第5話 それぞれの生活と立ち位置について
「我らの神々よ。あまねく日々の恩寵に感謝致します」
「「「「「「感謝致します」」」」」」
「今日この日、我々はパンを、他のもの達の命を得ます。我らは罪と向き合い、また彼らの魂が貴方方のお元にて光となることを祈ります。どうぞ光が巡りますように」
「「「「「「光が巡りますように」」」」」」
晩餐の祈りを捧げ、食事に入る。
この食事の間は、決して喋ってはいけない。
食事もまた、神々への祈りであり、修行だという。
修道女でもないあたしは、正直神々への信仰があるかと言われると困る。
ただ修道女の皆の有り様は、一緒にいて背筋が伸びていいな、と思う。
美しい、とはちょっと違う。
芯がある、というのか。
自分の意志で来た彼女たちは、とても真っ直ぐに神々に仕える道を進んでいる。
潔い。
美しいより格好いいのだ。
そして一方で…
自分の意志でここに来たわけではない彼女たちはと言うと、それぞれである。
彼女たちと遭遇して(あれは最早出会いではない)1週間ほどたったが、現在は対象的とさえ言える。
やらかし度で言えば、ビビアの方が大きく、警戒されていたらしい。
曰く、『身分差を考えない危険な言動』『神々の道と反する行い』『平気で虚偽を行う精神』だとか散々な言われようだったそうな。
まぁ貴族社会で身分差も考えず、
いやいやそんなんトリプル役満じゃん!みたいな。
最初に聞いてたらまず近寄らないだろうな~と。
あとご本人も言ってましたが『女にお礼言っても何にもならん』精神をお持ちで。
………いやー爆弾だよね。近寄れん近寄れん。
なんだが。
いや、根本的には変わってないのですが。
この人割り切ると仕事早いのよ。
厨房仕事が一緒になった際も思ったけど、やたら手際がいい。
割と裕福な男爵家だったらしいし、今世でそんな家事仕事やってないのでは?と思ったんだけど。
『ヒロインが庶民出で、そういう所完璧だったのよ。手作りお菓子のイベントも多かったし。ヒロイン像に寄せるために、実家の厨房とか抱き込んでやらせてもらってたわ』
チッ!と舌打ち混じりに教えてくださった。
うん、なんかごめん。
あとはやっぱり前世でも自炊してたから抵抗はなかったらしい。
そんな訳でわりと任された仕事は手早くこなす。
周りの人に押し付けて、嘘ついたりとかを警戒してたらしいんだけど、拍子抜けする程なし。
『男も絡んでないのにヘイト集めるとかメンドクセ。やった方が早い。』
などなど…
正直そこまで考えられるなら、もっと早く自分の行動省みたら…!と思わんでもない。
そんな訳で孤立しつつも、意外に図太く生活してらっしゃる元男爵令嬢、対して…
もう1人の爆弾。元公爵令嬢セリアナ様。
こちらは御姿もお仕事も『さす姫』と言う感じ…
うん…うん…
頑張っても褒めれない。
まぁ、炊事洗濯とかね、そこら辺はやったことないからさ、仕方ないと思うのよ。
なんだけど、彼女の場合はそれ以前。
人がやる、人をつかうことが当たり前になってらっしゃるー。
まぁ、今までの暮らしを思えば仕方ないのかもしれないけど!
『ちょっと、洗濯をもってきてあげたわよ』
うん、あなたの仕事です。
『何をぼさっとしてるの。言われる前に動いてちょうだい』
うん、あなたの仕事です。
『そんな…このわたくしがここまで持ってきたのよ?!』
うん、それもあなたの仕事で(チベスナ顔)
と一事が万事こんな感じだったらしい。
当たり前のように人にやらせようとする(悪意はない。恐ろしいことに)ので、何度もシスターオルミエーヌからお説教が入る始末。
本物の元お嬢様だから、やり方が分からないだろうと最初ペアで仕事してたのだけどそれもなしに。
結果、人の倍以上かけて仕事をこなし、結果は散々…という有様。
そりゃ、本人も心折れるよね。
艶があったんだろう、まっすぐな金髪はくすんでいるし、目の下は隈さんが居座ってる。
元が超がつく美少女なだけに恐ろしい容貌になってしまっている。
今もすました顔で食事をするビビアとは対象的に、スプーンが進まず溜息をする始末。
その様子をしっかり見ていた、シスターオルミエーヌの空気が固くなる。
先程も言った通り、食事も祈り、修行のひとつ。
決して疎かにしてはいけないものなのだ。
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