第19話 ビビアとセリアナ
「うん、どう考えても無理だわ」
改めて言い直す。
神妙な顔のビビア。
確かに大事なことだけど二回言うな。
せめて言い方を考えてくれ!
「確かに、直ぐに緑の組紐というのは現実的でないかもしれないけど…」
「いやそこじゃなくて。あんたの教えようとしてる経済術も古代語とやらも。庶民には全くおよびでないのよ。王族に下町での値切り方を教えるようなものだわ」
「うっ…」
なるほど、言い方はあれだがわかりやすい。
「庶民に必要なのは、毎日の暮らしを便利にするものでしょ。もしくは就職に有利なもの」
「随分、的確ですねビビアさん…」
思わず敬語になって話しかけてしまう。
すると久々にはん!と性悪そうな笑顔を浮かべる。
「王立の学校に行ってないってことは基本的な教養もないってことでしょ。それくらい分かるわ」
わー……それだけ現状分析は出来るのになぜに
「…でもわたくし、やってみたいのよ。わたくしに出来そうなこと、ようやく見えた気がするんだもの…そこまでのものでなくても、もっと基本的なものだって教えられると思うわ」
それでもなお引き下がらず、意思を伝える
ここに来て違和感を覚える。
今までのお姫さまだったら、「なによ!じゃあいいわよ!」みたいな感じで投げ出してそうなもんだけど…
考えると、斜め上(ある意味下?)な行動と結果は変わらないけど、前よりも、賢明さが伝わる気がする。
_本当に変わろうとしてる、のかな。
「……ふーーーん、まぁ私には関係ないし?目指すなら目指せば?て感じだけどーこの際はっきりさせていい?」
そんな健気に見えなくもない、お姫さまをバッサリ切り捨てる。
じろり、と音を立てそうな目で見据える。
「アンタ、やっぱり
あ。
そうか。
ビビアとお姫さまの違い。
違和感。
ビビアはここに来た時から、自分の現状把握がしっかり出来てた。
ある意味、客観視がここに来てからというもの、めちゃくちゃ出来てた。(だからそれを何でもっと早く出来てなかったのかというツッコミを何度したことか)
でもお姫さまは違った。
こんなはずじゃなかった、どうして今ここにいるのか理解できない。
そんな所からのスタートだった。
馴れ合いはしようとはせず、でも生活に溶け込もうと務めたビビア。
とにかく現状が理解出来ず、全てを否定して投げやりだったお姫さま。
…今のお姫さまは、ここでの生活をはじめよう、ていう気概を感じるけど。
単に性格の違いかなと思ってた。
でもそうじゃなくて。
もしかしたら、
そんな、当たり前とも言える違いのせいだったのかもしれない。
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