(43)夕食
~紗彩目線~
「…………もうお嫁にいけません」
シヴァさんに洗われ、お風呂から上がった私は羞恥心からグッタリとしていた。
なんだろう。
何か、大切なものを失った気がする。
グッタリとシヴァさんの部屋の中にあるベッド並みに大きいソファに転がっていれば、誰かが近づいてくるのを感じた。
頭をあげて見れば、それは心配した表情を浮かべているセレスさんだった。
「えーと、大丈夫かしら」
「大丈夫です、はい。ちょっと、精神面がいろいろと削られた気がするだけです」
セレスさんにそう言われ、私は正直に言った。
まさか、成人してから銭湯以外で誰かと一緒に入るとは思わなかった。
というか、シヴァさんの筋肉をがっつりと見てしまった。
シックスパックなんて、生まれて初めて見たわ。
筋肉って、あんなにキレイにつくものなのね。
古傷っぽい傷跡もあったけど、お湯で張り付いた髪やしっかりとした筋肉もあって痛々しさよりも危ない色気を感じた。
なんていうかセレスさんは妖艶(?)な感じだけど、シヴァさんは包容力があってワイルド(?)な感じの色気。
ちなみに、男物の水着らしきものを履いてくれたおかげで下半身は見なくて済んだ。
「何も気にする必要なんてないだろ。お前の身長じゃあ、一人で入ることは不可能に近いんだから」
「ちょっと、団長。女の子は、男と違っていろいろと複雑なのよ」
シヴァさんが意味が分からないと言いたげな表情で言ってきたけれど、セレスさんが私の味方をしてくれた。
うん、うれしいけどシヴァさんの言っていることがすべて正論なのがすごく悔しい。
何しろ、まずシャワーから水を出す蛇口があった。
これに関しては、魔法を使うこともなかったから安心した。
でも、蛇口がついている場所は私が背伸びしてもギリギリ届かない高さ。
この時ほど、自分の身長の低さを恨めしく思ったことはなかった。
…………成長期の時にもっと牛乳とかカルシウムがあるものを摂取しておくべきだった。
そしてシャワーを浴びた後、私は湯舟に浸かれとシヴァさんに言われた。
そこで、またしても大きな問題にぶつかった。
浴槽が深すぎた。
何しろ、私が立った状態で私の鼻のちょうど下ぐらいまでお湯がある。
これを知った瞬間、下手に滑ったら絶対に溺れると思った。
ちなみに、シヴァさんはこれを見た後手早く髪や体を洗って、一緒に入ってくれました。
なんか、もうすみませんとしか言えなかった。
「まあまあ、サーヤ君も恥ずかしかったんだろう。それよりも、そろそろ夕食の時間だ。みんなを集めたから、早く行ってきなさい」
「…………みんな?」
「騎士団全員の前で自己紹介をしてもらうが、大丈夫か?」
苦笑しながらジョゼフさんに言われた言葉に聞き返せば、まじめな表情でシヴァさんに言われた。
シヴァさんの話を聞けば、昼ご飯を食べたとはいえ私の存在はまだ一部が知っている状態らしい。
それで、一度全員が集まった場所で紹介をしておいた方が、後々何かがあっても騎士団で保護していることを全員が知っていれば動けるということらしい。
「無理はしなくてもいいんだよ。無理なら、私達が紹介するだけでいいから」
「えーと、お世話になります的なことを言えばいいんですよね?」
「そうよ」
ジョゼフさんが心配した表情を浮かべながら言われるけど、どういうふうに言えばいいのかわからず例を出せばセレスさんが頷いてくれた。
そして、それを見たジョゼフさんも教えてくれた。
別に自分のことを詳しく言う必要はないらしい。
ただ、名前と顔と騎士団で保護することを知らせるためらしい。
うん、それならよかった。
さすがに自分のことを詳しくと言われても、こっちの世界のことをまだわからないから言えることなんて少ないし。
大丈夫だと言えば、シヴァさんに抱き上げられてお昼を食べた食堂に連れてこられた。
食堂に入った瞬間、中にいた人全員に一斉に見られてさすがにびっくりした。
「今日の午前中に保護したサーヤだ。この騎士団で保護することになる」
「紗彩です。よろしくお願いします」
「こいつは、ちょっと訳アリだ。言葉は魔法で通じるようにしたが、この国の文化や知識はほとんどないようなものだ。困っていれば、手を貸してやってほしい」
「「「「おう!」」」」
シヴァさんの説明を聞き挨拶をすれば、シヴァさんがまた説明してくれてその言葉にその場にいた人全員が返事をしてくれた。
というか、こんなに人がいるなんてびっくりした。
とはいっても全員頭の上に動物の耳や角があったり腰には尻尾がある。
獣人騎士団と言うだけあって、いるのは全員獣人みたいだ。
それにしても、どうして言葉が通じているのだろう?
そう思っていれば、シヴァさんにこっそりと教えられた。
ジョゼフさんが、食堂についた瞬間【言語一致魔法】をかけたらしい。
すごいね、ジョゼフさん。
「サーヤ…………どこで食べる?」
「団長、ここはどうですか!!」
「…………下手したら埋もれて窒息してしまいそうですね」
「俺達のテーブルでいいだろう」
挨拶が終われば、ノーヴァさんがポツリと呟いた。
その言葉が聞こえたのか、近くのテーブルに座っている軍服を着た騎士さんたちが声をかけてきたけど、アルさんに却下されていた。
その言葉を聞いた騎士さんたちの耳が、しょんぼりとたれてしまった。
それを見ながら、シヴァさんがなんでもないように言う。
「サーヤ君はしばらくゾウスイだよ。君の今までの食生活的に、急に私達と同じ量を食べたらお腹がびっくりしてしまうからね」
「わかりました」
「サーヤ!!」
「ジャックさん?」
シヴァさんのお膝の上にのせられジョゼフさんの言葉にうなずいていれば、ジャックさんが話しかけてきた。
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