第3話 リーンの事情
「ていうか、結局ここの修道女じゃなかったらなんなのアンタは」
「あたし?期間限定の住込みたいなもん」
「は?そんなん有り得るの?」
「うーん父さんがさ、大工なんだけど。冬になったらこの辺りで仕事なんて無理だから。夏の終わりまではこっちいるけど、そっからは王都とか南西部に出稼ぎ行ってるの」
この地方の冬は厳しい。
雪の量も多く、とてもじゃないが大工の仕事なんてできる状況にない。
多くの地元の大工は、秋まで働いて冬の蓄えを作り、冬支度をして冬を越す。
冬の間は蓄えと、設備が壊れたものなどの修繕を請け負い、小金を稼いで冬を越す。
リーンが小さいうちは髭熊親父_ダンノもそうやって過ごしていた。
だが、ダンノは大工仕事が好きだった。
愛していたのだ。
冬ごもりの生活の間、ちょっとした修繕では物足りなくなるほど。
娘がしっかりしていたせいもあっただろう。
もし娘が少しでも心配になるような娘であれば、ダンノもそうはしなかった。
冬ごもりの前には、猟師について森に入り、罠を仕掛けてはしっかり肉を準備した。
自身で皮のはぎ方・処理を覚え、敷物や上着を整えた。
力の足りない作業は効率的にダンノや、周囲の大人をうまく使い、こなし、冬ごもりの間は刺繍や小物を作り、しっかり小金を稼いだ。
_これ俺がいなくても何とかなるなぁ。
元来楽天的な父は、そう思うやいなや出稼ぎに出かけた。
そして13になる頃には、今の生活にすっかり落ち着いた。
リーン自体も、『家事やらなんやら今までも自分でやってたしな』程度だった。
それに怒り呆れたのが、シスターオルミエーヌだ。
『いくら隣近所の顔をよく知っているからといって娘さんを1人にすることがありますか!』
そう言って手を引いて修道院に連れていってくれた。
次の春、戻った父は相当絞られ、謝罪はしたものの、出稼ぎについては折れず…最終的に父の出稼ぎの間だけ、修道院への居候を許された。
修道院の本来の在り方としては、正しくない。
厳格なシスターオルミエーヌが、それでも受け入れてくれたことが、実はとても嬉しかった。
だからオルミエーヌのことが好きなのだ。
_それと
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