアはオレの膝に手を置いて、体を安定させながら、全身を跳ね上げるようにする体位に、身震いしながら興奮する。

 オレは余った右手を、ユイサの下履きの間にすべりこませる。用奴に対しては、粘膜同士の接触はみとめられていないけれど、こうして慰めてあげることはできる。彼女はすでに感じていた。

 三人でするときは、こうして指で慰めてあげることが多く、事前にそれを期待していたのだろう。自ら胸をさらけだし、オレの顔の前に差し出してくる。ミケアに対して腰を動かしながらだと、中々難しい体位になるけれど、何とか大きく口を開けて彼女の膨らみを口の中に収めた。

 声をだせないことで、彼女は用奴の中でも、一段と身分が低いのだそうだ。ここまでする用奴は少ないそうで、王族の中でもかなり下の地位である、オレの専属となったのもそのためだ。

 だからこそ、逆に大切にしたかった。彼女にできることをしてあげる。彼女は指だけでイッたらしく、オレの頭をぎゅっとしてくる。胸に吸い付いたままなので、彼女の胸にかき抱かれた形だった。


 ジュナ山に登った理由は、勿論子づくりのためだけではない。鉱物資源を探しに行ったのだけれど、具体的にみつけることはできなかった。火山岩だと多孔質で、軽石であることも多いけれど、有用な鉱物は含まない。金や銀など、地下資源を噴き上げていることがあれば……と思ったけれど、そんなものがあれば、とっくに発見されているだろう。

 しかし、このそれほど高くないキリ山にある城の、あの地下をみたときに気づいたのだ。アリの巣のようになったそこは、明らかに鉱物を採掘していった跡だ。つまりこの島には、鉱物資源があったはずなのだ。それが今では、それを忘れ、情報が途絶えていた。

 もしかして、ジュナ山にその理由が隠されているのでは……? そう思って探しに来たのである。

 ユイサと手分けして持ち帰った岩も、やはり火山岩のそれだ。むしろ、火山爆発があって、採掘を止めた……? 島から誰もいなくなった? もしかして、プレ文化がここにはあったのかもしれない。

 そうなると、プレ文化の遺跡を探った方がよさそうだ。オレもそう思い定めると、城の書庫へと向かった。





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