(10)訳ありの子供②

~ジョゼフ目線~



 医務室で仕事をしていれば、副団長をしているアル君からとある連絡を受け取った。


 

 【帰らずの森】で幼子を保護したこと。

 子供の目元に隈もあり、健康状態が異常があるかもしれないため健康診断を受けさせたいこと。

 周りには、保護者の気配もないこと。

 言語が通じないこと。


 このことから、他の大陸から来た訳ありの子供の可能性が濃厚とのこと。



 連絡を受け取った後、あまりの内容にめまいを起こしてしまいそうになった。

 

 【帰らずの森】に子供が一人?

 アル君が幼子と言っている時点で、その子供の年齢は本当に幼いのだろう。

 そんな子供が、なぜたった一人であの森に?



「これは、またきな臭いものだ」



 保護者もいない言語が通じない子供。


 言語が通じないという時点で、この大陸の者ではないことは明らかだ。

 なぜ、【帰らずの森】の中にいたのかはわからないが、もし故意に連れてこられたのならば明確な悪意を感じる。

 

 仕事机のよこにある棚から、何枚かの書類を取り出す。

 もしもの時は、騎士団の誰かがその子供の保護者になるかもしれない。

 

 子供が危険な状況に置かれているのならば、一人の大人としては放っておけない。

 何より、ただでさえ少子化が進み子供が希少となっている。

 言葉も通じない保護者もいない子供など、すぐに犯罪に巻き込まれてしまう。



 そう思いながらこれから必要になるであろう書類を書き込んでいると、本部の前が騒がしくなっていることに気づく。


 窓から見下ろせば、団長のシヴァ君が補佐のノーヴァ君と、アル君と参謀のセレス君が何やら言い合いをしているようだった。


 シヴァ君の腕の中にいるのは、どうやら件の子供のようだね。

 抱きかかえているからわかりにくいが、おそらくアル君の言う通り幼いのだろう。


 それにしても、あの四人は何をやっているのだろう?

 子供が心配なのであれば、即刻連れてきなさい。



 イライラとした怒りを抑えながら廊下を歩き本部の前に出ると、ちょうどシヴァ君と目が合う。


 私の怒りを感じたのか、シヴァ君の表情が歪んでいる。




「何をしているのかな?」



 とりあえず、そこの四名は子供の健康診断が終わった後で医務室に来なさい。



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