(3)出会ったのは
~紗彩目線~
こういう状況の場合、いったいどうすればいいのだろうか?
目の前には、大きな体をかがめている黒髪黒目の男の人。
しかも、頭の上には明らかに人間にはないはずの黒の猫っぽい耳。
男の人の腰には、猫みたいな黒いしっぽ。
なぜか、かがんでいるのにまだ身長差がある。
これって、この人が立ったらかなり身長差があるってことよね?
ていうか、この人は身長どれぐらいなの?
絶対に二メートル以上ある。
いくら、私が成人女性の一般的な身長の平均をいっていないからって、普通に考えてこんなに身長差があるのはおかしい。
絶対に、この人の身長が大きいんだ。
でも、今の状況で一番の問題点は彼の身長ではない。
『○○△○○◇?』
「なんで……言葉が通じないんですか…………」
そう、言葉が通じないのだ。
何を言っているのかもわからない。
音からして、私が今まで習ってきたどの言語でもない。
とはいっても、私が話せるのは日本語と英語とフランス語ぐらいだけど。
もしかしたら、英語で話せば通じるかも?
英語って、なんか万国共通ってイメージがあるし(偏見)。
ていうか、お願いだから通じて。
こんな明らかに日本じゃなさそうなところで言葉も通じないなんて、本当に泣きそうになるから。
泣きそうになるのをなんとかこらえながら、自分のことを心配そうに見ている男の人に向かって話しかけてみる。
「これで通じなかったら、いろいろ終わっています。は、Hi.I am Saya Sasaki.」
『○○○○? ○○○○△◇○△。』
「なんで、通じないんですか~」
男の人に通じなかった瞬間、私の目から涙が零れ落ちてしまった。
「なんで」とか「どうして」とか、答えが見つからない問いが頭の中に浮かんでは消えていく。
成人女性の涙なんて気持ち悪いだけだろうけど、それでも泣きたかった。
成人女性でも泣きたくなるときぐらいあるもん。
なんか、もうこんな状況よりはハゲ上司のセクハラとかの方がマシに思えてきた。
だって、会社だったら家の場所もわかるし帰れるし。
『○○○○?』
『○○! ○○△◇……』
なんか、また知らない人が来た。
しかもかなり大きい人。
絶対に身長五メートル以上ある。
身長が高すぎて、その人が銀髪なことしかわからない。
この男の人も、猫耳の男の人と同じで腰にしっぽがある。
猫耳の男の人と違って銀色の大型犬の犬みたいな尻尾。
なんか、実家で飼っている犬を思い出す。
元気かな~?
それにしても、もうなんなの?
なんで、この二人はこんなに大きいの?
それとも、私が小さくなったの?
なんか、もういろいろと絶望してしまう。
実家にいる母よ、あなたの言う通り私のメンタルはミジンコ並みに弱いですわ。
俯きながら遠い目をして日本にいる母親に思いをはせていると、頭に温かい感触を感じた。
『どこから来たのかわかるか?』
俯いていた頭を上げると、銀髪の男の人が地面に片膝をついて私の頭を撫でている。
よく見ると男の人は紫銀の鋭い瞳で、頭の上には銀色の犬の耳がついている。
なんだか、目つきも相まって犬というよりは狼だ。
よし、彼のことは【狼さん】、猫耳の男の人は【黒猫さん】って呼ぼう。
それはさておき、私は狼さんが言った言葉に驚いてしまった。
彼が言っていた言葉は、日本語だったから。
ようやく日本語が通じる相手だと思って彼を見れば、彼は黒猫さんとまた何と言っているのかわからない言語で話していた。
日本語が聞こえたような気がしたのは、私の幻聴だったのかな…………?
『○○△△◇○○?』
『○○○○△○○△◇△◇◇』
『○○△◇。○○、○○△◇○』
狼さんと黒猫さんが立ち上がって何か話しているけど、私はここについて考えている。
明らかに人間ではありえない身長。
そして本物であろうパタパタと動いている彼らの尻尾。
それにさっき森の中で見た色合いが明らかに毒キノコと思われるカラフルなキノコ。
あんなキノコ、図鑑にも載っていなかったから、もしかしたら地球上にもないのかもしれない。
ということは、ここって…………異世界?
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