終末世界
@tokino_kanata
第1話
「誰かいませんかー?」
誰に問うでもなく虚空へ向かって声を張り上げる。
何度この台詞を言ったかもう、既に覚えてすらない。
ーーーーーーーー
「ただいま。今日も誰も見つからなかったよ。」
後ろ手でドアを閉めながら誰もいない部屋へ1人話しかける。
こうでもしないとおかしくなってしまうから、と自分に言い聞かせる。
既におかしくなり始めてるのを意識しないように。
私は普通だと。
異常じゃないと。
考えると頭が痛くなってきた。
何でこんなことになってしまったのだろう。
ーーーーーーーー
約1ヶ月前私はいつも通り普通に目を覚ました。
1ついつもと違うのは町中、水を打ったような静寂に包まれているのだ。
ーー誰もいない
その事に気づくまでしばらく時間がかかった。
いつも家に親はいない。だから朝の時点では気づかなかったし、自分のことで精一杯な私は周りに目などむけていなかった。
気づいてすぐ慌てて私はスマホを見たが何故か圏外。
公衆電話で知り合いにかけても繋がらない。
「は?」
疑問とも笑いともつかない声が出る。
私が普通じゃないからこうなったの?
いい子じゃないから?
産まれてきてはいけない存在だったから?
頭に数々の疑問が浮かぶ。
私はいつだって脇役だ。いや、脇役にすらなれていないのかもしれない。
主人公のようにこんな状況に適応する能力など生憎持ち合わせちゃいない。
それから私は家に戻った。
どうすればいいのかわからなかったのだ。
これ以上街中にいるとおかしくなってしまう。
幸か不幸か家で1人きりなのは慣れている。
そして毎日日記をつける事にした。
私と言う存在をここに残すように。
自分のことを忘れないように。
誰かにここで生きていた私のことを知ってもらうために。
『これを読む人へ。
これは私の備忘録でもありあなたに当てたものでもあります。7月12日世界から人が急に消えました。
私が見つけたこと。世界がどうしてこうなったのか。それを分かればここに書き記していきます。
ーーーーーーーー
「ねえ、かなた。ここになんか落ちてた。」
「はぁ?あんたまた余計なもの拾ってきたの?!
危ないものも落ちてるんだから何でもかんでも拾ってこないでよ…」
頭痛がする。何で雪はこんなに自由奔放なんだろう。
ここでまっててと念を押してもついてくる。
これは危険。と言っても触り出す。
現にまた変なものを拾ってきた。
「ゆき、ちょっとそれ貸して」
「私が拾ったから私のもの!」
「あんたねぇ…後で返すから貸して」
渋々と言った感じだが冊子が手渡される。
「なになに〜?」
『これを読む人へ。
これは私の備忘録でもありあなたに当てたものでもあります。7月12日世界から人が:1っjdzwdw2d2えd』
途中から文字が化けて読めなくなっている。
何が書いてあったのかすらわからないがきっと今の私たちには関係ない。
「かなた。何が書いてあったの?」
「文字化けして読めないなー。しょーせつ?とかじゃない。そんなのが昔あったって聞いたよ。」
「へー、興味ない。」
「あんた聞いといて…!はぁ…まぁゆきのことだしね、。それじゃ行こっか。」
「うん。」
瓦礫だらけの道を進む。
そこれかしこに植物の蔓が絡み付いており気を抜くと転けてしまいそうだ。
「あちゃー…やっちゃった。」
そこらかしこ水浸しなので歩く時は注意が必要なのにツタに気を取られていた。
中まで水が浸水しぐちゃぐちゃになったブーツで歩く。
「ねぇゆきー。かえったら火をおこそっか。ついでに洗濯も済ませないとだし」
「洗濯ー?めんどくさい。」
「いい加減この軍服?も汚れてきてるしさ」
「そんなの作ればいいじゃん。私今なら服2着ぐらいなら作れるよ。」
「力は温存しといたほうがいいよ。また何があるかわからないんだし。」
こんな話をしていると家に着いた。
家と言っても木で骨組みを作りそこに布を被せただけの簡素な造りだが。
「今日取ってきた食材はそこ置いといてー。私はちょいと水汲んでくるから。」
「ん。分かった。」
荷物を置き木で作った器を取る。
林をしばらく抜けると大きな湖があるのだ。
(あいっかわらずこの湖凄いなー。底の方まで見れないくらい深いし。)
水を汲めるだけくみもときた道を通る。
「ゆきー?水汲んできたから火をおこしt…ゆき?!ちょっとあんた…」
雪が倒れている。脳が情報をシャットダウンしてそれ以上のことは分からない。
「ちょっと…って熱!」
熱がある。どうすれば…
わたしには何もできない。
とりあえず水を飲ませて、次に…
忙しくなりそうだ。
終末世界 @tokino_kanata
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