9・脈動
人口三五〇万を擁する巨大近代都市・大阪の中枢部、梅田に
「大阪もですか……日本もすっかり昭和に戻りましたな」ホームのベンチでビール
「ええ、JRも国鉄――国営企業に逆戻りしましたし、なにより――動態保存の蒸気機関車まで駆り出される始末ですからね……最近の車輛はどうも――
「それに、こう黒煙ばっかり吐かれちゃあ――奇麗な壁が台無しですな……」記者はよく
「
「そんな
「取材の方はよろしいのですか?まだほとんど話していませんが……」
「いえ、ここには出張からの帰りで寄っただけですから……ちかごろは新聞の発行もむずかしくなってきていまして――
記者は
どことなく違和感を感じて顔をあげるが、動いている列車は一編成もない。
(地震の――初期微動か? いや、緊急地震速報は鳴っていないしな……)
「どうしました?もう出発時刻になりますよ」彼が足をとめて考えていると、駅長が怪訝そうに声をかけた。
「いえ、どうも地震のような――」記者が言いかけるが、その声は突如として駅構内に響きわたった緊急地震速報のサイレンにかき消された。
予想最大震度を告げる冷淡な機械音声にまじって、腹の底に響くような地響きが空気を震わせた。――停車中の汽罐車の車体がゆれ、
(今緊急地震速報が流れたということは……これはP波――
記者はほとんど反射的に逃げようと
駅の壁面が音をたてて裂け、剝がれた白い
静かな
本来、地震というものは主に、
だが、幸か不幸か、ここ数十年の日本列島直下のプレート群は、たまった
だが、日本史上最悪の大震災とされた〈南海トラフ地震〉によってプレートの配置が変化してからというもの、その微妙な
大震災の
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