第21話 秘密会議の許可
『5年以上の所属または司祭の問答で問題ないとされたものは緑の組紐を与えられる。』
緑の組紐になれば、申請が受理されれば外出も可能だし、慈善活動の講師にもなれる。
5年というのは、人柄を、品性を磨く為だという。
外界と遮断された、娯楽の少ない生活に5年耐え、日々神々の教えを学んでいれば、よっぽどの間違いは起こさない。
ついでに言うと、間違いを犯せば、組紐の色が変わるということも、(滅多にないが)修道院を追い出されてしまうことも有りうる。
そして追い出された修道女にはどこにも行き場がない…訓話に恋に溺れて道を踏み外した修道女の話があるが、最後は娼婦となり病気をもらい、苦しんで死んだと言う…
恐ろしいことに実話である。名前もダウィナという本人のまま登場される。
ちなみに院を追い出された修道女は娼館でも働く事が出来ない。
一見、仲が悪そうに思える教会と娼館だが、産まれてしまった子を引き取ったり、孤児院を紹介したり、はたまた病気になった女性の看護を請け負ったり…と切っても切れない関係がある。
なので院を追い出された修道女には、本当に行き場がないのだ…
また外出が許可されるといっても、どこでどのような要件で、と事細かな申請が必要であるし、最初の一年は同行者必須、用件によっては許可されないこともある。
あくまで緑の組紐の権限は、修道女としての活動の幅を広げるためのもの、ということだ。
「それって私的な用で出かけるのはダメなわけ?」
「基本はダメだね~。たとえば院の修繕とか病院での手伝いだとか…そういう生活に必要だったり、慈善活動であれば許可されるって感じかな」
「うーん…例えば何か製品をつくって売り込みに行くとかは?それもダメ?」
「何売るのさ…うーん…何か売る時は月に一度、マーケットで売ったりするよ。修道院への寄付を募る感じかな。ジャムとか簡単なクッキーとか、刺繍のあるハンカチとか、そういうやつだけど」
「えー…街の小物屋とか鍛冶屋で、物作ったり物売ったりは出来ないの」
「それは難しいんじゃないかなぁ、あくまで慈善活動とか教会と修道院維持のためのものでないと」
「成程…理由付けね」
ふんふん、と自分を納得させるようにビビアが頷く。
「私は一旦いいわ。アンタ聞きたいこと聞いたら?」
「え?そうですわね………うーん…」
「何から聞くか迷うんだったら、とりあえず思いついたこと聞いてよ。そのための時間だし。」
そう、そのためにシスターオルミエーヌにわざわざ願い出たのだから。
お姫さまが『緑の組み紐を目指したい』と宣言した日、夕餉後、シスターオルミエーヌに時間をとっていただいた。
「シスターオルミエーヌ、シスターセリアナが緑の組紐を目指したいそうなんです」
「無理でしょう」
単刀直入に切り出せば、返す刀で返された。
即答。
…………
微妙な沈黙が落ちる。
「こほん…いえ、すぐにということでなく、長い目で見て、ということであれば可能かも知れませんが…そういうお話ではないのですね?」
「そうですね…彼女としては出来る限り早く、緑の組紐になりたいのではないかと」
「…何故そんなに急ぐのですか?」
そこから私はお姫さまが慈善活動の教育に強く興味を持っていること。
家事生活技術が壊滅的であることも自覚しており、別の形で成長したいと思っていることを伝えた。
勿論石鹸水ぶちまけ事件についてはオールカットさせていただいた。
編集は大事、編集は。
話を聞いたシスターオルミエーヌは、憂いを含んだ思案顔を見せた。
「難しいところですね…シスターセリアナがやる気になっているという事は大変良いのですが…」
「まぁ簡単に緑の組紐が頂けるわけではないのは分かっているのですが…」
「それもそうなのですが…彼女の場合更に事情がありまして…」
「?事情、ですか?」
ふ、と何かに気づかれたかのように目線を合わせられる。
「…まずはどの程度覚悟があるか、現状理解ができるかからはじめましょうか」
そうして許可された朝三時の集会。
何故この時間かというと、実は緑の組紐以上は一日の始まりがこの時間からだから。
各々領地に提出する書類作りや、今後の
その時間を私達はいただいた。
おまけにビビアの参加も許可されたのは儲けものだった。
同じ指導係についているのに、差をつけるのも良くないと考えられたらしい。
活動にあたっての条件は三つ。
⚫必ず指導係の元で、活動をすること。
⚫当然ながら大声を出さない、騒ぎを起こさない。(これをわざわざ言われたのは普段の行いが色々知られてしまっているのだろうな…と思う)
⚫活動内容は、シスターオルミエーヌに指導係が報告を行うこと、だ。
今日は『教会・修道院制度の理解』ということで私の部屋でロウソクひとつで相談をしている。
これで周りを気にせず、(音量注意だが)話が出来るというものである。
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