首位陥落と打線の「援護」。
アトランタは五輪も開催されたこともあるアメリカ南部を代表する都市の一つである。また本拠地を置くブレイザーズはナ・リーグに加盟した
今日は「日本人対決」ということでクラブハウスに入るやいなや、待ち構えていた日本人記者さんたちから「意気込み」について聞かれたのだ。
今日の先発予定は
「河上さんとは2年前の五輪代表でご一緒させていただきました。あの時にカットボールを習っておけばよかったなぁと後悔してます。先日、右投げで負けてますんで。」
ただ今季の河上さんは先発ローテーションを果たしているものの、打線の援護がなく不運にもいまだに勝ち星がなかったのだ。これまで8連敗。俺の1敗なんて「かわいい」ものなのだ。ただカットボールを習っていなかった後悔は本物である。握りだけでもいいから教わっておきたかった。
「おお、健ちゃん、よぉ来たね。」
ここで河上さんもポーカーフェイスで取材に乱入。俺よりはるかに話が上手い河上さんにイニシアチブを全部持っていかれる。
俺なんか「あんたもケンちゃんやないかーい」というネタをあらかじめ仕込んでいたにもかかわらず言えずしまい。ただアトランタのファンからは河上さんに対する心無い言葉がぶつけられていることに心が痛む。結果がすべての世界ではあるが、投手としては打線の「援護」の有無まではわからない。
もっとも俺の敗戦も「痛恨の」一敗でもある。というのもレイザースはついにア・リーグ東地区の首位から陥落したのだ。最近チームが負けの方が多いとは言え、40勝23敗。貯金17でも「2位」。これがどれだけ異常なことかというとブレイザースが37勝27敗,、つまり貯金10でもナ・リーグ東地区で首位なのだ。
ちなみに指名打者制度がないナ・リーグのホームゲーム。きっと今日は「休み」に違いないと高を括っていた「指名打者」の俺。
「健、今日は
ベンチコーチに告げられる。うーん、やりづらいなぁ。
第一打席は河上さんの4シームをセンターフライ。ところが二番のカールが野選で出塁。こういう走者の背負い方は投手にとっては凄いイヤだ。一塁けん制で間合いを取っていたが、ドンゴの12号で2点先制。
結局は打者一巡で4点。ベンチに帰る河上さんに観客席からブーイングが飛ぶ。自分に向けられたわけじゃないけど辛い。
2回も俺が先頭打者。3球目のフォークボールを思いきり空振りした後の4球目。4シームをセンター前へ。ベーニャの犠牲フライで帰還して1対5。
河上さんはその後はピッチングを立て直し5回裏の打席で代打を出されてお役御免。俺も打席でシンカーとフォークは見せてもらえた。決して本調子とは言えないがまさに「一流の軌道」。きっと「気分よく」投げられるように周りが盛り立てればもっといい結果だったに違いない。この初戦は4対10でこちらが制した。つまり河上さんに9敗目が付いた。沢村賞を受賞したこともある大投手をまだ駆け出しの
2戦目、3戦目は先発落ち。休みの意味もあるが|故障者リスト《DL開けのバードレッドが復帰したためである。投手が打席に立つ試合だからこそ代打の出番もある。
2戦目は3対1と2点のビハインド。捕手のショーンが歩いて二死一塁で次の打者は先発投手のウェズ。ベンチコーチは俺に目を向けたが、監督はアバロスを代打に指名。結果は凡退だった。チームもそのまま負け。
3戦目は出番なし。6対2と連敗。
次はこのカードの前にやりあったフロリダ・ミーティオスと「敵地」で再戦の予定だ。時差無しなので今回は休みなし。
【沢村健の今季成績(通算)。】
打者
(左)打席63 打数58 安打22(長打10)四球3死球1 犠打1 打点15 二塁打3三塁打1 本塁打6
(右)打席35 打数32 安打11(長打4) 四球3 打点14 本塁打4
(合計)打席98 打数90 安打33(長打14) 四球6死球1 犠打1 打点29 二塁打3三塁打1 本塁打10 打率 .367 出塁率.402長打率.756 OPS1.158
盗塁4
投手
(左)試合3 2勝0敗 24回 失点3 奪三振18 防御率1.80
(右)試合3 1勝 1敗 19回 失点8 奪三振10 防御率3.79
合計 試合6 3勝 1敗 43回 失点11 奪三振28 防御率2.30
」
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