万年補欠の下克上！！！（第3期）ー再転生した野球少年は底辺スキル「支援魔法」でメジャーリーグを駆け上がれ！

アーチストの意地。

　「同じ世代のお前が活躍してくれたおかげで俺の昇格にもゴーサインが出たってとこかな。」

　ジャンカルロは今季を昨季と同じAAのジャクソンビルかスタートさせたが2か月で21本塁打を放ち、「飛び級」でメジャーデビューしたというわけだ。俺はAAAで1か月で20本塁打ですがとは言わんとこ。

　「フロリダ・ダービー」で「新人王候補の激突」ということで地元ケーブルTV局が取材に来ていた。

　試合は二人とも「7番」打者で先発。俺がクリーンアップ落ちしたことには理由があって、今ベーニャが4試合連続本塁打を放っていて、今日打てば5試合連続で球団記録タイ、明日も打てば新記録になるのだ。なので一打席でも多く立ちたいそうで、結果として俺の打順が下がったのだ。

　初戦は乱打戦だった。先発のジムが乱調。３回4回に打ち込まれて10失点。なんか終わった感が漂う。6回裏にベーニャが14号ソロ本塁打。５試合連続弾。

　ジャンカルロもどちらもメジャーデビュー後初となる三塁打、二塁打を打って勝利に貢献。俺も３安打３打点と負けじと活躍。本日の「ライバル対決」は引き分け。それぞれの意地を見せる。

6月12日(土）

　もう話題はベーニャが記録更新できるかどうかだけ。周りが気をもんでるし、本人も少しピリピリしてる。しかし、そこはさすが昨季の本塁打王。初回から本塁打で球団記録更新。先発投手ノレスコの1Bからの2球目のスライダー（134km/h)を右翼席へ15号。ベンチの雰囲気が途端に緩んだ。

　それがよかったのか最初の2回で5点をあげノレスコをKO。昨日の試合展開を攻守変えて再現。試合を有利に進めると思いきや、後続の左腕ロバーツを打ち崩せず。ミーティオスにじりじりと追い上げられる。５対４の1点リードで迎えた7回裏一死。二塁打のアップルトンを塁においていい場面で俺。

　右打席にはいる。1Bから2球目のシンカー（141km/h)を左翼席へ弾き返す。節目の10号２ラン。8回に１点返されたものの7対5で勝利。ちなみにジャンカルロは無安打。本日の「ライバル対決」は俺の勝ち。

　地元TV局は俺とベーニャを並べたかったようだが俺はやめておいた。ここはベーニャも自分自身にスポットライトが当てられていることを望むだろう。なぜなら今が「球宴投票期間」だからだ。昨季の本塁打王は今季も健在！というメッセージを出したいのだから。ここは新人の俺が引いておいた方がいい場面。

「お前、扱いやすすぎだな。アメリカで成功したけりゃ少しは前に出ていかなきゃ。」

カールが俺に苦言とも感心ともいえる言葉を放つ。

「さすがに今日は本塁打王（キング）の日でしょうよ。」

俺が苦笑すると彼も苦笑で返す。

「いや、お前の『大人』っぷりにちょっとイラっとしただけさ。たまには新人らしくはしゃぎまわってもいいんだぞ。この前みたいにな。」

　ここではしゃがないのがアーチストの意地なんですよ。

　6月1３日(日）

　今日は俺が先発投手（右投げ）の日。今のところ左投げではいい成績なのだが、右投げはイマイチな数字。右投げの方が平均球速も5km/hほど速いのだが。

　デーゲームのため球場入りも早く、アップ後はすぐにブルペンで肩を作っていた。ナイトゲーム明けのデーゲームは流石にツラい。

ブルペンコーチは俺が浮かない顔をしているのを見て取ったらしい。

「健、お前のフォームは理想的だしスピンもきっちりとかかっている。だから結果を急ぐな。お前の肉体（からだ）はまだ完成までにあと数年は時間がかかる。むしろこの段階でメジャーレベルなんだからもっと自信を持ってもいい。むしろお前に欠けているのは自信だぞ。」

　そうだよな。まだ19歳だし。「伸びしろがある」と思っていた方がいいかもしれない。

　試合は4回表に先頭の4番のガンツに二塁打を打たれ、二ゴロと犠牲フライで先制点を献上。その裏にゾルディストの適時打（タイムリーヒット）で同点に追いついてもらうも6回表に同じガンツにソロ本塁打。で再びリードされ、ジャンカルロにも安打。後続は断ったがそこでお役御免。今日の、というかアメリカで打たれる理由は審判のジャッジにある。今日の球審は外角低めのコーナーをしっかり取ってくれなかったのだ。

　後続の3投手も2点とられ1対６で敗北。プロ初黒星を喫する。昨日までの英雄だったベーニャは「賢者タイム」なのか、4打数無安打で連続本塁打記録も途絶える。

　ただ明日はお休み。次はブレイザーズ（ナ・リーグ）との交流戦。敵の本拠地アトランタへと乗り込む。フロリダとは時差がないので当日移動なのだ。

【沢村健の今季成績（通算）。】　

打者

(左）打席57　打数52　安打20（長打10）四球3死球1　犠打1 打点13　二塁打3三塁打1 本塁打6　

（右）打席35 打数32 安打11（長打4) 四球3 　打点14 本塁打4

(合計)打席92 打数84 安打31（長打14) 四球6死球1 　犠打1 打点27 二塁打3三塁打1 本塁打10 打率 .369 出塁率.407長打率.786 OPS1.192

盗塁4

投手

（左）試合3 　2勝０敗　　24回　失点3　奪三振18 　防御率1.80

（右）試合3　 1勝 1敗　　19回　失点8　奪三振10 　防御率3.79

合計　試合4　3勝 1敗　　 43回　失点11　奪三振28　防御率2.30