魔獣の星(5)
宇宙で待機しているレアロに戻ったディタンはベギットゥに乗り替えた。
先のメテガ軍との戦いで吹き飛んだ長距離砲のメハデッサは後に回収されて背中に装着できるように改造された。
「前に試したが撃てるか」
ディタンはコックピットでモニターに映るターゲットマークの位置を調整した。
「ギミケルトの重力値で調整していますが、至近距離での使用を推奨します」
無線のヒルヴァの声に「必殺技ってやつだな」と答えながら計器をチェックした。
「よし完了。発進する。ガレン隊、続け」
レアロからベギットゥと数機のガレンが発進した。レアロから発進したのを合わせるように連合艦隊からも戦闘機が続々と発進した。
「化け物が動き出したか。いよいよ止めを刺すつもりだな」
ザジラビマが山から飛んで作戦本部がある平原の近くの空中で留まった。
「フィペーラ、各地の基地はどうなっている?」
「どこもコンラルに囲まれている。まだ攻撃をして来ないわ。あと子供をさらわれた住民達も基地の周辺に集まって来ているけど今のところ衝突はない。軍が彼らを押さえているから」
「了解だ。ザジラビマへの攻撃を開始する」
ディタンは操縦桿を押した。ベギットゥが率いるガレン隊が速度を上げてザジラビマに接近した。ベギットゥが地上に降りてメハデッサを構えた。
「開幕の合図だ!いけえ!」
ベギットゥの肩のメハデッサから赤い光弾が放たれた。ザジラビマは光の壁で防いだ。
「2発目だ!」
再びメハデッサを発射した。同じ個所に命中して光の壁が揺らいだ。
「来た!」
ディタンが叫んだ。ベギットゥの肩のメハデッサを外した。
ザジラビマが光の壁を解いて数十発の光線をベギットゥに発射した。
ガレンが4本の腕から散弾状の光弾を発射した。光の粒がベギットゥの前に広がった。光線が次々と粒に命中して爆発した。
その間に上空からの艦隊の砲撃と戦闘機の攻撃が一斉に始まった。ザジラビマの体に次々と着弾して爆発を繰り返して周辺が黒煙に覆われた。
「まずは頭を一つもらうぜ」
向かって右側の頭にベギットゥが高速で突っ込んで剣を目に突き刺した。
「くっ!目ん玉もなかなか固いがこれはどうかな」
刺さった剣の先が割れて銃口から青い光線を発射した。光線が目を貫いた。
グォオオオオオオ!
ザジラビマが大声で吠えた。
「そのデカい口にも一発だ!」
逆さまになりながらベギットゥが口に光線を発射した。口の中で命中した部分が赤く焼けた。
「よし、今だ!」
背後のガレンがメハデッサをベギットゥに渡した。ベギットゥがメハデッサの引き金を引いた。赤い光線がザジラビマの後頭部を貫通した。
ギャアアアアアアアアア!
竜の頭が叫んでダランとうなだれた。真ん中の頭がベギットゥへ光線を発射した。
「うぉりゃああああ!」
ベギットゥが素早く上昇した。光線が追って来た。ベギットゥが大きくターンして真っ逆さまにザジラビマの向かって左側の頭のすぐそばを通過した。光線が頭に命中した。ベギットゥは地上スレスレで水平飛行に変えて追って来た残りの光線を掌から光弾を撃ち撃破した。
「あとは真ん中だな」
ベギットゥが再びザジラビマに向かった。
ザジラビマが大きく吠えた。その衝撃波で黒煙は吹き消され周辺にいた戦闘機やガレンが吹っ飛ばされた。ベギットゥは地面に降りて衝撃波に耐えた。
「あの声だ!」
ザジラビマから頭に響く音が響いた。風の吹く音と鐘が鳴る音が混ざったような軟らかい音が辺りに響いた。
作戦本部や周辺にいた人々の魔獣が召喚された。
数々の魔獣の咆哮が白く輝く風となってザジラビマの体にまとわりついた。
ザジラビマの二つのうなだれた頭が目を覚ましたかのようにもたげ上げて全身の傷も回復していった。
「うわっ、治るのかよ。反則だろ」
ディタンは驚きと同時に呆れた。
「こういうのはヒーローがみんなの愛の力とやらで治るもんだろ。地球のアニメはそうだったぞ。何で悪者が治るんだよ。もしかして俺達が悪者かよ」
「フィペーラ、作戦中止だ。きりがない」
「そうね」
ディタンの呼び掛けにフィペーラも落胆した。
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