無血開城って難しいですね
事の顛末をお聞きになった皇帝陛下は、嬉々として彼の国に書簡をしたためました。
簡潔にまとめますと、
『いやー。第二王子が来るって聞いてたけど、王太子らしいじゃん?
他の国の人に聞いても、そんな発表聞いてないっていうし、びっくりしたわー。
知ってたら、もっとちゃんともてなしたのに、言ってくれればいいのに、お前の所の国ってそんなに秘密主義だっけ?
ところで、そっちの聖女とか言う娘がうちの息子を種馬扱いしてくれてるんだけど、どういうこと?
そっちの無茶苦茶な暴言なら、子供の戯言で流してやってもよかったけど、うちの大切な皇太子を種馬扱いとか、まじふざけてんの?
戦争する? しちゃう? 近隣諸国に助けを求めても無駄だから。
このこと、魔導士使ってもう広めちゃってるから。
むしろ、とっとと自衛しないと滅ぼされるんじゃね?』
と、いうところでしょうか。
近隣諸国には即日のうちにジュピタル公爵家所属の魔導士が書簡を持って転移しましたので、今頃各国はお腹を抱えて笑っていると思います。
今まで手を出したくても出せず、無意味に高い関税などを取られておりましたので、これ幸いと戦争を仕掛けるのではないでしょうか?
そもそも、ジュピタル公爵家の守護結界がなくなった時点で、戦争は秒読みだったでしょうけれどもね。
外交団に関しましては、マロン様とマリナ様を含めた皆様は、しっかりと保釈金をお支払いいただき、お国に帰ることになりました。
当たり前ですわよね、他国の方もいる前であんなにも正々堂々と宣戦布告(本人は自覚ありませんが)してきましたもの、ただで帰すほど皇国は甘くありませんの。
マリナ様は最後まで、ワーグナー様が助けてくれるとか、王国に攫いに来てくれるルート? とかおっしゃっていましたけれど、『渡り人』のおっしゃることは、意味が分からないことが多いと文献にもありましたし、マリナ様もそうなのでしょう。
それにしても、やはりと申しますか、想像通りと申しますか、ティーム兄様は王妃様と一緒に北の塔に幽閉されているのですね。
『誓い』がある以上、王都から連れ出すことも出来ませんし、どういたしましょうか。
王都にあるジュピタル公爵家の隠れ家に匿ってもいいのですが、長くはもたない気もしますし、戦争になる場合、むしろ魔力阻害の結界がある北の塔に居た方が安全かもしれません。
「ミレイア、なーに難しい顔をしてるの?」
「彼の国が随分きな臭くなってきましたでしょう? 残っている国民や、ティーム兄様の事が心配で」
「あぁ、うちの皇国の軍が動くんだったら無血開城も出来るんだろうけど、他国の軍事力だとどうなのかなぁ」
「どれほどの魔導士を抱えているかによりますわよね」
その気になれば、わたくし一人で無血開城ぐらい出来るのですが、他国の軍事力にそこまで精通しているわけではありませんし、罪のない方々が傷ついてしまうのは出来るだけ避けたいのですよね。
友人にお手紙を書いて、きな臭くなっているので国を脱出した方がいいとは伝えておりますけれども、領民の事を思って脱出できない方々も多くいるようです。
流石に、全員を皇国で受け入れると言うわけにもいきませんし、難しいですわね。
周辺諸国にも働きかけておりますけれども、どの国も彼の国を攻め込むのはいいけれども、やはり無益な殺生はしたくないとのことです。
しかしながら、抵抗をされたり、それこそ考えたくもありませんが、肉盾にされてしまえば無駄な血を流さなくてはいけなくなります。
あのような国に忠誠を誓っている貴族なんて、一部の利権で甘い汁を吸っている方々だけだと思いますが、そう言う方に限って腰抜けなのですよね。
潜らせた間諜によって、貴族の分別は終わっているので、役立たずな貴族はどうでもいいのですが、有益な貴族はやはり残したいと思ってしまいます。
うーん、執政者ってこういう事も考えなければいけないので、本当に大変ですわ。
皇帝陛下達を本当に尊敬してしまいます。
あ、彼の国の国王ですか? あれはウィンダル公爵家に政治の八割を任せていますので、尊敬に値しません。
しかも、ウィンダル公爵家が裏切らないように『誓い』までさせておりますもの。
「強い魔導士を抱えていても、被害は出ちゃうんじゃない?」
「国王の前に転移して、首をスパッとすればいいだけの話ですわ。王宮内の地図は頭に叩き込まれておりますので、わたくしってばついうっかりその情報をお茶会の四方山話にだしてしまうかもしれませんわね」
「なるほどね。……あれ、謁見室って転移魔法を阻害する結界とか無かったっけ?」
「あんなもの、核になる魔道具を壊せばどうにでも出来ますわ」
「ミレイアはそれの場所も知ってるんだ?」
「ええ、魔力を流し込んでいたのはわたくしですもの」
「なるほど。ってことは、今は魔力切れ状態?」
「何もなければあと一年ぐらいは機能しますわね。なにもなければ、ですけれど」
核になっている魔道具を持っているのが、王妃様なのですが、北の塔に幽閉しているようですし、あそこからでは、魔力阻害の結界に阻まれてうまく魔力が行き届かないかもしれませんけれども、ご自分でそうなさっているのですから、仕方がありませんわよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます