(60)異常事態
~紗彩目線~
「大丈夫だ、サーヤ。団長たちがすぐに解決してくれる」
「そうだぜ。それに、俺達も団長ほどじゃないが強い。A級やB級の犯罪者共なんて、来たとしても蹴散らしてやる!!C級なんて、一発だぜ?」
三十分ほどが経った頃、心配になってチラチラと時計を確認してしまう。
そんな私に、部屋の中にいる騎士たちが声をかけてくれる。
というか、今ならA級とかの説明を受けれるかな?
「あの、A級とかC級ってどういう基準にした危険度なんですか?」
「ん?」
気になり隣にいた髭を生やした犬耳の騎士に聞けば、不思議そうな表情を浮かべながら首を傾げられた。
なんだか、危険な時なのに首を傾げたゴールデンレトリーバーに見えてしまった。
身体つきがごついオジサンなのに。
「A級って聞いた時、シヴァさんたちも周りの人たちもかなり警戒していました。犯罪者という言葉から、危険度が高いんですよね?」
「あー……」
「サーヤには、伝えておいた方がいいだろ。基準を知っておけば、その時その時で判断が違ってくるからな」
私が続けてそう言えば、髭面犬耳の騎士が気まずげに唸っている。
もしかしたら、私の予想は違ったのだろうか。
そう思っていると、タレ目の猫耳の騎士が犬耳の騎士の後ろから言ってきた。
「サーヤが言った通り、A級C級っていうのは犯罪者の危険度のことだ。一番下が、C級。こいつは、一般の騎士が一人で捕縛可能なレベルだ。実力もそんなにで、基本逃げることばかりを考えている奴らだな。逃げ足は速いが、それ以外は特に問題ない。馬鹿な奴が多い分、下手したら一般人でも捕縛することは可能だ」
タレ目の猫耳の騎士が、しゃがみこんだ後に説明してくれる。
なるほど。
C級が、一番危険度的に安全なわけね。
いや、犯罪者に安全なんてないんだろうけど。
足が速いのなら、追われている時に私だと不利になる。
でも、馬鹿なら罠を張って逆に動きを封じてしまえばいいってことか。
「C級の上がB級。こいつらは、一般人では少々危険だな。頭が良い分、下手したら人質に取られる可能性があるからな。こいつらは、経験豊富な騎士が二名ほどで捕縛可能だ。」
なるほど、馬鹿の上は頭が良いのね。
いや、頭が良いというよりは悪知恵が働く的な感じか?
というか、頭良いのならもっとマシなことに使えよ。
元の世界でも、詐欺のニュースとか見ている時に何度も思ったけど。
「B級の上がA級。こいつらは、思考がヤバい奴らだな。同族を食うとか、そういうヤバい思想を持っていて犯行に及ぶ奴らだ。実力はそうでもないが、思考がヤバいことで次の行動を読むことができない。だから、A級の場合は複数の騎士でなんとかする必要がある」
同族…………人間でいう食人みたいな感じか。
確かに、何かの本でも書いてあったけど一番の強敵って行動が読めない敵らしいからね。
というか、A級でそれならそれ以上の場合は完全にヤバいパターンなんじゃあ?
A級があるなら、S級もありそうだけど。
「一番危険度が高いのが、S級。S級だとわかった場合は、とにかく逃げることだけを考えろ。思考と実力、ともにヤバい奴らだ。捕縛できれば、国が直接担当している刑務所に入れられて常時監視される。あいつらには、常識が通じねぇ。なにより、実力が下手したら騎士団長よりも強い奴らが多い」
あ、あるのね。
しかも、かなり強敵な感じだし。
シヴァさんがどれだけの実力があるのかはわからない。
でも、あんなに強そうな人たちを率いているんだからかなりの実力者だろう。
そんな実力者と同じぐらいか、それ以上の実力を持った犯罪者。
しかも、国から常時監視されるような異常な思想や思考を持っている犯罪者。
逃げることを考えろ以前に、逃げ切れるの?
逃げ切れる気がしない。
できれば、一生会いたくない。
不安に思いうつむいていれば、ポンポンと頭を撫でられた。
顔をあげれば、犬耳の騎士がしょんぼりとしながら私の頭を撫でていた。
「だから嫌だったんだ。サーヤにこの事を言うの」
「それもそうだろうが、言わないわけにはいかないだろ。大丈夫だ、サーヤ。今回は、A級が複数だからな。時間はかかるかもしれないが、団長たちや仲間たちの実力なら問題はないだろ。それに、この部屋なら最悪籠城戦になったとしても十分な蓄えもあるから大丈夫だ」
しょんぼりとしながらつぶやく犬耳の騎士と、そんな彼の背中をバンバンと叩いて元気づけてくれる猫耳の騎士。
そんな二人の言葉に安心した瞬間、
ビリリリリリッ!!!!
という大きな音が部屋の中に響き渡った。
【もし本部内に大きな音が鳴り響いたら、すぐに隠れなさい】
頭の中で、アルさんの言葉を思い出す。
本部内に大きな音。
今の状況が、もしかしたらそれなんじゃないか?
頭の中でわんわんと響き、脳が揺れるような錯覚が起きるほど大きくて嫌な音。
本部内に侵入者が入ってきたんじゃないか?
学生時代の対侵入者用の避難訓練を思い出して、思わずそう犬耳の騎士たちがいる方を見る。
彼らの方を見た瞬間、私は犬耳の騎士に抱き上げられていた。
「な!?」
犬耳の騎士は鉄製のロッカー中に私を入れると、しゃがんだまま一つのカバンを渡してきた。
「サーヤ、いいか?ここに絶対に隠れているんだぞ?この中には、もしもの時用に使える道具がいくつか入っている」
「はい」
「最悪俺たちが戻ってこなくても、絶対にこの部屋から出るんじゃないぞ?もし、俺たち以外の奴に会ったらどんなことを言われても信用せずにその中の道具を使って逃げろ」
犬耳の騎士、それは【死亡フラグ】が立つ気がするんですけど。
そう思ったけどロッカーのドアが閉められ、一瞬で目の前は真っ暗になってしまった。
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