9.立て直し

 朝までかかって、自動売買のプログラムを組みなおした。今の相場が大変なのは、中央銀行が緩和の極みにあり、何の支えにもならなかったこと。そして金融大手であるバンGの破綻は数兆ドルの負債となり、アメリカ政府さえ放り出してしまったこと。ゆえに底がみえず、物流が止まり、金融が機能を果たさずにいる状態がつづく、ということだ。

 オレが投資家に連絡をとると、その程度の損で安心した……という声も多く、むしろよくやった、と褒められるなど、助けられた部分もある。でも、損は損だ。顧客に対して運用によりプラスにする、と約束した以上は最後まで頑張るのが、金融ディーラーの務めである。

 こういうときは相場の乱高下がつづくので、それに対応したプログラムにしないといけない。

 しかも企業の資本金、有利子負債、業績等を加味して、投資対象を選ばないといけないし、何よりこの相場に強い銘柄を選ばないと、フリーフォールで落ちていくことも想定された。

 オレはこつこつと、そうした情報ベースを一人でつくり、それをプログラムによって運用してきた。そんなデータベースも一切を更新し、プログラムをつくり終えたころには一昼夜経っていた。

 腹の辺りがズキズキと痛む。幸い、胃には損傷がなかったけれど、腸の一部が傷ついていて、固形物はとれない。ゼリー状のものを流しこむけれど、空腹が満たされた感じもないし、おいしくもなかった。

 すべてを終えると、オレも自分のベッドに倒れこむ。そして、二日ぶりに眠ってしまった……。


 目を開けると、木の天井がみえた。

 …………あれ? 異世界にもどっている? どうやらそうらしい。

 眠るとこっちに来るのか? 分からないけれど、こちらから向こうに戻る術は思い当たらず、こちらには意識を失うように眠ったときに、渡ってくることは再現できたようだ。

 オレが部屋をでると、アダルナが「大丈夫ですか? 二日間、体調が悪いと言っていましたが……」と尋ねてくる。

 向こうで過ごしたのもおよそ二日、こちらでも二日か……と思いながら、

「もう大丈夫です」

「初めて子づくりをして、興奮し過ぎたのでしょう。私も、何度も、何度も繰り返させたのは反省しています。これからはもう少し、ゆっくりと子づくりを経験していきましょう」

 アダルナはそう告げた。どうやら、オレが調子を崩したのはエッチのし過ぎだと理解したようだ。そうなると、あの眠ったときから今までの時間経過も、きっちりと合うことになる。

 色々なことが不明ながら、とりあえず少女に会いにいくことにした。オレが愛妾にする、といったことで、拷問をうけずに済んだけれど、それ以上に彼女と無理やり関係してしまったことで、彼女の心を傷つけてしまったかも……と思っていたからだ。


 少女はユイサの部屋にいた。用奴であるユイサと一緒にいることも、少女にとっては屈辱的だろうけれど、大人しくしているらしい。

 オレが部屋に入ると、少女はオレに飛びついてきて、唇をかわしてくる。

 ……え? あのときは嫌々……という感じだったけれど、一度経験したことで意識も変わったのか? オレも彼女をうけとめ、熱い口づけをかわす。

 そこにいるユイサが驚いたのと、目の前で繰り広げられる痴情に、真っ赤な顔でこちらを見ているのに気づき、オレも唇を離す。

「説明してくれる気になった?」

 それは、オレを暗殺しようとしたこと。少女はふいっと横を向く。どうやら、そこはまだ黙秘をつづけるらしい。

 今のキスで盛り上がったオレは、少女をユイサのベッドに押し倒すと「しゃべらないと、またやるよ」といって、彼女の胸をさわる。まだ盛り上がっていないので、揉むという形にはならないけれど、昨日はあんなに嫌がっていた彼女は、今日はそれを受け入れてくれるばかりか、オレの首をつかんで自分に引き寄せると、ふたたび熱いキスをかわしてくる。

 こうなると、もう止められない。隣にユイサがいることなど気にも留めず、どんどんと服を脱いでいく。

 少女はまだ胸すら膨らんでいないので、同学年かやや下だろう。それでもこの世界では、性的な行為にすすむのか……。そんなことを考えつつ、彼女を下から眺められる位置で、オレは舌を這わす。この前、一度経験しただけのそこは、まだ自ら湿り気を足すような濡れ方はしていない。そこに、オレから湿り気を足すようにしっかりと舌で愛撫する。

 十分に準備ができたので、彼女とふたたび結ばれる。まだきついけれど、さすがに前回で何度も、何度も繰り返したそこは、オレを憶えていたかのようにピタッと接合してくる。

 今回は彼女の両肩を両手で抑えつつ、オレはゆっくりと動きだした。


 彼女とのそれは開発だと思っている。まだ成熟しきれていない体に、恐らくは酷なことを強いているけれど、この前は彼女を助けるため、今は彼女が望むなら、こうして関係をつづけよう……と。

「キミの名前は?」

 不意の問いかけに、少女はうっすらと開けた目と、その口から「ミケア……」と呟いた後、ハッと口をつぐむ。何度も絶頂を迎えていたこともあり、油断して口を滑らせた、という感じである。

「ミケア……いい名前だね。苗字もあるのだろう?」

「…………。ミケア・ポヌです」

 恐らく偽名だろう。でも、これで少女ではなく、ミケアと呼ぶことができるようになった。

「ミケアはオレを殺そうとした理由を、話す気になれないかい?」

 口をつぐんで横を向いてしまう。仕方ないとばかり、彼女をふたたび下から責めることにした。

 ただ、ずっとベッドの横で、赤い顔をしながら横を向いているユイサに気づく。

「ユイサ、こっちに来て」

 彼女が近づくと、背中の側から服の下に手をすべりこませ、ユイサの胸を鷲掴みにする。ユイサもまだ十代半ばぐらいで、それほど大きくはないけれど、十歳前後のミケアよりは確実に大きい。その胸を愉しみつつ、ミケアとの子づくりを続けようというのだ。

 ミケアはちょっと嫉妬の籠った目を向けてきたけれど、これは暗殺しようとした黒幕を語らない、彼女への罰だ。ユイサも隣で、ずっと見せつけられてきたので、感じやすくなっているようで、オレが胸を揉みしだくと、手が自然と股の方にいくのを見てとった。

 用奴といっても、彼女も女の子。今はここまでしかしてあげられないけれど、いつか彼女とも……と考えている。どうせ王位を継げない、第五王子なのだから、いずれ王族からも追い出されるかもしれない。向こうの世界より、こうしてエッチができて満足していた。

 脱ぎ捨てた服のポケットに入っていた、そのメモに気づくまでは……。




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