万年補欠の下克上！！！（第3期）ー再転生した野球少年は底辺スキル「支援魔法」でメジャーリーグを駆け上がれ！

降って湧いた（振って沸いた）家族団らん。

8月15日（日）

「あれ？アメリカに来るなんて言ってたっけ？」

突然の家族の登場に俺はいぶかしげに聞く。

「あー、母校（うち）が甲子園に行けなかったら来るって言ってたじゃん。」

と、のんきな妹。

「こっちもシーズン中だからかまえないけど。」

　どうにも親父のお盆休暇を利用しての旅行らしい。ホテルとかの手配はマシューにやってもらったらしく、すでにフロリダ旅行を満喫して俺の誕生日を祝うために「サプライズ」で来たそう。明日俺の試合を観戦、帰国の予定だそうだ。

「ディ〇ニーワールドの写真見る？」

母親と妹は見せたかったようだがさすがに要らない。

　考えてみれば個人の「誕生日会」とかあまり熱心に祝わない家庭だったはずだが。もちろん家族に対する情が薄いというわけではなく、俺が野球に打ち込める環境を作るのは大変だったのだ。

「最近はよく『どうやって子育てしたの？』って聞かれるものだから、あまりこういうの（イベントごと）やってなかったよねって思うようになってさ。」

と母親。

「健も大人になったから一緒に酒が飲めると思ってね。」

と父親。

「いや、父さんアメリカではお酒は21歳からだから。それは日本に帰ってからで。」

　俺としては野球に打ち込めるようにしてくれた時点で十分に感謝してるわけで。

ただ、家族のアルバムを見返すと俺の少年期以降の写真はほぼユニフォーム姿だったらしい。

　とりあえず。家族とマシューと囲んだ食卓は久しぶりに楽しかった。

　ちなみに亜美が参加する女子野球W杯は銃撃事件があったカラカスでの開催を取りやめ、マラカイでの開催に集約して大会続行。日本代表は亜美の3本塁打を含む14点で南高麗代表を17対0で圧倒していた。

8月16日（月）

　いつものように俺は朝のストレッチとジョギングをすまし、マシューに球場まで送ってもらう。マシューは家族の泊まるホテルに戻ってもう一度球場に来る予定だ。

　家族を球場見学ツアーにご招待、というところだ。シーズンオフや遠征（ロード）中に公開することもあるが、試合がある日にクラブハウスに入れるのは選手の家族や関係者くらいだからだ。夏休み時期でもあるので時々同僚の家族がクラブハウスをうろうろしているのを目にしたことがあるが、まさか自分の家族を招待することになるとは思わなかった。

　今日からはア・リーグ西地区首位のテキサス・レイナーズを迎えての3連戦。昨季一緒にAAからメジャーリーグまで成り上がったジョシュがいるチーム。先回はこちらが出向いての交流戦だったが。

　「一応ここが『古巣』のはずなんだけど、あんまり記憶にないわ。」

とぼやくジョシュは現在.362でぶっちぎりの首位打者。俺が.３４２（規定打席に達せず）、ヰチローさんが.307だから、これがいかにすごい数字なのかがわかる。まあデビュー年も再デビュー年を合わせても2か月ちょいしかプレーしてないのだから当然といえば当然である。

「あー、でもお前の30本塁打の方が評価されるのがメジャーなのよ。」

なんかわかる。本塁打しか興味がないなんて野球の面白さを半分も理解してないやろ、という経験者の理屈。「甘い」「辛い」の大味の世界ではなく「うまみ」を感じとれる繊細な世界の理屈。

　今回は今やレイザースのエースとなったブライスとレイナーズのエース、クリス・リーの投げ合い。足の故障から復帰したベーニャが久々の先発出場。そして俺はなんと「8番指名打者」。家族が来てるのに8番とかひどい……と言いたい。確かに「不調」ではあったがそれなりに打っていただろーが。

　4回まではエース同士の素晴らしい投げ合い。そして5回裏に俺にチャンスがまわってくる。一死三塁二塁。左腕のクリス・リーに対して右打席に入る。シンカーとカーブで1B2Sと追い込まれた6球目。真ん中外よりのチェンジアップを左翼席に運ぶ31号3ラン本塁打。家族の前でプレーしたのは久しぶりだったので打てて素直にうれしい。

　試合は8回に追いつかれたもののその裏に打者一巡の猛攻で4得点で逆転に成功、そのまま勝利。家族に良いところを見せられて良かった。試合後に俺の（というか俺と由香さんとマシューの）いきつけの日本人が経営するレストランで最後の食事をした。人生初めての「スランプ」だったがようやく克服できそうなところまでこれた。あとは順調にいけばポストシーズンに激突するであろうレイナーズとの戦い方を見ておかなければならない。

　【沢村健の今季成績（通算）。】　

打者

(左）打席162　打数141　安打44（長打28）四球15死球2敬遠1　犠打4 打点62　二塁打7三塁打1 本塁打19　

（右）打席63 打数58 安打24（長打16) 四球4 敬遠1　打点31 二塁打4 本塁打12

(合計)打席225　打数199 安打68(長打44) 四球19死球2敬遠2　犠打4 打点93二塁打11.三塁打1 本塁打31 打率 .332 出塁率.386長打率.869 OPS1.255

盗塁4

投手

（左）試合8 5勝1敗　　58回　失点14　奪三振44　防御率2.17

（右）試合8　 4勝 3敗　　55回　失点15　奪三振38　防御率2.45

合計　試合15　9勝 4敗　　 113回　失点29　奪三振82　防御率2.31