「野球の神様」の故郷へ。

 7月18日(日)


 マリオ・リベロ。ヤーナーズの絶対的クローザー。通算セーブ数がすでに500を超え歴代2位の記録を更新中のレジェンドである。切れ味するどいカットボールの使い手で誰もがカットボールを待ち構えているがなかなか打てない。手元で20cmは変化すると言われる。


 多彩な球種を操るのもかっこいいが、1つの球種だけで通用してしまうのもまた憧れるよな。


 内角へと鋭く食い込むような変化だった。少しでも間違えるとバット折られそう。河上さんのカットボールとはまた違った変化球だ。右中間を破る長打コース。さすがに初見で本塁打とはいかない。9対7としたが後続のブライアンが二塁ゴロに倒れてゲームセット。このカード負け越してゲーム差は3に広がる。


 次の対戦相手は同地区のボルティモア・オーソドックス。本拠地のボルティモアは首都ワシントンD.Cの隣にある。ニューヨークからは飛行機で1時間半ほど。日付が変わる前にはホテルに到着する。


  7月19日(月)


 ボルティモア・オーソドックスは現在ア・リーグ東地区最下位。今季は29勝62敗と大幅に負け越している。ちなみに俺は初対戦だ。そしてここには北京五輪で一緒だった植原さんが在籍している。今年は本調子とは程遠く、先月の終盤まで故障者リストDLに入っていた。久しぶりなのでちょっと会えるのが楽しみ。


 午後には球場入り。日本からのマスコミも「日本人選手対決」を目当てに人が増えていた。ワシントンが近いのでワシントン支局から人も多い。そして地元の記者も多かった。というのもここはベーブ・ルースの故郷であり本拠地球場の敷地には彼の父が経営した酒場の跡地も含まれている。そして球場のすぐ近くに彼の生家も残されている。ベーブ・ルースの地元の名にかけて二刀流の俺を見定めてやろうということなのだろう。


 ただローテーション的に俺がこのカードで投げる可能性は低い。もし投げるとすれば延長戦で投手を使い切りそうなときくらいだ。


 植原さんへの挨拶はやはり打撃練習時に。外野で球拾いをしている植原さんのもとへ。

「ご無沙汰しております。」

「おぅ、ニュースは見とるで。調子はどうや?」

球拾いを手伝いながら近況報告。ご飯の美味しいお店とか教えてもらう。


 本日は5番指名打者。こちらの先発はウェズで相手先発投手は右腕のティレット。彼は俺と同じく昨年のオールスター・フューチャーズゲームに出場している。


 チャンスは初回から。二死ながらドンゴが右前安打。すかさず盗塁。ティレットはベーニャを歩かせる。ナックルを投げたのには驚く。


 外角に外れる4シームを見送ってボール。2球目のチェンジアップの落ちぎわを叩く。右中間への17号3ラン本塁打。3点先制。


 2回もゾルディストの二塁打でさらに1点。3回もドンゴの中前安打とベーニャへの死球で無死二塁一塁。ここで投手コーチがマウンドへ。ルーキー同士の対決だからなのか続行。低めへ球を集めてきた。2B2Sからの真ん中低め152km/hの4シームを完璧に捉えた。バックスクリーンへの2打席連続の18号3ラン本塁打。メジャー初の二打席連続本塁打だ。


 これで終わらず、次のショーンに四球を与えた時点でさすがに投手交代。その後は締まった試合に。植原さんは8回に登板。カール、ドンゴ、ベーニャの三人を左飛、三振、三振に切ってとる。4シームとフォークの組み合わせはさすが。病み上がりとはとても思えない。


 結局1対8で初戦を制した。


7月20日(火)


 球場に入ると由香さんにベーブルースの生家(博物館)に誘われる。数人の記者さんも同行。球場から歩いて5分くらい。入場料が思ったより高かった。入場料の割に展示物が渋かった。札幌時計台と高知市はりまや橋と並べていいくらいのがっかりさ加減。(北海道と高知の方ごめんなさい)バットやユニフォームなどの道具の展示や写真とか昭和時代ならこれでいいかもしれないけど。


 感想を求められたので「神様が僕にも降りてくるといいですね」と無難に。

本日は6番指名打者。


 今日は激しい打撃戦。2回にオーソドックスが4番スコットから本塁打3連発。3回表アップルトンが8号ソロ本塁打で応戦すれば4番スコットが2連発本塁打で再び3点差。


 6回表にこちらも逆襲。俺の2点タイムリー二塁打などで5点を挙げて4対6と逆転に成功。さらに7回表ににも2点を加え試合を決定づけた……と思いきや、オーソドックスが意地を見せてきた。


 結局9回にトリアーノが追いつかれて延長戦へ。さっさと帰りたい俺はタイムリーヒットで1点を取ってやれやれと思いきやその裏に犠牲フライでまさかの同点。


 13回に植原さんが登板。さらにその裏途中出場のルガールにサヨナラ安打を浴びて試合終了。植原さんに今季初勝利がついた。4時間40分の激戦。「神様が降りてきた」のは植原さんの方だった。


【沢村健の今季成績(通算)。】 


打者

(左)打席102 打数89 安打32(長打18)四球9死球2 犠打4 打点44 二塁打7三塁打1 本塁打10 

(右)打席49 打数46 安打18(長打11) 四球3  打点27 二塁打3 本塁打8


(合計)打席151 打数133 安打50(長打29) 四球12死球2  犠打4 打点71二塁打10三塁打1 本塁打18 打率 .376 出塁率.416長打率.872 OPS1.288

盗塁4


投手

(左)試合6 4勝0敗  45回 失点10 奪三振35 防御率2.00

(右)試合6  3勝 2敗  41回 失点11 奪三振32 防御率2.41

合計 試合12 7勝 2敗   86回 失点21 奪三振67 防御率2.20

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