後半戦はデッドヒート、地区優勝を目指す激しい戦いへ

後半戦、始めました。

7月16日(金)


 シーズン後半戦がはじまった。当日飛行機移動はなかなかしんどい。交通渋滞にも巻き込まれたし。ニューヨークも暑い。夕方になっても32.2℃。ドーム球場が恋しくなる。ただ風はまあまあ吹いているので日本の蒸し暑さほどつらいわけじゃない。


前回の「お上りさん」気分が抜け精神的には成長しているのかも。どうやら俺もシティ・ボーイになったみたいだ。(埼玉県出身の妄想)。


 グラウンドで打撃練習待ちしていると報道陣とともにヤーナーズの選手の「表敬訪問」を受ける。ニック・スイッチャー。俺をオールスターゲームの最後の一人をかけた投票で俺を負かした男である。


 「初の球宴はいかがでしたか?」

俺も握手とともに聞いてしまった。ただ彼は俺の英語力の方に驚いた模様。

「キミはとても流ちょうな英語を話すね。」

なめとんのか、と思ったが相手は「松阪世代」、つまり俺より10こも上。その歳で球宴デビューとかさぞかし苦労したのかもしれん。


「そうなんです。『シンプソンズ』で勉強しました。」

取材陣から笑いがおこる。真面目な顔で言うと確実にウケる鉄板ネタである。

 

 どうやら俺とスイッチャーを比較したいのが看て取れる。「球宴に届いた」男とそうでない男の差みたいな感じだろうか。


 首位決戦らしく満員のお客さん。言うてもいつも満員ですよね。素直にうらやましい。いつかはこういう球団と大型契約を結ぶのが俺ら新人の夢でもある。


 本日の先発投手はこちらはフィールズ、そしてあちらはエースの左腕サバティア。

あれ?名前の頭に「CC」ついていなかったっけ?


 俺は7番指名打者で先発。オールスター・ブレイクをはさんだため、先発ローテーションが少し変わって俺が明日の先発なのだ。よって前日は楽な打順で、という心遣いらしい。


 チャンスは2回表、一死三塁一塁で打順は俺。3球目のチェンジアップをセンターに運んだがあと少し届かず、しかし犠牲フライになって1点先制。3回にはドンゴの適時タイムリー2塁打で加点。点差を2とするもその裏に例のスイッチャーの適時打で1点返される。


 その後は双方加点して3対4から8回裏にスイッチャーのソロ本塁打で追いつかれ、9回裏にスイッチャーの適時打でサヨナラ負け。まさにスイッチャー・デーだったのだ。なんか引き立て役になったみたいでちょっとムカつく。


 試合後、日本からの記者さんたちと日本食レストランへ。頼んだのは「冷やし中華」だった。あー酸味がたまらん。


7月17日(土)


 本日は先発投手。そして右投げ。昨日は散々におちょくられたから今日は意趣返し、と行きたいが気持ちだけでなんとかできる相手ではない。アメリカ、いや世界最強軍団と戦うわけだ。


 先頭打者のジーカーへの外角低めへの4シーム。しっかり枠内のはずなのにボール。球審のガバさは想定内いつものこと。だけど軽く投げた感じなのに160km/h出てる。ん?もしかして俺、球速上がってね?


 オールスターブレイクで適度に疲労が抜けたのがよかったのか、あるいはこれまでのトレーニングの積み重ねが如実に出てきたのか。


 ただ速いだけでは簡単に打ち返してくる猛者もさばかりなので冷静に、そして確実に。あえて速球を見せ球にして横スラと2シームを決め球に。100マイル表記が出ると俄然強打者スラッガーの血が騒ぐのだろう。


 7回をテイシェイラ(18号)とポハダ(11号)のソロ本塁打2本の失点のみで切り抜け、チームも10得点で7勝目をマーク。昨日のヒーロー、スイッチャーもノーヒットに抑えてやりましたよ。


 7月18日(日)


 本日はデーゲーム。明日からボルチモアとの試合のための移動日なのもある。夏場のデーゲームはさらに辛い。曇り空なのに32℃。

「そんなんでばてていたらテキサスでの試合なんかどうすんだよ?あっちは雲一つねーぞ。」

 ショーンに笑われる。甲子園(予選含めて)だって暑かっただろとツッコまれてしまいそうだが俺は夏の甲子園は予選を含めて一度しか参加してない。


 7番指名打者で先発。相手投手は先回も対戦した左腕のペティート。こちらが球宴先発投手のブライス。ペティートとは2度目の対決だから前よりはリラックスできてる。


 初回からレイザース打線がペティートに襲い掛かる。ドンゴの犠飛とベーニャの20号2ラン本塁打で3点。二死ながらさらに二塁一塁。ボール先行を嫌がる場面やな。初球の外角低めの4シームを弾き返した。レフトスタンドへの16号3ラン本塁打。一挙6得点。普通ならここで試合が決まりそうなものだが。


 じわじわと追い上げられ、ついに5回にポハダの2塁打で7対6とひっくり返されてしまう。さらに加点されて9回には9対6。二死二塁、俺に打順が回ってくる。


 ヤーナーズはここで抑えの切り札クローザーのリベロを投入してきた。



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