勝利の女神は大五郎カット。
10月1日(金)
せっかくの「優勝」の機会を不意にするのも惜しい。俺は試合への出場を監督に直訴した。
「健、もちろん地区優勝できるに越したことはないないよ。でもね、我々はすでにリーグ優勝を視野に入れているんだ。そのためのキーマンが健だ。もちろん、投手としては今日も登板の可能性は0ではない。準備の方はよろしく頼むよ。」
完全に野手として使う気はなさそうだ。デイブもあまり若いうちにタイトルを獲っても風当たりが強くなるだけだよ、としか言わないのだ。おそらく日本よりもずっと気軽にMLBでは球団を「渡り歩く」ひとが多い。だからこそ自分がよそに行って気まずい思いをしないための準備は万端にするのだろう。彼らの助言はすべて自分のためのものにすぎない。
個人的には「幸運の女神に後ろ髪はない」という考え方の方に共感が強いのだが。獲れる時には確実に獲る、それがプロではなかろうかと。(ただよく言われるこの「幸運の女神」の
試合はロバスツが終始リードする展開。俺にお呼びがかかることもなく7対0で敗北。
10月2日(土)
前日のヤーナーズとレッドアックス戦が雨天延期となり、ダブルヘッダーだそう。マイナーリーグ(AA)時代は土曜ダブルヘッダーなんて普通だったけど今はちょっと。
カンザスのお客さんにとっては完全に消化試合なわけだが、最後の土曜日試合ということもあって大勢来てくれる。ほんとは俺を見に来てくれた方々もいただろうに。すまんな、「大人の事情」で。
6日からポストシーズンの第1戦がはじまるため、投手の球数のマネジメントにも気を使わなければならない。そのために先発はソニースタイン。
8人の投手の継投でまさに完封「リレー」。6日に先発予定のブライスも1回投げる。ちなみに勝利がついたのはたった2球で2アウト取った2番手のスコール。
ヤーナーズとレッドアックス戦の第二試合はなんと午後9時半から試合開始。終わったのは翌午前1時半頃。(しかも先発投手は松阪さん。)お疲れ様でした。ちなみに1勝1敗。
これでヤーナーズとレイザースは95勝66敗と並ぶ。レイザースが優勝するには自軍が勝ち、ヤーナーズが負けなければならないのだ。両軍ともに勝った(負けた)場合はもう1試合やることになる。いわゆる「
10月3日(日)
優勝と2位の差は大きい。特にプレーオフを本拠地で始められるというのが大きい。監督は最後の先発にウェズを送り出した。試合は2点を追う展開。
ウェズは7回2失点と好投したものの打線が得点できず。9回にやっとベーニャの2点タイムリー2塁打で同点に追いつく。そこで俺とヘル吉が急遽ブルペンに送られる。
その時点でヤーナーズがボストンに8対4で敗れるという一報が入った。9回裏はブノワ、10回裏はスコールが投げいまだ2対2の同点。ブルペンコーチのボビーが受話器を置いて俺に行った。
「健、出番だ。」
最終先発が悔しい思いで終わったばかりに、俺は気合を胸にマウンドにあがる。おそらく8月までのスカウティングレポートとは全く違う投球の軌道に打者はまったくカンザスシティ打線のタイミングがあわない。5番カヒム、6番バートミット、7番ガードナーを3者連続三振。
12回表。一死無走者。指名打者を解除して俺がそのまま打席に入る。監督の指示は「出塁」。要は四球でもいいわけだ。第1球は真ん中高めの4シーム。相手は俺が1球見ると思っていただろう。俺はそれを引っ張るとライト線への長打コース。俺は一気に三塁を陥れる。
続くブライアンは三振。二死三塁で代打ロッソ。2B1Sからのチェンジアップをひっかける。ぼてぼてのサードゴロ。俺は当然本塁突入。しかし、三塁手の悪送球でロッソセーフでついに2対3。
投手俺に代わって守護神トリアーノ。ロッソが指名打者に。二死三塁二塁とピンチを背負いながらも最後は153km/hの4シームで空振り三振。最終戦でついに地区優勝を決めた。そして最終戦1イニングを投げた俺に勝利がつき11勝目。
ベンチからグラウンドになだれ込む選手たち。なんだよ、やっぱり優勝の方が何倍も嬉しいじゃんか。日本と違って胴上げはないけど。
ちなみに俺の「打点王」も確定した。カブレロと同時受賞ということになる。まあ俺は4月はマイナーだったし、投手やってるときは打席に立ってないからしょうがないよね。
ただ感傷に浸っている暇はなく、ポストシーズンへと気持ちを切り替えなければならない。さすがに「シャンパンファイト」は無しで、宿泊先のホテルで夕食会。一泊してセントピートに戻ることになった。
打者
(左)打席253 打数223 安打72(長打44)四球29死球3敬遠5 犠打4 打点83 二塁打10三塁打1 本塁打33
(右)打席96 打数88 安打37(長打25) 四球6敬遠1犠打1 打点43 二塁打6 本塁打17三塁打1
(合計)打席349 打数311 安打107(長打68) 四球35死球3敬遠6 犠打5 打点126 二塁打16三塁打2本塁打50 打率 .350 出塁率.436長打率.900 OPS1.336
盗塁8
投手
(左)試合13 5勝5敗 80回 失点26 奪三振58 防御率2.93
(右)試合12 6勝 3敗 74回 失点21 奪三振53 防御率2.55
合計 試合25 11勝 8敗 154回 失点47 奪三振111
防御率2.75
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