さまよう王国(6)

 艦隊本部からの命令でディタンは小型宇宙船にベギットゥを積んでビゴール夫妻を連れてレハントロへ帰った。

 数日後、レハントロの女王フィネとビゴール夫妻の会談が開かれた。

 ディタンとビゴール夫妻は丘にあるフィネが住む城にいた。

 女王フィネは王を亡くした後、二人の息子と共にレハントロを治めていた。

 各都市に自治権があるレハントロでは女王は他の星との外交に関わる権限を持っており今回の会談はフィネの希望で行われた。

 ディタンはビゴール夫妻と共にフィネに挨拶をした後、城の外でベギットゥに乗って護衛した。

 「ここの技術でレクテを目覚めさせられないか……」

 ディタンは小さく呟きモニターで城の周りを見た。

 白く尖った屋根が連なる城はどことなく地球のヨーロッパの城を彷彿させる造りをしていた。

 突然、コックピットでアラームが鳴った。城の上空に黒い穴が開いた。

 「まずい!」

 ディタンは叫んでベギットゥを上昇させた。

 黒い穴から沢山の光線が城に降り注いだ。ベギットゥは体の前に光の壁を張って光線を弾いた。城への直撃は免れたが城壁や丘に被弾して炎が燃え広がった。

 すぐに城の周辺から水色の光線が発射されて城全体が光の壁に包まれた。

 「城はあれで大丈夫だな。これは魔獣の攻撃か。どこにいるんだ。ヒルヴァ、魔獣の出現場所を教えてくれ!」

 ディタンはモニターに叫んだ。

 「ルベルジアがキリマ上空に出現。防衛軍が向かっている」

 「もたもたしているとまた撃つぞ。場所のデータを送れ」

 ディタンの指示でモニターに現在地と目的地の地図が表示された。

 「よし行くぞ」

 ベギットゥの背中に青い光が輝き高速で空を飛んだ。

 「見つけたぜ」

 ベギットゥの先に青い体のルベルジアが空に浮いていた。

 ルベルジアがベギットゥの飛ぶ音に気付いて口から光線を発射した。ベギットゥは素早くよけた。右腕から伸ばした剣でルベルジアの腹を突こうとしたがルベルジアが剣を右手で止めた。ベギットゥは左手から伸ばした剣を顔に向けた。ルベルジアは顔を横に向けてよけた。

 「ちっ、地球の奴より戦い慣れているな」ディタンは舌打ちした。

 ルベルジアと交戦していると防衛軍のガレンとロレットが飛んで来た。

 「その機体はディタンか」

 コックピットのモニターにペナケルンが映った。

 「おせえよ!早くやっつけないとまた空間移動の光線を撃つぞ」

 「召喚しているギミケルト人の居場所を特定する。ガレン隊としばらく粘ってくれ」

 「わかったよ」ディタンはベギットゥを後退させてガレンと編隊を組んだ。

 3機のガレンが肩から光線を発射した。ルベルジアの体に命中して火花が飛び散った。ルベルジアが掌から光弾を乱射した。ベギットゥはよけたがガレンはかわしきれずに被弾して墜落した。5機のロレットがミサイルを同時に発射した。ルベルジアが口から光線を出してミサイルを全て撃墜した。その隙にベギットゥが背後に回って剣を突き刺した。ルベルジアが大声で吠えた。

 「固いな!これでどうだ!」

 ベギットゥが前に回って顔を刺した。ルベルジアはうなだれたままスーッと消えた。

 モニターにペナケルンが映った。

 「ありがとう。魔獣使いのギミケルト人を拘束したよ」

 「ああ良かったな。城がやられそうになってやばかったぜ。俺が守ったけどな」

 「女王に何かあったら大事になっていた。重ねて礼を言わせてもらう」

 「いいって事よ。それにしてもここにもギミケルトの魔獣使いがいたとはな」

 「悪い連中ばかりじゃないが扱いに困っている。特にルベルジアのクラスになると見ての通り我々にも手に負えない状況だ。魔獣使いを見つけて捕まえるか殺すしかないのさ」

 「まあ取りあえず化け物退治に使えるようにガレンを強化する事だな。俺は城に戻る。じゃあな」

 ディタンはモニターに映ったペナケルンに軽く左手を挙げてウィンドウを閉じて城へ引き返した。

 ディタンが城に戻った時には光の壁が解かれていた。

 ビゴール達の会談が終わり庭で茶会が開かれた。ディタンも茶会に参加した。

 「先程は私達を守ってくれてありがとう」

 庭にいるヒルヴァの通訳を介して女王フィネがディタンに礼を言った。

 銀髪で灰色が薄くかかった白い肌のフィネの前でディタンはひざまずいた。

 「いえ。我々こそレハントロに受け入れて頂きとても感謝しています」

 「あなたは私達と共にメテガ軍と戦っているそうですね」

 「はい。また参戦します。その間どうかビゴール王とパールズ王妃の事をよろしくお願いします」

 ディタンはキリッとした表情でフィネを見上げた。

 「わかりました。お二人は私の責任で安全な場所で保護します。どうか御無事で」

 フィネが優しく微笑んだ。

 ディタンは「では」と立ち上がりゆっくり一礼してベギットゥへ戻った。

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