モヤっとした感情

竹本くんに『美穂ちゃん』呼びをされた日の部活終わり。


「ねぇ、亜希子。モヤっとした感情ってなんやろ」


「いきなり、なによ!って、モヤっとした感情って分からん、あははは」


「なんかさ、最近竹本くんと仲良くなって、嬉しいんよね。あんな人気者と喋られること自体すごいことやしさ。しかも、美穂ちゃんって呼ばれてるんよ。すごすぎん?」


「あー、それで、美穂は、モヤっとした感情を抱いてるってことね」


「そう」


「美穂って恋愛経験なし?」


「馬鹿にせんでよ!一応中学の時は好きな人おったし、付き合いよったし、、、」



美穂は地味ガールではあるが、中学生の時にサッカー部の同級生のことが好きだった。しかも、彼とは交際まで行ったが、特になにも無かった。家まで一緒に帰って、たまに手を繋いで。一度だけ、ハグをしただけであって、可愛い関係だった。中学卒業とともに、自然と別れたが、今は特に美穂は彼への感情はない。でも、美穂も『好き』『恋』というものは分かっているつもりだった、、、。



「そうよね、その話聞いたことあるもんなー。、、、美穂、竹本くんに恋してるよね。でも、そうじゃないんだって自分に言い聞かせているんじゃない?」


「、、、え」


「図星?」


「、、、えええ」


美穂はどんどんと顔を赤らめていった。


「図星の顔だね、美穂」


「もう、、、、そんな簡単に好きにはならん!!!」


「認めてもいいんじゃない?」


「私みたいな地味な女子が、人気者の男子に恋するなんて、漫画のような話だよー!!」


「漫画のような話が実際にあるかもしれないよー」


「そがんと、信じられん!!」


「美穂、正直になりなよ」


「、、、考えとく」


「また、進捗教えんばよ!!また明日ね!」


亜希子と別れてから、バス停までの道のり。


「美穂ちゃん」


美穂を呼んだのは、2年生の時、そして今も同じクラスの相馬くん。クラスでもまぁ目立つ方の男子で、見た目も格好いい。彼が美穂のことを『美穂ちゃん』と呼ぶのは、2年生の時に席が近くなり、仲良くなったのがきっかけだった。



ーーーーー


2年生のある日の英語の授業。

席替えをしたばかりで、美穂は相馬くんと隣になった。


『わああ、かっこいい、人気者の隣になってしまった。絶対周りに人がたくさんくるんやろうな、、、私がバカやけん、笑われたりせんかな、、、』


美穂は不安なまま授業を受けた。英語担当の教師が言う。


「はい、立って、隣と英会話の練習を」


『最悪、、、英語苦手やけん、片言でしか喋れんなぁ』


「間宮さん、よろしくね」


「あああ、相馬くん、よろしくお願いします」


「俺、英語、まじで苦手やけん」


「あ、私も!」


「そがん、嘘つかんと!間宮さん頭良さそうやん」


「全く頭良くないけん、、、」


英会話を始めていった。


『私からやん、、、片言英語があまり聞こえんようにしよう』


美穂は小声で話した。


「ん?言った?間宮さん」


「うん」


相馬くんは笑いを堪えていた。相馬くんは身長が高い。しかし、すごく下を向いて、英語を話し始めた。美穂も驚くほどの片言だった。

美穂は安心し、小声でそして早口で片言英語を話し、相馬くんは下を向いて話す。


英会話が終わって、すぐに二人は座った。


英語の授業終わり、相馬くんに話しかけられた。


「間宮さん、いいキャラしてるよね。まじで英会話の時は笑い堪えたわ」


「なして?」


「俺に聞こえんように小声で早口で喋りよったやろ?口の動きすごかったばい」


「恥ずかしいけん、見らんで、、、」


「間宮さんとは仲良くなりそうやわ」


「、、、それはありがとう」


ーーーーー



というきっかけで、お互い頭が悪いという共通点(?)で仲良くなった。今では冗談も言い合える仲になった。


「美穂ちゃん、バス停まで一緒に帰ろうぜーー」


「相馬くん、お疲れー」


「そういやさ、最近、竹本と話すんやけど」


「た、竹本くん!?」


「どした?」


「なんもない、ごめん、ふふふ」


「でさ、竹本の奴が俺の許可なしで『美穂ちゃん』呼びしよるんよ?」


「あ、今日、呼ばれたよ。ドキッとした。いきなりなんでやろ」


「ここだけの話やけどさ、竹本、『間宮さんって綺麗かよね』って言いよって!もしかしたら、狙っとるとかもしれん。美穂ちゃんのことは俺が守ってやらんばけん。変な男が寄ってこんようにね」


「はあ?なんそれ、そんなことなかやろ!、、、なして、相馬くんが私のこと守るん?」


「美穂ちゃんと一番仲良か男子って俺ぐらいやろ?」


「はい、恥ずかしながら、、、」


「俺は可愛い可愛い美穂ちゃんを守る義務があるんよ!」


「意味分からんけど、、、ありがとね。でもさ、その竹本くんの話、私に話す?」


「一応の報告で!嬉しいやろ?美穂ちゃん」


「、、、照れるわー」


「まぁ、竹本も悪い奴じゃないし、一緒に仲良くなっていこうぜ」


「そうだね」


「美穂ちゃんバス来たよ!急げ!!」


「ほい!!」


美穂は相馬くんからの話に、正直心が躍っていた。


『竹本くんが?私のことを?ひゃーーやばい、、、でも調子に乗っちゃいかん』


でも、美穂は帰宅してからも、頭の中は竹本くんのことでいっぱいだった。





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