第8話 「これよこれ、この映像が見たかったのよっ !! 」

「それじゃあ、改めて3人揃ったことだし、この怪獣について分かったことを検証してみましょう ! …それも、怪獣サイドからの行動順にしたがってね!」

 ホテルの部屋にて、ノートパソコンを開きながら先生が言った。

「え~と、まず、怪獣は地底からやって来て、地下を移動中にC市の住宅地の地面を陥没させ、その後高速道路トンネル建設現場に遭遇した ! 」

 僕が発言すると、甲斐路が続ける。

「トンネル壁に外側からぶつかって、シールドマシンを高圧電流にて攻撃し、ショートさせた!」

「その後、都内の地下変電所を襲い、地下壁に穴を開けて送電線から電気エネルギーを吸収して杉並区世田谷区を停電させた… ! 」

 先生が言った。

「それから、今度は地下鉄を襲って架線から電気エネルギーを吸収、その際におそらく新富町付近の護岸を破損させ、東京湾の海水を呼び込んで都内の地下鉄が浸水、新大橋通りから地上に出現!…自衛隊の戦闘ヘリと交戦!」

 甲斐路が続ける。

「そして、雷撃弾で4機を撃墜させ、再び地中へと逃げ込み、潜伏中…と ! 」

 僕がそう締めると、先生が頷きながら、

「そうね ! …で、ここまでで確認出来た怪獣の能力、特徴は?」

 と話題を変えた。

「…まず、コンクリート壁も突き破る甲虫のような硬い外皮と、上部の、あの突起のある甲皮を振動させて地中をかなりの早い速度で移動することが出来る怪獣ってことね ! 」

 甲斐路が言った。

「そして、電気を吸収して活動エネルギーにしている、さらにはあの触角から高圧の雷撃弾を撃って離れた敵をも攻撃することが出来る ! 」

 僕も言葉を続ける。

「おそらく、電気を吸収する時もあの触角を伸ばして送電線から直接取り込むことが出来るってことよね、体内に蓄電することが可能なんだわ ! 」

 先生が言った。

「…しかし、電力を活動エネルギーにしてモグラみたいに地下を動き回る怪獣って、何なんですかね?…何故こんな奴が今、この東京に出て来たんだろう?…」

 今までの会話の中で今さらながらの疑問が、スッ ! と僕の中で湧いて来て、そんな呟きが出てしまった。

 すると、先生がフッ ! と微笑みながら答えた。

「乙掛くん、生物って、科学とかもそうだけど、発見されてるものしか分かってないのよ!…圧倒的に未知のものの方が多いの !! …人間の生活圏は陸地の上でしかないから、水や海の中はもちろん、地下や地底に棲息する生物なんかについてはほとんど分かっていないのが現実なのよ」

「えっ !? …そうなんですか?」

 僕が驚くと、

「そうよ、科学や生物学なんて、すでに発見されてる事象や確認された生き物しか対象に出来ないものだもの!…深海とか地底とか、人がなかなか行けない所には想像も及ばない未知の生物が棲息している可能性が高いかも知れないわよ !! 」

 先生がノートパソコンのキーをたたきながら応えた。

「だけど、原子力発電所が一部休止してたり、燃料供給が時勢上不足して火力発電所もフル稼働出来ない今現在、東京の地下に電力を餌にしてる巨大怪獣が居座るってのは、大問題よね!」

 甲斐路が言った。

「こないだも"電力需給ひっ迫警報"が出たばかりなのに、さらに電力が欠乏となっちゃったら、首都機能がマヒするのは目に見えてるわね!」

「しかし怪獣がまた都内の地下変電所を襲うのも目に見えてますよ!」

「…残念ながらこの怪獣は退治しないと ! …どう考えても人類との共存はムリね」

 …という訳で結局、僕たちの考えは同じ見解に落ち着いた。


「ところで先生、さっきあそこの現場上空に、報道のヘリが飛んでたじゃないですか !? …テレビをつけてニュース見てみましょうよ!」

 急に思い出したように甲斐路がそう言って、机の上のリモコンを手に取って部屋のテレビをつけた。


「…え~本日、午前11時50分頃、東京都中央区の新大橋通り入船町交差点付近に出現した巨大怪獣は、自衛隊の戦闘ヘリと交戦した後、地中へと姿を消しましたが、その後怪獣による被害状況が明らかになるにつれ、事態の深刻さが大きく広がっています!」

 画面の女性アナウンサーがいきなり深刻な表情でそう伝えていた。

 続いて現場付近の映像が出て、どこかの会社の作業ユニフォーム姿の中年男性が向けられたマイクに応えている画面に変わった。

「…突然目の前の道路がグワ~ッ ! と盛り上がって、慌てて急ブレーキかけたんだけど、もうアスファルトの裂け目から土がブワ~ッ ! と吹き上がって…もう訳分かんないうちに後ろの車に追突されて、そしたら地震みたいに辺りが揺れて、ドーン ! と目の前に何か出て来てさぁ、もう車捨てて逃げたの!必死で !! …他の車のみんなも同じように逃げたよね、もうパニックだよホント!…まさか怪獣が都会のまん中に出て来るなんてねぇ !! 」

 やや疲労を滲ませながらも興奮気味に話すおじさんの画が終わると、次に報道ヘリが撮った、上空からの現場映像に変わった。

「おぉっ !! …これよこれ、この映像が見たかったのよっ!」

 とたんに甲斐路がズイッ ! と顔をテレビ画面に近付けた。










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