距離が…
地味ガールの美穂は竹本くんと少しだけ仲良くなったことに戸惑いを感じていたとともに、ほんの少しだけ嬉しさもあった。
『あの、あの人気者の竹本くんと、、、喋れるなんて、夢のようや、、、。いや、でも、こんな女が仲良くなったらいかん、、、はぁ』
放課後の部活が終わり、美穂は同じパートの亜希子(あきこ)と帰ろうとしていた。
「おっつー! 間宮さん! じゃあね!!」
『ぬお、、、竹本くん、、、』
「お疲れ様」
同じクラスのため、靴箱が近くで、竹本くんから声を掛けられた。
「ねぇ、亜希子。なんかさ、今日竹本くんが私に喋ってくれるんよ。なんか緊張して。なんで私に?と思う」
「別に、そんな深く考えんでいいって! 仲良くなる分には何も問題ないやん」
「こんか地味な奴がいいとかな」
「ねぇ、美穂。いつも自分のこと地味とか言うけど、美穂、可愛いけん!」
「はぁ? 亜希子なん言いよると??」
「ってみんな陰で言いよるんよ」
「まじか、、、それ、悪口じゃなかよね、、、」
「もう、ふふふふ、美穂、ネガティブすぎ! 普通にありがたく感じておけば、よかたい!」
美穂と亜希子は帰る方向が違うため、途中で別れた。美穂が一人でバス停に向かっていた。
『なんか今日一日、変な感じやった。亜希子も変なこと言うし、訳分からん、、、』
美穂はぼーっと考えながら、帰宅した。
「おかえり、美穂。なんかあったとね?ぼけーっとしてから、恋でもしたとね、ははは」
美穂は母からそう言われ、慌ててしまった。
「そがんことなかたい!!部活が疲れただけ!!」
「美穂は恋愛せんもんねぇ、せっかくの青春とに」
「はいはい」
美穂は自分の部屋へ行き、制服から部屋着に着替え、リビングに行って、夕食を食べた。お風呂まで済ませ部屋に戻ったのが21時半。
そこから、進学校の課題が始まる。美穂は効率は良くないし、頭も良くはない。
そして、美穂が通う高校は成績によってクラス分けがされている。
1番のトップは東京大学を目指すクラス。
2番目は難解国公立大学を目指すクラス。
3番目は、、、どこかしら大学に行くレベル。
美穂は3番目のクラスに属している。
他の高校に通う友人から『その高校に行けるなんてすごいよ』と言われることが多いが、『いや、私は馬鹿なクラスなんだよ、、、』とクラスメンバーには申し訳はないが、かなり謙遜していた、というか、美穂は自分がすごいと思ったことは無かった。
美穂は課題が嫌いだ。課題が好きという人がいるのか、とは思っている。課題を楽しく解ければいいんだろうが、美穂は、、、解けない。時間をかけても。
「あああ、訳わからん」
美穂は出来るところだけより遂げた。
「今日、竹本くんから課題褒められたしなー」
少し調子に乗った美穂。だいたいの課題が終わったのは深夜1時。毎日このような日々を送っている。
翌朝、早めに出発し、いつも通り、朝練。
『竹本くん、おらんなー』
今まで気にもしていなかったのに、昨日から関わるようになって、竹本くんの存在がないことに気づいてしまっていた。
『ん、竹本くんのことなんか、、、、知らんわ』
と思いながら、同じパートの亜希子と合わせていた。
「ちょっとずつあってきてるよね」
「朝も昼も放課後も頑張っとるもんね」
「でもさ、正直、私は金賞取れん気がする。美穂どう思う?」
「そがんこと、部室で言わんと!!亜希子、なんでそう思うと?」
「やっぱりさ、去年は大好きな先輩たちがおったし、先輩たち、みんな仲良かったたい?私たちの代ってそんな仲良くないって思うっさね」
「、、、うん、分かる。あとさ、ここで大声では言えんけど、自由曲も演奏しよって楽しくない、、、」
「美穂も同じこと思っとったとね、なんか安心した。ここだけの話にしようね」
「もちろん」
吹奏楽コンクールでは、2曲演奏する。
1曲は『課題曲』という、コンクールを開催している協会が、4曲提供し、その中から、各々の高校が選択し、演奏する。美穂の高校は、だいたいマーチを選択する。
もう1曲は『自由曲』という、各々の高校で自由に選んでいい曲。美穂の高校では、だいたい、顧問の先生がいくつか候補を持ってきてくれて、その中で部員の多数決で決まる。
去年は、テンポが良くて、色んなパートがそれぞれ違うメロディーラインがあり、かっこいい曲であった。全体で演奏した時は、ゾワっと鳥肌が立つほどのものだった。しかし、今年はシャンソンという音楽で、あまり慣れない音楽であった。確かにシャンソンもレトロ感があり、かっこいいが、美穂と亜希子は去年の自由曲の方がやりがいのあるものだった。
朝練には竹本くんは来ず、『朝から会えんかった』と思いながら、美穂は教室に行っていた。すると、、、
「おはよー!美穂ちゃん!!まじで焦ったーーー遅刻したんよ」
「おおお、おはよう、、、ん?美穂ちゃん?」
「え、名前、美穂ちゃんやろ?」
「そうやけど、、、」
「ほら!急がんと、俺より遅刻するばい、美穂ちゃん」
美穂は、モヤっとした感情?が現れ、この感情はなんだろうと思いながら教室へと向かった。
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