第6話 シミュレーション機アトラスⅡ型


一週間後、シミュレーションレクチャルームで小山内から


「今日からⅡ型に移行する。Ⅱ型は君たち二人が同時にシミュレーション機に乗りお互いが見える形でシミュレーションを行う。いわば二機編隊のシミュレーションだ」



僕達は顔を見合わせて目を輝かせた。


 ふふふっ、やはりな。Ⅰ型ではもう詰まらないという顔をしていたが、だがⅡ型ではどうかな?簡単にはいかなぞお前達。


二人の前にあるスクリーンにスペックを映し出された。

「Ⅱ型は、Ⅰ型と違って脳波感応型だ。君たちの思考を捕らえてアトラスⅡ型は動作するようになっている」


「基本的なデータはⅠ型と変わらないが、推進力で一〇%向上している。Ⅰ型と違うのは舷側に付いている荷電粒子砲が可変型になっている事だ。

 アトラスの軌道によって視界入った敵機を効果的に攻撃する為だ。この機能は自動で動くので君たちが考慮する事は無い。

 姿勢制御スラスタの位置もⅠ型は前方側面両側に一つ、後方両側に一つ、全部下方に二つ付いていたが、Ⅱ型はそれに加え後方下部にも付いている。

 これにより進行軌道を瞬時に上方に遷移できるほか、前方下部のスラスタと合わせる事でⅠ型では出来なかった機体の後部上方に瞬時に遷移する事も可能だ。十分に自分の体に染込ませてくれ」


 僕達はⅡ型までの構造マニュアルは頭に入れてあったが、実際に説明を受けるとやはり嬉しかった。ついカレンと目を合わせて微笑んでしまっている。


「軌道が急激になる為、パイロットスーツも変わっている」


 永井に視線を流すと永井がⅠ型で着ていたパイロットスーツとの違いを説明し始めた。




僕達がステラに昼食を取りに行こうとした時、太田が声を掛けて来た。


「おーい、青山たち」

「あっ、太田と安西さんだ」

「どうだ、先行して航宙戦闘機シミュレーションの訓練を受けている気分は」


太田何を聞いているんだ?


「俺たちより先に行っている気分はどうかと聞いたの」


太田が興味深げな顔をしている。


「特になあ」

「お前たちこれから昼食か」

「ええ」

「俺たちもこれからだ。一緒に食べないか」

「うん、良いよ」

「ところでサキと仲良いな」

「えっ」

サキが顔を赤くすると


「あれ、顔が赤くなった」

ミコトが顔を覗くと


「まあな」

レイが右手を頭の後ろに持って行って擦っている。


 サキとレイは、航宙軍士官学校に入って以来、僕達を理由に色々会っていた。僕達ほどではないにしろ、二人は他の候補生より優れている。


 四人がステラに歩いていくと回りの候補生が僕達に視線を送っているのが分かった。


「カレン、ミコト。仕方ない事だ。お前たち二人はダントツ俺たちより先行したからな」


 ステラに入り、プレートを取ってカウンターに行くとショウケース入っている食べ物を取りながらサキはカレンに


「ねえ、カレン。アトラスⅠ型のシミュレーション機どうだった。私難しくて」

トレイを持ちながら聞くサキにそう言われてもという顔をすると


「サキ、どこが苦手なの」

「うーん、航宙機の軌道遷移の時、体が直ぐに反応しなくて直ぐに敵機に後ろを取られてしまうの」


「そう、俺も。サキほどではないにしろ、レクチャルームで反省のための映像を見ているとどうしても一呼吸遅い」


カレンは少しだけ考えると

「計器判断より先に思考で操縦した方がいいと思う。そうすれば軌道遷移より先に頭が先行するから」


 サキとレイは二人で顔を見合わせるとやっぱり聞かない方が良かったという顔をした。


「お前たちの答えはいつもよう分らん」

呆れた顔をするレイに僕達は顔を合わせて笑った。


「ところでどうだ、アトラスⅡ型は。Ⅰ型を始めたばかりの俺たちには想像も出来ないが、脳波スペクトルでアトラスⅡ型に指示を出すんだろう。凄いよな」

そう言って自分の世界ではないという顔をすると


「そんな事ないよ。ただ一瞬の判断を求められる事が多い。でもあれを乗りこさないと次が無いからがんばるしかないよ」

ミコトはレイの顔見て微笑んだ。


「ところで青山達は次の休み何か予定あるのか」

「特に無いけどイメージトレーニングしていると思う」

「イメージトレーニング」


分からない顔をするサキとレイにミコトは

「航宙戦闘機に乗っている時を頭に浮ばせていつでも視覚に入った物体に対して瞬時に意思伝達するようにするトレーニング。サキもレイも今は、目視ディスプレイによる航宙だからより効果あると思うよ」


 レイとサキは顔を見合わせると少しだけ困った顔をした。カレンはどうしたのという顔をすると


「休みは月に一度だから気分を変えようと外出許可を申請したんだ。だからもし二人とも予定無かったら一緒に行ければと思って」


それを聞いた僕達は顔を見合わせると

「ごめん、まだ候補生の間は気持ち的に余裕ない」

カレンが言うとミコトも頭をコクンと下げた。



青山姉弟と別れた後、サキはレイに

「やっぱりあの二人、私たちと違うね。単に頭がいいだけじゃないのね。少し分った気がする。

 頭の良さをひけらかさないからいいなと思っていたけどやっぱり見えないところでも努力しているんだなと思うとかなわないな。私も休まないでイメージトレーニングしようかな」

「えーっ」

レイは残念そうな顔をしてサキを見た。そんなレイの顔を見て


「ふふっ、うそよ。レイ。私たちはあの双子とは違う普通の人間。まねできない事をまねしようと思ったらおかしくなるだけ。楽しみましょ。せっかくの休みなんだから」


にこっと笑うとレイは目を輝かせて微笑んだ。


―――――


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

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