ひらめきは突然に
9月19日(日)
久しぶりのデーゲーム。明日から敵地NYでの最後の直接対決が控えていますからね。ベーニャ休養日?なるほど、って納得できるかー!俺の登板日ばっか休ませやがって。デズが俺先発って喜んでました。オメー、
「健のやつ、荒れてるぞ。」
「気にすんな、
ひそひそしてんじゃねー。オメーらそれ女子の前で言ってみろ!社会的生命即座に断たれるからな!(日本限定)
先回ボコられた同じ左投げでの挑戦、まさにリベンジを目指す。相手先発はイズミール。松居さんは4番指名打者。
先回粘着物質の話が出たが、アメリカのボールはとにかくつるつるしていて「手につかない」。理由は簡単で、MLBの公式球のサプライヤーは1社しかない。だから品質を向上することよりコストをカットすることにしか頭が回らないのだ。なので日本製(球団ごとに選定できるので企業競争あり)を触ると、ああ、粘着物質なんて最初から要らなかったんだ、という感想になる。まさに「鼻につく」話だ。
ちなみに俺の対策は汗の分泌を魔法で調整できる(細かく説明すると『怒り魔法』(デバフ)を利き手の掌の表皮部分にかけるととめどなくじんわりと発汗してくれる)のだ。
松居さんは今日もわざわざブルペンまで来てくれる。先日の植原さんの「巻き込み事故」で植原さんに謝罪の電話をかけてくれたそうだ。当人は「知らんけど、言うてくれてたら誰かて冗談ってわかりますやん」と気にしてない様子だったとか、関西人はな!
「今は粘着物質ばっかだけど、それはどちらかと言えば必要悪やし。昔はヤスリで削ったエメリーボールなんてあったみたいですけどね。」
という面白話を聞いていて閃く。せや!指の指紋部分だけ『体表硬化』をかけてみたらどうなるんだろう?体表硬化魔法とは異世界では皮膚を硬化させて刀傷を防ぐためのもので、俺もここでは死球対策に使っている。それを指の指紋部分や指の側面部分にかけたらヤスリがけとはいわんまでもグリップ力がむっちゃ上がるよね?
ただ、おもいついてその日に実戦投入というわけにもいかず、次回に持ち越し。
試合は一回に明らかに下に外した球を2番アブレーに本塁打される。あれに手をだすとかどうかしてる。
4回には走者一人置いて9番ボーガスに明らかに外した内角への高いボールを本塁打される。あれに手を出すとかどうかしてる。
結局味方も2点しかとってくれず黒星がつく。
「リベンジならず」の俺に気を使ったのか、試合後のインタビューでは
「健ちゃんの投球ですがどうご覧になりましたか?」という質問に
「もう高校生ではないのでね、一試合負けたらシーズン終了なんてことはないのですよ。だからこの結果をいかに次の登板の糧にできるかが大事なんだけど、それができる子なんでね、また次会った時にはぐんと成長して僕らを驚かせてくれると思いますよ。」という慈悲深きお言葉。
俺も落ち込む間もなくドリンクをバスに積み込み、NY行きの準備をしていた。
ちなみにこの日バチスカーフも本塁打なし、ヤーナーズもお付き合いで敗戦。人の優しさが心にしみる(もちろん、そんなつもりはないと思うが)
9月20日(月)
今季最後のNY決戦。今季の同リーグ同地区チームとの対戦は各18試合。そのうち7試合を今月しかもここ10日間でやるというひどいスケジュール。しかも優勝をかけての直接対決というのだから運命のいたずらか悪魔のたくらみか。いずれにしてもこの戦いの結末は神のみぞ知るわけだ。
日本からの報道陣も多い。ただ日本の場合はレイザースよりでありがたい。あの(昨年のワールドシリーズMVPの)松居さんを追い払ったヤーナーズですからね。もちろん当の松居さんも同じ現役選手の俺にもそんな感情は一切ない。「契約」がすべてだから。契約を切られたら自分の真価を見せつけて、相手に地団駄踏ませて、また俺と契約して欲しけりゃもっと金を積め!と言ってやればいいのだ。
第1戦の先発はあちらがイノーバ(右腕)、こちらがゲイザー。俺は1番指名打者。
大事な一戦を任された新人の緊張は理解できるが球が荒れる。もっとも当初はそれがいい方向に出ていた。2巡目の3回表、一死一塁でとんでもない暴投で一塁走者のバードレッドが二進。俺は敬遠。結局得点ならず。逆にその裏にガンダーソンの20号2ラン本塁打で先制される。さらに5回に2点追加され4対0に。
6回、また四球のバードレッドを一塁に置いて俺。アウトハイに外しまくっているので狙って打つ。ライトスタンドへの46号2ラン本塁打。さらに2点追加して同点に追いつく。
しかしその裏ガンダーソンの連発本塁打などで4点を失い8対4に。7回表、先頭打者の俺のライト前ヒット。からの二盗を足掛かりに1点。9回に2点を奪い1点差と追い詰めるも及ばず、8対7で惜敗した。
そう、この一敗でシーズンがまだ終わったわけじゃない。
打者
(左)打席236 打数207 安打67(長打39)四球22死球2敬遠5 犠打4 打点78 二塁打8三塁打1 本塁打30
(右)打席92 打数84 安打34(長打23) 四球6敬遠1犠打1 打点40 二塁打6 本塁打16
(合計)打席328 打数292 安打101(長打62) 四球26死球2敬遠6 犠打5 打点118 二塁打14三塁打1 本塁打46 打率 .346 出塁率.413長打率.873 OPS1.286
盗塁6
投手
(左)試合12 5勝4敗 73回 失点25 奪三振53 防御率3.08
(右)試合11 4勝 3敗 67回 失点19 奪三振45 防御率2.55
合計 試合22 9勝 7敗 140回 失点44 奪三振99 防御率2.83
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