第20話 秘密会議をしたい

「確かに…わたくし、前世まえのことをさほど思い出せてはおりませんわ。」

「どのくらい?いつ思い出したの?」

「…貴方が学園に来て色々やりはじめてからですわ。ゲームは好きだったみたいで、何度もやりこんだ記憶とか、ゲームのあらすじとかは思い出せましたけど…熱を出した時は一気に一生分見た気がするんですけれど、その後はショックもあって、気持ち悪くて…ゲームに関すること以外は…あまり思い出せないようになりましたの」

「…だからあの立ち回りだったってわけね。納得したわ。」

ふぅーーーーーとふかーーい溜息をつく。

「おかしいと思ったのよ。性格と言動はまんまそのままなのに、ことごとくこっちの作ろうとしたイベントも先回りで潰してくるから」

「あとは、こちらでゴリラと話してからですわね。日常生活のちょっとしたことは思い出してきましたの。食べ物をどんなもの食べてた、とか取るに足らない記憶ですけれど」

まぁ自分の中にいきなり別の人間が入ってくるようなもんよね、記憶一気見て…そりゃ気持ち悪くもならーなってコラ。

「いい加減ひとをゴリラ扱いすんのやめてくれない?たかが鍵壊して部屋に入っただけてしょうが!」

「たかが鍵を壊して…?」

「それがゴリラにとってはたかが、ですの…?」

二人して急に息を合わせるのやめて頂けませんかね?

普段は犬猿と言って差し支えないと思うのに、あたし…いかんいかん、私に対する時だけ仲が良すぎませんかね?


カーーーーンカーーーーン…


とここで鐘の音。

昼の作業の終わりを告げる鐘の音。

やば!!

「ちょ!会話もいいけどもう終わる終わる!」

「え!まずいまずい夕餉がなくなる!」

「…それはまずい夕餉とかけてらっしゃいますの?」

「「どうでもいいから手を動かせ!!!」」

慌てて作業をしながらチッ!とビビアが舌打ちする。

「時間かけて話したいってのにそんな時間もないわね!」

「話したいこと?あるの?」

「あるわよ!そこのお姫さまの組紐の件もあるし、今後のこととか!」

ワシワシワシ!!と誰よりも機敏に掃除をしながらビビアが叫ぶ。

コイツ出来るな…と手を動かしつつ感心する。

「作業の合間じゃろくに話も進まない…!」

「…あー…じゃあさ、あるよ解決策。」

「…は?」

してやられてばっかりだからね。

ここぞとばかりにニヤリと笑って告げる。

「まぁ~身体はちょっとしんどいと思うけど?あと許可はとらないといかん。」

「なによ…怖いわね…」

「不気味ですわ…」

「別にそんなに怪しかないよ。あと大声は出せないけど。今日はさすがに無理かなー…上手くいったらシスターオルミエーヌからお話があると思うよ」

「「し、シスターオルミエーヌ…」」

だからそんなに怯えなくてもいいじゃない。

特にお姫さま。

感謝はすれど、苦手意識は変わってないってことなのかしらね。





それから2日後。

ビビアとお姫さまは私の部屋にいる。

「何よぅ…いい案があるって聞いたから、どんなもんかと思ったらただの早起きじゃないの…」

「ふぁ…さすがにこんな真っ暗な中起き出すのは辛いですわ…」

ちなみに部屋は狭いので、私とビビアが寝台に座り、文机の椅子にお姫さまが座ってもらった。

「なぁによ。緑以上の組紐目指すんだったらこれからこの時間に起きるのが当たり前よー?今のうちに慣れときなさいよ。シスターオルミエーヌに聞いたでしょ?」

「まぁ聞きましたけれど…」

「私は別に緑の組紐ねらってないんだけど…」

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