2話(後編)
突然現れた俺を見て一瞬固まる男二人だったが、直ぐに何かに気付き、俺と檜山を交互に見て頷いている。肝心の檜山は状況が飲み込めていないのか少し困惑してるようだった。
「あ~用事って彼氏とのデートのことだったのか!」
「えっ、あ」
「そうなんですよ。だからこいつ、連れていっても良いですか?」
「っ!?!?」
檜山の腕を掴み、俺の方へ抱き寄せる。男が都合良く勘違いをしてくれているのでそれに乗っかっておくのが良いだろう。抱き寄せられた檜山から困惑絶頂期見たいな声が聞こえた気がしたが気のせいと言うことにしておこう…後で、謝らないとな。
「どうぞどうぞ!こっちこそデートの邪魔しちゃってごめんな!」
「ナンパしてた俺らが言うのもなんだがそんな可愛い彼女を一人にしたらこういうことになるから一人にさせるのは止めた方がいいぜ!」
「次からそうさせてもらいますね、じゃあ俺らもう行くんで」
助言を素直に受け取り、俺は檜山を連れてその場を後にした。その途中後ろから、「デート楽しんでな~!」と聞こえて来たのだが、あの人たちがいい人たちなのか悪い人たちなのか分からなくなるな。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
男たちの姿が見えなくなったことを確認して俺はそう呟いた。本当にあっさり引き下がってくれて良かった。もし殴り会いになっても解決することは出来たが疲れるからな。そうならなくて良かった。
「あ、あの…小鳥遊君そろそろ…」
「あ、すまない」
慌てて檜山と繋いでいた手を離す。…今考えたが、本人の意思関係なく抱き寄せたり手を握るのってセクハラじゃね?訴えられても文句言えねーぞこれ。
「ごめん檜山、勝手に抱き寄せたり手を握ったりして。訴えるなら訴えてくれ」
「そ、そんなことしないよ!あの状況だったらそうするのが正解だったって、私でも思うから!」
「そっか、良かった」
いつものお淑やかな聖女様は何処へやら。少し砕けた話し方(多分これが素なのだろう)で顔を少し赤らめながらもセクハラを許してくれた檜山を見て、これが聖女様かと思った。
「そういや檜山、俺の名前知ってたんだな」
ここでふと疑問に思ったことを口にした。自然すぎて気付いていなかったが俺と檜山は今日初めて会話したのだ。それまで一切関わったことはない。
まぁ、この聖女様のことだクラスメートのことは皆覚えてるからとか言うんだろうな。
「え、うん。だっていっつも遅刻して名前呼ばれてるじゃん」
「…oh」
何か凄く不名誉な覚え方されてた…。予想の斜め上からの答えに何故だか少し悲しくなった。
「それより、さっきのあれ大丈夫だったのか?」
悲しい出来事は忘れるに限る。そう思った俺は話題を変えることにした。
「うん声をかけられただけだから大丈夫だよ。最初は、用事があるんでって断ったんだけど、『良いから良いから』ってしつこく言われちゃって。強く言い出せなくなってたの」
なるほどあの場面はそう言うことだったのか。
「だから、小鳥遊君が助けに来てくれて本当に嬉しかった。ありがとね小鳥遊君」
「別に、ただ見なかったことにして後から罪悪感を感じたくなかったからやっただけだし」
「それでも、困ってたところを助けてくれたのは事実でしょ?」
檜山にそう言われ、俺は何も言い返せなくなった。
「ねぇ、もし小鳥遊君が良ければお礼させてくれない?私の家、すぐ近くなんだ」
「いや、遠慮しとく。生モノあるし晩飯も作らないといけないからな」
スーパーのレジ袋を見せながら、檜山の提案を断る。本当にもうそろそろ帰らないとまずい。
「あ、そっか…ごめんね!呼び止めちゃって…」
「別に、問題ない。じゃあ、俺帰るから檜山も気を付けて帰れよ」
「うん、バイバイ!」
檜山に別れを告げ、俺は家への道を歩くのだった…。
………後書き…………
見てくれてありがとうございました!作者です!
ようやく物語が動き始めましたね~。
あ、余談ですが聖女様はあの後、素で話していたことに気付き白い肌を真っ赤に染めます。
あ、それと昨日の話も良いねしてくださった方々、本当に有難うございます!これからも頑張りますので応援よろしくお願いします!
コメントや良いね、フォローとかしてくれるとモチベが上がるのでよろしくお願いします!
書き溜めなくなったので、明日からはでき次第投稿する予定です。お楽しみに~
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