認める
『ダメだ、、、相馬くんの話と最近の竹本くんとの関わり、、、』
美穂は二つの出来事をすごく考えてしまい、きっと自分でも、「恋」というものに気づき始めたようだ。
『恋かぁ、、、久々やなぁ、、、。でも、恋だけに集中しないように、部活と受験勉強を頑張らないと』
それから、美穂は竹本くんに恋をしていることを認め、過ごし始めたが、ゴールは無かった。ただ、見ているだけでいい、たまにお話できればいい、と思っているようだ。
時は経ち、吹奏楽コンクールまでの期間も短くなっていった。
「美穂ー!コンクールもうすぐやん、どうしよーーー」
「亜希子、いきなりどうしたん?今まで頑張ってきたとやけん、大丈夫って!」
「やけに、強気やなー、美穂。どうしたん!?」
「そうかな?そう思わんとやっていけんたい。受験もあるとやけん、コンクール終わったら、切り替えていかんとやし、、、。もちろん、コンクールは緊張と不安もめちゃくちゃあるに決まっとるけどさ!頑張ろ!!」
「美穂と話したら元気出た!あとちょっと頑張ろう!」
恋のせいなのか、地味ガールである美穂は少し前向きな気持ちになっていっていた。
部活が始まると、パートごとの練習が発表された。
「サックスとクラリネットは一緒にメロディーライン合わせといて!ホルンとパーカッション、リズム合わせ!、、、」
美穂のパートであるホルンは竹本くんがいるパーカッションとの練習となった。
「じゃあ、よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします!」」」
パーカッションのパートリーダーが練習を進めていく。
美穂は、竹本くんがいるからといって、浮かれてはいなかった。恋と部活はちゃんとわきまえているようだ。しかし、お互い刺激になっているようだった。
「美穂ちゃんと竹本のリズムめちゃ合っとるやん!いいね」
「いぇーい、美穂ちゃんやったね」
「ふふふ、うん」
ホルンとパーカッションパートは何度も合わせ、完成へと繋げていった。
「はーい、結構よくなったよね、練習終わろうか」
「「「ありがとうございました!」」」
「美ーー穂ちゃん!」
「おお、お疲れ様、竹本くん」
「俺ら、リズム合って最高やったね!」
「うん、嬉しかった!!」
「美穂ちゃんが笑っとる!!」
「いや、、私だって笑うよ、、、」
美穂はちょっと恥ずかしがり、顔を隠した。
「美穂ちゃんの笑った顔、可愛かー。これからもなにか笑わかせよーっと」
『か、か、、、、可愛か!?!?』
美穂は驚いたまま、自分のパートの場所に戻り、楽器を収納し始めた。竹本くんの言動に、自分が彼に恋していることを再認識したのだろう。
翌日以降も、吹奏楽部一同は、更に練習を増やしていった。もう、コンクールまで1週間を切っていたのだ。美穂も本番で全力を出し切れるように、必死に練習した。
コンクール当日。
部長が挨拶をする。
「今日まで本当にお疲れ様!みんなの頑張りは今日の演奏に全部繋がっていくと思う!結果なんてきにしなくていいから、どんな形でも、楽しんでいきましょう」
「「「はい!!」」」
美穂の高校の出番までは、各自練習していた。モニターで他の高校の演奏を見ることも出来たが、美穂は全く見ずに、ピッチを合わせたり、苦手だった部分の練習をしたり、最後の仕上げをしていた。
「美穂ちゃん、俺らのリズム見せてやろうでね」
竹本くんから話しかけられた。美穂は笑顔を見せた。
「うん、思いっきり、見せつけよう!いぇい」
と言って、美穂は竹本くんにハイタッチを求めた。竹本くんはとびっきりの笑顔を見せて、ハイタッチをした。二人の関係はより深まっていっていた。
「そろそろスタンバイ!みんな行きましょう」
部長の声で部員一同はステージ裏へと移動した。
そして、美穂たちの高校の紹介が始まり、一同はステージへと行った。
自分たちの場所につき、部活の顧問である指揮者が客席へと礼をする。美穂は深呼吸をした。指揮者が指揮棒を上げる。
演奏が始まった。
美穂はその瞬間になにかを感じた。ステージ上でしか味わうことのできない、ゾワっとした感情。課題曲であるマーチは勢いのある演奏で終えた。自由曲が始まった。順調に進んでいく。そして、竹本くんと合わせたリズムも完璧だった。自由曲も終わり、達成感のある顔で部員たちはステージ裏に戻っていく。
「うまくいったよね!」
「マーチとかめちゃくちゃ合っとって、良かったーーー」
「ステージってやっぱ緊張した!!」
部員たちは各自感想を言いながら、楽器を収納し、客席の方へ行った。この後は他の高校の演奏を聞いていく。
そして、全ての高校の演奏が終わったら、全ての高校に対して結果が発表される。
「、、、高校、銀賞。、、、高校、ゴールド金賞。、、、高校、銅賞。、、、」
「次、私たちたいね、、、」
「銀賞」
美穂たちの高校の結果は『銀賞』だった。他の部員は泣く人もいれば、『なんでや!』と声に出す部員もいた。
しかし、美穂は冷静だった。
『なんとなく、予想出来とった。私たちの代はそんなに仲良くなかったし。演奏自体は良かったのかもしれないけれど、もっと、まとまりがあった方が良い、って思っていたもんなー、いつも』
美穂は悲しくもなく、悔しくもなく、涙も出なくて、ぼーっとしていた。感情を思いっきり出している周りの部員を、冷静に見ていた。
隣に座る亜希子を見ると、、、
美穂と同じ表情をしているようだった。
「亜希子?」
「美穂、残念やったね。でもさ、、、」
「私、なんか予想ついとった」
「分かる。うちらの代、そんな気がしてた」
美穂と亜希子は周りに聞こえないように小声で話していた。二人は同じ気持ちだったようだった。
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