復活の兄貴。
9月5日(日)
セプテンバー・コールアップで呼ばれた選手たちのうち、いまだ出場機会を得ていないのがロッソ・バルテッリだ。彼は5月にDFAで退団しサンフランシスコに行ったパット・レベルが残した背番号5を使っている。
彼はミトコンドリアの異常に端を発する難病を抱え、身体に痛みを感じながらプレーをしていたが我慢できる限界を超え、ここ数年はILに入って治療に専念しながらチームに帯同している。そして最近マイナーリーグで現場に復帰し、9月に戻ってきたのだ。
「ロッソ、体調はどう?」
俺が挨拶がてら声をかけると笑った。
「まるでおふくろみたいだな、お前は。俺は大丈夫だ、問題はない。お前こそ体調は戻ったのか?」
「うん、……問題はないよ。」
「お前がうちの打線のキーマンだからな。しっかり頼むぞ。」
彼の「
ロッソは俺の打撃を逐一褒めてくれるし、偉そうにせずチームの雑用も進んでやってくれるし、若手選手の相談にも気兼ねなく乗ってくれる。彼が若いころから指導者としての将来を嘱望されているのもうなずける。
今日は移動日のためにデーゲーム。植原さんが打撃練習待ちの俺のところに来てくれた。日本向けのサービスといったところだ。
「昨日はお疲れ様でした。残念ながらセーブポイントつきませんでしたね。」
「ついてたまるか。」
実は植原さんが登板した9回は6点差がついていた。しかし、ソロ本塁打を2発浴びて4点差になってしまったのだ。あと一点とられればセーブポイントの対象にはなるがさすがにベンチのからの信頼を失いかねない。
「健ちゃん、いけずなとこあるなぁ。そんなこと言う子に育てた覚えはないで。」
今日はウェズが先発。本来昨日は休養日だったけれども「表彰式」の関係でベンチに駆り出されていたのだ。(先発投手は登板日の前後の試合は練習のみでベンチ入り免除)
「おかげで休みを一日損したぜ。」
「俺だって明日先発だぞ。」
ぼやくウェズに軽く嫌みを言う。
「だからお前は指名打者なんだからいいだろ。」
確かに俺の若さで指名打者をやらせてくれる球団はなかなかない。俺の本塁打が30本を超えたあたりでようやく「若い」俺が指名打者をやっていることに関する不満がチームから消えたともいえる。
「ま、月間新人王のお手並み拝見ということで。」
ウェズもここまで11勝9敗と新人王争いでは良い位置につけている一人なのだ。
今日の俺は一番指名打者。先発のティレットとは以前も対戦して本塁打も放っている。同リーグ同地区だけに互いの手の内はよくわかっている。
試合はウェズが立ち上がりをつかまり3回で4失点。4回には3連続三振を奪うなどしり上がりに調子を戻していった。6回表にドンゴとBJの2本塁打で4対5と逆転に成功。ティレットをマウンドから引きずりおろす。
その裏にウィーランに投手変更。ところがこの采配がまずかった。1死とったが四球連発。そこでスコールに変えても四球と連打。二人あわせて4失点で再び8対5と逆転を許す。
そして7回表。ドンゴを一塁に置き、ここで代打ロッソ。マウンドのゴンザレスは150km/h台の4シームとブレーキのかかったスライダーを投げ分ける投手。2B1Sからの4球目。内角やや高めのスライダーをロッソのバットが捉える。1号2ラン本塁打。
打球はキレイな放物線を描きレフトスタンドへ。ベンチはまさしくお祭り騒ぎ。
ロッソはそのまま右翼守備にも入った。試合は8対7と詰め寄ったが9回オーソドックスのマウンドにあがってきたのは植原さん。4シームと「伝家の宝刀」フォークボールでパーフェクトリリーフ。昨日打たれたところを修正してくるあたり流石である。昨日植原さんから本塁打を打ったドンゴも首をかしげていた。がっつり落ちるフォークとその半分の落ちのシンカーを使いわけていたのだ。初見で打つのは難しいだろう。
今日は正真正銘の6SP目。
チームは次の遠征先であるボストンへと向かう。ワシントン=ボルチモアからボストンはそれほど離れてはいない。飛行機で1時間半くらい。日付が変わる前にはボストンの宿舎に到着した。翌日は先発予定のため早めに休む。
9月6日(月)
レッドアックスとの直接対決。首位ヤーナーズとはこの負け越しで3ゲーム差と離され、ワイルドカード争いでは直下のレッドアックスと6ゲーム差。監督やコーチはさぞかし胃が痛いだろうなぁ。
今日はブルペンで肩を作っていると松阪さんと丘島さんが挨拶に来てくれた。
世間話と植原さんの話が主。
「結局バッターとしては対決しないで終わりましたね。松阪さんは(この
俺の質問に嫌そうな顔をする松阪さん。
「明日だよな。」
丘島さんがすぐにネタばらし。
普段日本語で話していないのでここ数日日本語で話すのは新鮮味がある。
【沢村健の今季成績(通算)。】
打者
(左)打席202 打数179 安打57(長打32)四球17死球2敬遠3 犠打4 打点70 二塁打7三塁打1 本塁打23
(右)打席83 打数75 安打31(長打20) 四球6敬遠1犠打1 打点33 二塁打6 本塁打14
(合計)打席285 打数254 安打88(長打52) 四球23死球2敬遠4 犠打5 打点103 二塁打13三塁打1 本塁打37 打率 .346 出塁率.408長打率.843 OPS1.250
盗塁6
投手
(左)試合9 5勝2敗 61回 失点20 奪三振46 防御率2.95
(右)試合9 4勝 3敗 61回 失点16 奪三振41 防御率2.36
合計 試合18 9勝 5敗 122回 失点36 奪三振87 防御率2.66
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