第22話 司祭の問答とは
「わたくしはやはり、早く緑の組紐をいただける方法が知りたいですわ」
「やっぱりやってみたいっていう気持ちは変わらない?結構今の話でもちょっと違うなと思ったりしたんじゃない?」
「わたくしは…あまり外出という意味で興味を持ったんじゃありませんもの。あくまで学問という、自分の得意分野で何か出来ないかと思ったのですわ」
「そっか…」
そこまで言ってちょっと躊躇う。
シスターオルミエーヌから聞いた事情。それを彼女に打ち明けるべきか否か…
そして見つめる。
彼女は今までになく真摯で、誠実なようにみえる。
ここで出鼻をくじくようなことを言っても仕様がない。
_タイミングを見計ろう。実際、緑の組紐を貰えるような時期でもいい。
その時自分が側にいないとしても、シスターオルミエーヌならば必ず必要な時に教えてくれる。
何せ
「分かった。居候の私が知ってる限りって形だけど教えるよ。組紐のテストについて」
「本来はやっぱり生活態度の方が重視されるから、年数の方が重視されるみたい。ただし稀に生活態度が優れてて、かつ神教書の造詣も深い、みたいな人もいるんだって。そういう人にはやっぱり仕事を色々任せたいから、年数が達してなくても司祭様の問答結果で、年数以上の組紐をいただけるみたい」
「司祭様の問答ってどういうものなのかしら?」
「司祭様の問答っていわゆる通称らしい。実際は複合テストみたいなもんらしいよ」
ひとつ、神々の教えや訓話を題材として、刺繍を作成する。
ひとつ、神聖歌の斉唱。(1節から13節まであり、どれを指定されるか不明点)
ひとつ、実際の司祭様との口頭問答。その場で提示させる設問に答えること。
これらを複合的に採点、日頃の行い(…)と合わせて組紐の色が決定するらしい。
「司祭様の問答は希望者と、推薦者のみで行われるから、問答がない年もあるらしいよ」
「日頃の行い…」
遠い目をしてお姫さまが呻く。
「正直今のアンタにとって一番の難関ね。刺繍とかも出来るの?お姫さま?」
軽く馬鹿にしたようにビビアが煽るが
「刺繍なんて基本教養よ。題材さえ決まればすぐに出来るわ」
神教歌もやろうと思えば出来るけど…と言って独りごちる。
「司祭様の口頭設問は何が出てくるか分からないのよね?過去の設問や回答は聞いたら教えてもらえるかしら」
「資料にとってあるわけじゃないけど、別に教えちゃいけないわけじゃないから、みんなに聞けば分かるんじゃないかな?回答までは教えてくれるかは人次第だろうけど」
「…そうよね…今のわたくしに教えようとしてくれる方がどの程度いるかわからないし…」
お?お?
予想以上にしおらしいぞ?
ビビアの挑発にも乗らないし。
「…本当にお姫さま?」
「なっ!失礼ね!こっちが下手に出てれば!」
あ、やっぱ下手に出てるとかの思いはあったのね。
いきなり人柄が変わるこっちが心配しちゃうのよ。
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