万年補欠の下克上！！！（第3期）ー再転生した野球少年は底辺スキル「支援魔法」でメジャーリーグを駆け上がれ！

不人気な球場。

5月27日（木）

　今季メジャーリーグでの3度目の先発は少しプレッシャーがあった。依然として首位をキープしているとはいえチームが3連敗を喫したあとの登板。

　ただ首位を走っているにもかかわらずお客さんの入りはイマイチ。これは本拠地のトロピカーラ球場が「完全密閉型ドーム」球場であることに由来する。

　「陽光降り注ぐ州（サンシャイン・ステイツ）」を名乗るだけあってフロリダに来る人も住む人もみな日光浴や開放的な雰囲気を好む。それなのにあえて屋根の下で野球を観たいだろうか、ということだ。開閉式ドームならもっと結果は異なっただろう。

　当然グラウンドは「人工芝」でそのクッション性の不足は野手の膝や腰に大きな負荷をかけることになる。ただ投手としては一定の温度と湿度が保たれている(

華氏72度＝摂氏22度）球場は快適ではある。4月上旬のバファローとか寒かったし。　

　ま、往年の「川崎球場」を知っている「前世（中の人）」にとってはそこまでひどくない。ただ首位を走っているチームとは思えないだけ。

　シカゴ・ホワイトアックスを迎えた４連戦の初戦。左での先発。「ビッグネーム」と言えるのは4番のトネルコ（通算300本塁打の強打者）くらいなので「落ち着いて投げろ」とショーンに言われる。

　チームもクロスフォードの3号やドンゴの10号本塁打で小刻みに加点していき8回まで5対０。俺も完封したかったが8回にソロ本塁打を浴びて、「予定通り」マウンドを降りる。

　2勝目だが「左投手」としては初勝利。記者さんたちに両腕での勝利は「史上初の快挙」と言われるも、昨シーズンすでに自分でやってますがな。打者によって左右を変えるタイプではないのでこれまで気がつかれなかったのかも。

　5月28日（金）

　6番指名打者で先発出場。2点を追う9回二死、安打で出たロンゴを一塁に置いて俺。俺の打球は右中間を深々と破った。ロンゴが本塁に還って1点差と思いきや、バウンドした打球がスタンドに入ってしまい「安全進塁（エンタイトル）二塁打」に。ロンゴの本塁生還は取り消し。うぎゃー、打点損した。代打のアバロスがフライに倒れて２対4で試合終了（ゲームセット）。

　５月29日（土）

　「春季リーグ終わったよ。」

心なしか亜美の声が弾んでいるように聞こえた。リーグ戦は春と秋にあり、春のリーグ戦に優勝すると全日本大学野球選手権、秋のリーグ戦に優勝すると神宮大会に出場することができるのだ。

　6つの大学で構成される一部リーグで東海総大が優勝、2位は武蔵野大学。亜美のつくば大は3位だった。亜美は2試合に外野手で先発出場し、８打数3安打2打点四球１とりっぱな成績。「新人特別表彰」を受けることになった。

　亜美の野球部への受け入れや出場に関して異論もあったがそれを打ち消すだけの実力を見せつけた形になったと言える。

　6月からはオープン戦が中心になる。秋のベンチ入りを目指す戦いが始まるわけだ。ただ8月には女子野球のワールドカップもあり彼女にとって多忙なシーズンになりそうだ。

　試合はナイトゲーム。土曜日の晩（サタデー・ナイト）ということもあって6割くらい埋まったか。俺は6番指名打者。1回裏からドンゴの二塁打で先制すると3回裏にはそのドンゴを二塁に置いて6号2ラン本塁打。右打席は久しぶりの一発。

　試合もレイザースが8対5で勝ち、先発のウェズも6回3失点とQSで５勝目を挙げた。

　5月30日（日）

「人気がない」球場とはいえ、メリットはある。選手からサインをもらいやすいのだ。特にヤーナーズやレッドアックスと同地区のため、ビジターでこの球場に来た時がチャンスなのだ。平日の開門時間直後ならさらにライバルは減る。

　そう記者さんたちに教えられてちょっとがっかり。

「俺もヰチローにサインもらったぞ。」

マシューにも自慢される。いや、ヰチローさんのなら俺も持っている。

　「健くんがメジャーに定着すれば日本からの『観戦ツアー』も組まれるんじゃない？」

「いいね。〇ィズニー・ワールドの『ついでに（バーター）』とかいいんじゃないすか？俺もまだ行ってないんすよぉ。」

盛り上がる記者さんたち。あのぅ俺の試合は「ついで」ですか……。

　ちなみにその「ネズミの世界」はセント・ピートから車で2時間ほどだ。そんなことはすでに百も承知なのだ。なにしろ妹の美咲が夏休みに来たいと親にねだっているのだから。いや、妹は吹部なんだから野球部（俺の後輩たち）の応援をしてくれよ。

　この試合も俺は6番指名打者で先発。いいところで打席がまわってくることもなく４打数1安打のみ。チームも5対８で敗れる。ホワイトアックスとの対戦は2勝2敗のタイとなった。

【沢村健の今季成績（通算）。】　

打者

(左）打席32　打数28　安打11（長打6）四球3　犠打1 打点9　二塁打1三塁打1 本塁打4　打率.

（右）打席25 打数19 安打6（長打2) 四球3 　打点6 本塁打2 打率

合計打席57 打数47 安打17（長打8) 四球6 　犠打1 打点15 二塁打1三塁打1 本塁打6 打率 .362

盗塁2

投手

（左）試合2 　1勝０敗　　15回　失点3　奪三振13 　防御率1.80

（右）試合1　 1勝０敗　　7回　失点２　奪三振2 　防御率2.57

合計　試合3　2勝０敗　　22回　失点5　奪三振15 　防御率2.05