(61)厄介

~シヴァ目線~



 本部を出発してからは、怒涛の展開だった。



 追っていた見回りの騎士たちと合流し、俺の隊はそのまま犯罪者共を追っている。


 だが目の前にいるのは、四人の指名手配犯。

 あとの一人は、別行動をとったのか?


 注意深く周りの気配を探りながら走っていれば、目の前の四人が別れた。


 俺は隣で俺の隊と並行して追っているアルに目配せすれば、アルは頷き右側に行った二人を追って行った。

 俺もアルの隊も、ほとんど狩りを得意とする肉食獣を祖先に持っている獣人ばかりだ。

 だからこそ、獣化した己の脚力で敵を追い詰める。


 俺は、そのまま左側に行った奴らを追って行く。


 どんどん追って行けば、反対側で待ち伏せしているノーヴァとセレスの隊がいる。

 自分たちが、うまく追い詰められていることに気づいていてこの行動をとっているのか?

 それとも、気づいていないのか?



 あとの一人の存在が気がかりになりながらも走っていれば、目の前に走っていた奴らは待ち伏せしていたノーヴァの隊によって捕獲された。



「団長!」

「二名、確保したぞ」

「こちらもです。残りは、C級の男だけですね」



 反対方向から走ってくるアルとその隊の騎士たち。

 その後ろから、犯罪者共を引きずってくるセレスの隊。


 残りは、C級か。

 AやBよりも厄介ではないが、仲間を置いて逃げたということか?


 俺は、C級だけが逃げたことを不審に思った。

 C級の犯罪者は、そこまで頭がよくない。

 俺たちの行動を予測できるとは思えない。


 そうなると、C級の犯罪者がいないことに何か意味があるのか?



「困ったことになったわ、団長」

「どうした?」



 犯罪者共にC級がどこに行ったかと尋問していたセレスが、俺の隣に来て言った。



「どうやら、子供が誘拐犯の所から逃げ出したらしいわ。C級の男がそれを追ったらしいの」



 なんだと!?


 C級とはいえ、相手は大人だ。

 子供一人の体力で逃げ切れるとは思えない。


 そうなると、早急にC級の確保と子どもの保護を実行しなければ。


 仲間が捕まったことを、相手は知っているはず。

 ならば、自棄になって子供を殺す可能性もある。


 指名手配犯にもなるぐらいだ。

 C級とはいえ、身体能力が高いんだろう。


 そうなると、子供がどこにいるかによってC級の犯罪者にとって有利になる場合がある。


 何より、指名手配犯以外に加担していた犯罪者共全員捕らえている。

 C級の犯罪者には味方がいない。

 だが子供の数からして、捕らえた罪人共が複数の子供を攫うには無理がある。


 そうなると、まだ見つかっていない仲間がいる可能性も考えられる。



「すぐに、子供を保護するぞ!!C級と言えど、絶対に警戒を緩めるな!!」



 捕まえたところは、騎士団の本部の近くだ。




 …………さすがに、本部の中に侵入しているわけがないと思うが。


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