再会の温度と、最大の気温差と。
6月4日(金)
「健!よく来たな。」
その懐かしい声に俺の体は即反応する。
声の主はジョシュ・ミルトン。AAのモンゴメリーからの付き合いで昨シーズン
高卒でドラフト全体1位指名され、20歳でメジャーデビューという華々しい経歴を持ちながら周囲の期待という圧力に押しつぶされる経験を持ち、そして、何度も挫折を繰り返しながらも最底辺からメジャーへの復帰を果たした男である。
今年からはレイナーズに移籍してクリーンアップを任されている。シーズンオフではないのでプライベートで会うことは難しい。
「デズやヘル吉は元気にしてるか?」
「
俺が褒めると照れくさそうに笑った。
「健も月間新人王おめでとう。」
「ジョシュに言われるのがいちばん嬉しいわ。」
もちろん俺だけでなくジョシュと同じ年に2巡目指名で入団したクロスフォードがいちばん再会に喜んでいたかも。
「カール、健はうまくやっているか?」
ジョシュの問いにクロスフォードは答える。
「『上手くだ』と?ふざけんな。お前も
「相変わらずお前の『たとえ』は酷いな。」
ちなみにカールの趣味は……というか「副業」はミュージシャンである。
しかし、テキサスは暑い。3日前のトロントが15℃、2日前が27℃、今日は33℃。これが移動の過酷さの一つと言える。北海道から九州くらいの南北移動ではこうなるだろう。
ただ暑いと言っても極度に乾燥した暑さなのでそこまで不快さはない。というかこの「極度に乾燥した」空気こそがこの球場の特徴。本塁打が出やすいと言われているのだ。
先発投手はこちらが右腕のウェズ、あちらが左腕のウィリス。
俺は引き続き4番指名打者、捕手には故障者リストからあがってこのカードから合流するケリー・ショッパーである。ショーンが開幕一週間ですぐにダーラムから呼び返された主な理由が彼の離脱だったのだ。
試合は2回表、俺がレフト前安打で一塁へ。すかさず二盗。そこからゾルディストの安打、ショッパーが四球を選んで満塁。ベーニャが
だが西地区首位のレイナーズも黙っていない。その裏俺とドラフト同期のスモーカーが2ラン本塁打。そして4回裏。ジョシュのソロ本塁打を皮切りに打者一巡の猛攻。7点を奪われここでほぼ 9対4と大逆転。ウェズもKO。
ドンゴの11号本塁打などで2点を返すも9対6で敗北。5番のジョシュが3安打1本塁打2打点と古巣相手に実力を見せつける結果に。
「テコ入れが必要ですな。」
ベンチコーチが監督にささやいた。
6月5日(土)
本日はデーゲーム。午後3時と昼過ぎの印象はあるが
「テコ入れ」の結果、俺は6番に「降格」。もっとも19歳に4番を任せる方が問題かもね。
ただ今日もエースのフィールズがピリッとせず。初回からジョシュの11号2ラン本塁打を含む3失点と嫌な雰囲気。一応3失点までは「許容範囲」。
ただ打線の方もピリッとせず。ジョアンの2号ソロ本塁打の1点のみ。俺も第3打席で二塁打を放つも後続無し。6対1で試合終了。
右ひじ痛から今月復帰したばかりの右腕ハントに今季初先発初完投勝利を献上してしまう。
「病み上がりの投手を打てんとはな。」
ベンチコーチがまたぼやく。はい、テコ入れですね。しかも地元TV局相手の「ヒーローインタビュー」でジョシュにまでチーム状態を心配される始末。さあてどんなテコを突っ込んでくることやら。
6月6日(日)
今日も昨日の「猛暑日」ほどではないが34℃とほぼ猛暑日よりの「真夏日」。しかも、試合後にセント・ピートへと帰るためデーゲーム。明日は俺が先発投手の予定なので代打のみもあるかもしれん。まだ実績もさほどないので一喜一憂する日々だ。
本日の「テコ」は俺の「1番」指名打者起用。先発投手はこちらがマット・ゲイザー。あちらは左腕のリッキー・バーデン。ジョシュは休養なのか先発オーダーに名前なし。それだけでも投手的には気が軽くなる。
さすがに「
【沢村健の今季成績(通算)。】
打者
(左)打席42 打数34 安打13(長打8)四球3死球1 犠打1 打点9 二塁打2三塁打1 本塁打5
(右)打席30 打数27 安打7(長打2) 四球3 打点6 本塁打2
(合計)打席72 打数61 安打20(長打10) 四球6死球1 犠打1 打点15 二塁打2三塁打1 本塁打7 打率 .328 出塁率.382長打率.748 OPS1.120
盗塁3
投手
(左)試合2 1勝0敗 15回 失点3 奪三振13 防御率1.80
(右)試合2 1勝0敗 13回 失点6 奪三振6 防御率4.15
合計 試合4 2勝0敗 28回 失点9 奪三振19 防御率2.89
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