(44)甘い約束

~紗彩目線~



「なあ、サーヤ。サーヤは、甘いものや肉は好きか?」

「?はい」



 ジャックさんに聞かれ、私はその問いに答えた。


 私は、基本苦い物と辛い物以外は食べれる。

 苦い物はまあ我慢すれば食べれるけれど、辛い物の場合は胃腸が荒れてお腹が不調を起こすからよほどのことがない限りは食べない。


 私の答えを聞いたジャックさんは、尻尾をブンブンと振りながら明るい表情で言う。



「なら、今度一緒に食べに行こう!俺、あんまり知られていない穴場の店知っているんだ!!」

「はい!」

「はい、そこまで」

「ジョゼフ先生?」



 ジャックさんの言葉に私も嬉しくなって答えれば、ジョゼフさんからストップがかけられた。

 そんなジョゼフさんに、ジャックさんが不思議そうな表情を浮かべている。


 シヴァさんの隣に座っているジョゼフさんの方を見れば、ジョゼフさんは困ったような表情を浮かべていた。



「連れて行くのはいいけど、それはこの子の健康状態が元に戻ってからにするんだよ」

「あと、サーヤの食べる量も気にしろよ。お前とサーヤじゃ、体格も身長も性別も違うからな。食べる量も違う」



 ジョゼフさんの言葉のあとに、シヴァさんも言ってくる。

 まあ、確かにジャックさんと私じゃあ絶対に食べる量は違うだろうね。


 そう思っていれば、私の手前に座っていたノーヴァさんが話に入ってきた。



「穴場あるの?俺も行っていい?」

「いいっすよ!!」



 ジャックさんにそう聞いたノーヴァさんは、無表情だったけどどこかワクワクとした明るい雰囲気が漂っていた。

 そういえば、自己紹介の時にも甘いものが好きだって言っていたっけ?



「ノーヴァも行くんなら、しっかりとこの二人の世話をしろよ。お前が、一番年上になるんだからな」

「!?俺も年上ですよ、団長!!」

「お前も、まだノーヴァに比べれば年齢も精神面も子供だ。頼ることも大切だぞ」



 シヴァさんの言葉に、ジャックさんがガーンッと効果音が付きそうなぐらい慌てた表情を浮かべている。

 そんなジャックさんの言い分に、シヴァさんはため息を吐き呆れた表情でジャックさんを見ながら言っている。

 

 なるほど、ジャックさんはノーヴァさんよりも年下ということか。

 …………まあ、確かにノーヴァさんの方が落ち着いている感じはある。


 そう思っていると、近くのテーブルにいた二人の騎士さんが笑い出した。



「そうだぞ、ジャック!!」

「まあ、いいじゃねぇか!サーヤが来たことで、やっと末っ子からお兄ちゃんに昇格したもんな!」



 黒髪の騎士さんがニヤニヤと笑いながらそう言えば、茶髪の騎士さんはジャックさんをフォローしているのか微笑ましそうに言っている。



「う、うるさいですよ!!いいじゃないっすか!」

「まあまあ。ほら、ジャック君も早く食べてきなさい。明日、君は確か朝から鍛練があっただろう?早く寝なければ、睡眠不足で怪我をするよ」



 ジャックさんはそんな二人の騎士さんの言葉に顔を赤くさせながら二人の方を向いて大きな声で叫び、そんなジャックさんのジョゼフさんが落ち着かせている。


 なんだか、この中で一番ジョゼフさんが年上に見える。

 シヴァさんたちも落ち着いているけど、シヴァさんたちもジョゼフさんと同じぐらいの年齢なのかな?


 そう思っていると、ジャックさんが再び私の方を見た。



「わかりました!じゃあな、サーヤ!約束忘れるんじゃねーぞ!!」

「はい」



 ジョゼフさんにそう言ったジャックさんは私にそう言い、私が答えれば手を振りながら自分の席に向かって走って行った。


 なんだか、久しぶりににぎやかな夕食だな……。



 そう思いながら、私は雑炊を食べ始めた。

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