第43話 独白

 車の速度を更に上げる。僕の喋る速度も上げることにした。村を出るまで独白し続けることにした。この村の中では会話が成立しないと気付いたからだ。

「村の男は全員きっしょい。お前は知らないだろうけど、あいつらはお前と僕がエッチしてることを把握しているんだぞ。お前なんか床上手だと思われている。針夫が特にきしょいな。普通、結婚前の娘とヤる男に対してコンドームと精力剤渡すか? 自分の娘はブスでガリガリで勃起するのに苦労がするので、頑張ってねってことだぞ。きっしょ。僕は受け入れる以外の選択肢が無かったが、これからは断ってやろうと思う。いや、お前との間に子ができると思われたら嫌だな。ゴムだけ受け取るか。いや、ヤれると思われるのも嫌だな。開封して未使用のものを朝に突き返そう。針依のブスが極まって勃起すら無理でした。十一年前の事件の被害者の僕可哀想ーって泣けば、流石に分かるだろ。いや、次はエロ本を出して来るかもしれない。きっしょ。お前の父親って本当きっしょいじじいだな。きっしょいじじいは妙な気を遣って、エロ本使って勃起する所まで確認してくるかも知れない。娘には秘密でなあなんて苦笑いしながらな。きっしょ。鳥肌立った。十一年も、いや十一年も相手してないな。引き籠ってた。かなり引き籠ってたからな。四年前ぐらいからか、相手してやってるのは。オリンピック一回は開催したな。何処でやったっけ。体操の選手がエロかったことは覚えているんだが。良いよなあ。健康的な巨乳。安藤がさ、精神的に健康な女がタイプとか言うんだよ。僕もだよ。僕もお前みたいな病んだ女の相手したくないよ。僕も病んでいるけどさ。鬱病だけどさ。はあ? 何でお前は病名ついてないの? 十一年前の時点で精神科連れていかれとけよ。絶対何とか障害だよ。アルファベット三文字だか四文字だかの何かだよ。僕以上に薬飲めよ。十一年前のお前のせいで好きだった酒を断っているんだぞ。嗚呼、飲みたい。ソルティードッグ飲みたい。日本酒は毎回飲ませられそうになるけど、好みじゃない。カクテルが好きだ。でも、お前の顔見ては絶対飲みたくない。バーで飲んで、艶やかな美女と知り合いたい。巨乳で健康的な体の。お前とは正反対の女。本当、お前は無理。あー、お前は鬱病ではないな。鬱病になるような繊細さがお前には無い。HSPでは絶対ない。かといってサイコパスでもない。魅力がないから、名乗らせてたまるか。魅力があったらこの十一年間まだマシだった。十一年前と同じお前なら、返せよ。僕の十一年と右目返せよ。ついでに、お前も十一年の記憶消せ。僕以外の男で今のお前を好きになる奴はいるよ。女は痩せてれば痩せてる程良くて家庭的な女が好きなガキ。三十二歳のおっさんの僕には無理。正確にはおっさんでも無いな。精神年齢が追いついてないって自覚してるからな。だから、二十代か三十代の巨乳で心身ともに健康的な色っぽいお姉さんが好き。お前とは正反対の女が好き。ていうか、僕はべらべら喋っていると一ノ宮時也に似て来るな。六月に村の近くで心中した男だよ。あの迷惑な男は生前に僕と自分が似ているとか言って来たんだ。こういう性質だったのかな。桜刃組に適した性質なんだろうなあ。これが。嗚呼、早く桜刃組に行きたい。二十四歳の巨乳で心身ともに健康的な女がいるんだ。僕は十一年前まではもてたから速攻落とせる。その子と結婚する。ていうか、孕ませて家族になってやる。それで、この村には永遠に立ち寄らない。嗚呼、僕の人生は最高だな。巨乳で心身ともに健康的な女と添い遂げるんだから。今までの無駄な十一年も気にならないね」

 そこまで言った所で村から出られた。バックミラーに家が一つも映らないことを確認して安堵した。しかし、心はすぐに乱された。

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